2.ユアノの挙式
そして数か月後―――
ユアノはアーロン様と挙式を行った。
終始私に「見て見て、私って超幸せそうでしょ?」みたいな視線を送ってきたけれど、「はい、そうですね」という視線を返して、終わった。
挙式後のパーティーにて、ユアノがユアノにしては地味なドレスを着ていることに疑問を想った私はアーロン様に伺うと、ユアノが妊娠していると告げられた。
衝撃的だったのは、アーロン様を寝取られたの?とかそういうことではなく、「へ?私、オバサンになるの?」という衝撃だった。
「サマンサ嬢はこのような祝いの席でもそんな地味なドレスを着るのかい?」
と、不躾なことを言われた。
この人と結婚することにならなくてよかったと思った。
「おいおい、アーロン。サマンサ嬢にも事情ってもんがあるんだろう?」
と、パーティーに現れたのは、この国の第2王子であられるブライアン=リバラル王子殿下だった。
そんな大物ともつながりがあったとは驚きよ。
リバラル王国第2王子殿下―――御年18才。
噂だと、王子という自覚はあるのかというほど、市井で遊んでいる。
女性関係も派手で、隠し子の一人や二人いるのでは?と言われている。
「サマンサ嬢、こんなパーティーは抜け出さないか?」
まぁ、ユアノの自慢話は聞き飽きていますし、アーロン様は不躾で、気分が悪いです。
できるなら、このまま帰りたい。
「ブライアン殿下のお誘いなら断れませんね」
と、私はブライアン殿下とパーティーを抜け出した。
「あ~、やっぱり呼吸しやすい感じがする~!」
「見た感じで思ったんだが、思った通りだったか。君は義妹に迫害されている?」
全くその通りなんだけど、ブライアン殿下に伝えてもいいものか迷う。
「根拠は?」
「今着ているドレス、俺は3回は見たことがある。とても『可愛い義妹』の結婚披露パーティーで着るようには見えない」
図星だ。3回以上パーティーで着てると思う。だって、ドレスもユアノに奪われてるから。他に持ってないんだもの。
殿下が参加するようなパーティーはそんなにないし、私も参加しないし。
―――ブライアン殿下は噂のような方とは違うのかな?
私は一縷の望みにかけて、ブライアン殿下に現在のディラーノ侯爵家について一切合切話した。
「はぁ?なんだそれは?噂と全然違うじゃねーか。噂じゃ姉が散財しまくりで家計が火の車」
「はぁ?私が散財しまくり?散財してるのはお父様と義母!ユアノが欲しがってるものをなんでも買い与えてるから火の車なんじゃないの?ついでにユアノは私の宝飾品とかドレスも奪っていったわ。さらには私の専属の侍女も奪っていったんだけど……」
「となると、アーロンのやつは全く見る目がないのな。他人のものを嬉々として奪うような人間を伴侶にしようとしてるんだもんなぁ」
「ああ、それ。元は私に来た縁談話だったんです。見合いの席に自分も同席させてほしいってユアノが。許可を出す父も非常識だと思いますけど!」
思い出すとイライラしてきた。
出会いですねぇ。
ユアノ嬢は凄まじいですね。こんな妹嫌だ!