8.パーティーにて
予測はしてたんだけど、妊婦なのにユアノがいた。
アーロン様が周りの方々に言っているのが聞こえたんですが、ユアノは「自分は安定期だから是非とも姉の婚約披露のパーティーに参加したい!」と言ったらしい。
ワガママ全開ですね。
***
なんなの?お姉様の分際で!私よりも上等なドレスを纏って、高価なアクセサリーを身につけて。調子に乗ってるの?
「あ、お姉様ぁ。婚約おめでとうございますぅ。まさかお姉様がブライアン殿下と婚約なさるなんて思わなかったわぁ。素敵なドレスにアクセサリー、流石殿下ですね!」
「ありがとう。それより、貴女は妊婦なのだから安定期とはいえもっと慎重に動いた方がいいと思うわ」
余計なお世話よ。
流産?それでもいいわよ。お姉様の婚約者であるブライアン殿下も奪うんだから!コブ付きよりもいいでしょ?
「ブライアン様は貴女が私のモノを欲しがることをご存じよ。実家でも散々ワガママを言って散財したことも」
「やだ。お姉様ったら負け惜しみ?私の方が可愛いからよ!」
***
ユアノの自信はどこから来るんだろう?
妊婦の安定期でワガママ放題に生活してれば、まあそりゃあコロコロに太るわね。鏡見たのかしら?以前のようにはいかないと思うけど?
それでも変わらずにユアノのことを大事にしてくれてるアーロン様のことを想ってもいいんじゃないかなぁ?
「サマンサ、どうした?」
「ちょっと妹の容姿は大きく変わってるのに言動が変わらなくてビックリ。産後は何もせずに体型が戻ると思ってるのかしら?」
「違うのか?」
「一応、伸びた皮膚に、ため込んだ脂肪もあるからそれなりに運動しないかぎり元には戻らないんじゃないかなぁ?ユアノみたいなワガママなタイプは顕著じゃないかと思うんだけど、本人は全く自覚ないし大丈夫かなぁ?」
「アーロンがいるし大丈夫だろう?」
妊婦でも現在のターゲットはブライアン様なんですけどねっ。
「あー、ここで第2王子の婚約者を紹介する。サマンサ=ディラーノ嬢だ。さあ、サマンサ嬢、壇上へ」
私はブライアン様のエスコートで壇上へと上がった。
「流石王家ね、輝くような美女だわ」「うちの子の方が相応しいとずっと言っていたのに」等の声がホールから歓声とともに聞こえてきた。
中には本気でハンカチを噛んでいる令嬢もいる。―――千切れないのかな?丈夫な歯だなぁ。
「えー、私ブライアン=リバラルは、サマンサ=ディラーノ嬢と婚約をする。これはすでに両家で決めて契約をしていることである。私は第2王子とはいえ、リバラル王国の力になる事を誓おう。これからはサマンサと共により一層の努力をしていく所存である」
ブライアン様ってこんなお堅い挨拶もできる人だったんだ……。
私の考えとはうらはらに会場からは大きな歓声が沸き上がった。見るとユアノが気分悪そうだったので、王宮医師(女性)の手配を頼んだ。男性医師だと、ユアノが何するもんだかわからないから、保険で女性医師と指定させてもらった。産婦人科だし。
気分悪くなりそうなものだもの、来なきゃいいのに。
アーロン様は『なんて姉想いなんだ』って感動したでしょうけど、そこはお腹の子の方を優先すべきでしょう?
妊婦さんは無理しちゃいけません!