10.3者会談
アーロン様はそんなユアノを黙認しているようです。
あのパーティーに自分が連れて行ったから…と自責の念のようです。
その調子だと、家でも色々と言われているのでしょうね。何しろ侯爵家の跡取りになる方を失うことになってしまったわけですし。
「サマンサ、ユアノ嬢の行動はなんとかできないのか?」
なんとかできるのならば、実家のディラーノ侯爵家にいた時からなんとかしています。
「アーロン様がなんとも言えないですね」
「しかしなんというか・・・ユアノ嬢は、妊娠前とは打って変わってふくよかになったというか……」
直接的には言えないでしょうですが、ハッキリ言いますと太りましたね。きちんと鏡を見ているのでしょうか?
ユアノ付きの侍女は何か言ってないのないのでしょうか?
まさかの自分が不利なことを言った侍女は解雇?勝手なことをしているにもほどがあるでしょ!
「俺はユアノ嬢の事を爪の垢ほども思っていないのだが―――せいぜいがサマンサの義妹ってくらいか?性格が悪いことも把握している!」
ブライアン様が仰ることも最もで。
「加えて、最近は体形が昔のようなものではないということも把握している」
ユアノの体形については誰が見ても明らかだろう。
さて、今後ユアノ嬢の扱いについてはどうしようか?と三人(私・ブライアン様・アーロン様)で会議をすることとなった。
「両殿下におかれましては、我妻の行動に際してご迷惑をかけてしまったようで深くお詫びを申し上げます」
「いいのよ、アーロン様。ユアノがあんなのなのは昔からだし」
「最近からではないのですか?」
「昔からよ?―――困ったことに私のモノを欲しがるのよ~。今はブライアン様かしら?」
「!!!!!!」
アーロン様は閉口してしまった。
そうでしょうねぇ。妻の性癖と規模の大きさというか、不遜さ。不敬過ぎて何も言えないのでしょうか?
「アーロン、落ち着けよ。俺はユアノ嬢に靡くつもりはないからな。でもなぁ、お菓子に刺繍されたハンカチが送られてきたりと結構迷惑を被ってる」
「それは申し訳ありません。はて?ユアノが菓子作り??」
「アーロン様は知ってるわよね?ユアノはお菓子なんか作ったことないわよ。厨房にすら近寄らないんじゃないかしら?刺繍されたハンカチを見ました。ユアノの作品じゃないわよ。ユアノは刺繍が苦手だから。アーロン様はご存じですよね?」
「はい、妻からもらった刺繍入りのハンカチと言えば、イニシャルが入ったものです。それすらもなんだか文字が読みにくいものです」
「それで、今後はどうしたい?アーロン」
「―――離縁をしようかと。ユアノはうちの財産を散財していますし、使用人も好き勝手に解雇するなどやりたい放題で困っているところです」
「アーロン様の幸せのためにはその方がいいと思います。ひいては領民の皆様のためにも。そして離縁すれば不条理に解雇される使用人もいなくなるでしょう?」
「うん、アーロンのためにはそれがいいな。さて、離縁後のユアノ嬢だがどうなると思う?」
「「元のディラーノ侯爵家で贅沢三昧」」
「やはりそう思うのか……。侯爵家だからある程度の金額は耐えられるだろうな。その後は?」
「実家ですけど、爵位も無くし、平民落ちかと……」
「歴史ある侯爵家が平民落ちか……」
「お父様が悪いのです。お母様が生きている時から、義母と浮気をしていたのですよ?自業自得です!」
「義父様の責任はあるが家はなぁ。アーロンの家はユアノ嬢がいなくなれば正常化するだろうが、ディラーノ侯爵家は悪化するだろうな」
「この際やむを得ませんよ!」
「きっぱりとした反応をするのだな、サマンサ」
「今のお父様・義母にいい思い出などありませんから。それよりも独り身となって自由にブライアン様をターゲットとするユアノの方が嫌です」
「「あぁー」」
男二人が同じようにリアクションをする。
「確かに。サマンサ様のように美しくない妻がブライアン殿下をターゲットとはどういうことでしょう?」
「ユアノの性癖は自身の容姿とは無縁よ。とにかく私のモノを奪い、私が悔しそうな顔をするのを見ることを喜びとしているの」
「アーロンには悪いが、それは何だか変態のような……」
「そもそも、私とアーロン様の見合いの席に出席すると言い出したのはユアノよ?非常識でしょ?私の『婚約者候補』の時点でアーロン様はユアノのターゲットになっていたのよ」
あーあ、私も言っちゃったなぁ。二人はちゃんと想い合っての結婚と思ってただろうなぁ。現実はユアノの割り込みなんだけど。
「……そうなのか」
「俺としては、サマンサが未婚で残っててくれたことに感謝だけど、アーロンとしては大迷惑を被ったわけだ。ユアノのわけわからん性癖に振り回される結果になったわけだから」
「お父様もユアノの同席を認めた時点で能無しなのよ!」
アーロン様が茫然自失。
アーロン様が可哀そうだなぁ。ユアノの被害者で、何にも報われなかった人ですね。