1.可愛い?義妹
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「お姉様ぁ!お姉様が持っているよりも、私みたいな可憐で可愛い子が持っていた方がこの
ブローチのためにもいいと思うの!」
「そうね、流石ユアノだわ。物事の道理をわかっているのね」
このように私は義妹にブローチを奪われた。
過去には、ドレス・宝飾品、果ては専属の侍女も奪われた。
申し遅れましたが、私はこのディラーノ侯爵家の長女でサマンサと申します。
母が亡くなり、喪に服する期間をおかずに、この義母と義妹が家にやって来た。
それからすべてが変わっていった―――。
お父様はこの義妹・ユアノが可愛いらしくて、なんでも買い与える。…甘やかし過ぎだと私は思う。
ユアノの年齢とかから、義母とお父様は母が亡くなる前からの仲なんだなと思います。
それよりも高位貴族としての教養を身につけてもらいたいのだが、私が注意をするとすぐにお父様のところへ行って、「お姉様が意地悪を言うんです」と泣きつく。
泣きたいのは義妹に持ち物を奪われ、腹心の侍女も奪われ―――とどのつまりは全てを奪われた私の方なのだが、ユアノにそんなことはおかまいなし。
私の経験上、ユアノが次に目的とするのは私の婚約者だと思う。
私から婚約者を奪って、私の悔しそうな顔を見ることが何よりの喜びなのだろう。
―――不毛。
「サマンサ、お前にちょうどいい縁談話があるんだ。相手は同じ侯爵家の令息でな、陛下の覚えもめでたいし、今後王宮の中枢に食い込んでくる優秀な人材だと私は見ている」
陛下……確かもうすぐ退位なされて、新国王陛下の世になるのよね?王太子の覚えはめでたいのかしら?
この人―――多分私の婚約者になってすぐにユアノのターゲットになるだろうなぁ。
それでも、ディラーノ侯爵家の当主からのお話ですし、受けましょう。
「一度お会いしてみたいと思います」
「はいはーい!ユアノもその時会ってみたい!なにしろ未来の義兄になる方かもしれませんし」
早い……。縁談話に私が合意した段階でターゲットにしたの?
お見合いの場に本人以外が来るって非常識だと思うけど?
「仕方ないなあ。全く、ユアノは可愛いことを言って。では一週間後のお見合いの席にユアノも同席させることとしよう!」
―――非常識は誰に似たのやら?お父様ですか?
一週間後、本当にユアノもお見合いの席に同席するようだ。
「ディラーノ家長女のサマンサと申します」
「当主のディグだ」
「次女のユアノです。よろしくお願いします」
あーあ、向こうは誰が見合いの相手だかわからないような顔をしてるじゃない?本当に非常識なんだから。恥ずかしい。
「ジェンキンス侯爵家の長男のアーロンです。本日はよろしくお願いします。えーと、本人と保護者のみ参加するのでは?」
やっぱりそうよねぇ?うちが非常識なのよ!
「すみませんねぇ。うちの可愛いユアノがどうしても見合いの席に同席したいといいまして」
それを阻止するのが当主としての力量だろう?力量不足ですね。
「確かにユアノ嬢は可愛らしい」
はぁ、はい私の婚約者陥落~。
悔しくもなんともないよ?だって、婚約期間がないし。そもそも、私の婚約者だったの?
終始ユアノとアーロン様の会話でこの席は進み、終わった。
当然のことながら、この縁談話は私からユアノへとスライドした。
「ユアノがちょっと若いのが難点だなぁ。もうすぐデビュタントがあるだろう?それが終わったら即挙式だな。ハッハッハッ」
まぁ、お父様としては私だろうとユアノだろうとどちらでも構わないでしょうけど!
家同士の繋がりだから、長女だろうと次女だろうと関係ないから。
「またお姉様のモノを奪っちゃったかなぁ?でも仕方ないよね?だってあの場で一番可愛かったのは私だし。アーロン様の目を奪っちゃうのも仕方ないよね?」
そもそも、ユアノはあの場に来る予定じゃなかったけどね。
「このままじゃ、お姉様は行き遅れになっちゃうのかなぁ?そうしたら、変態爺の所にとつがなきゃとか?うわー、私なら絶対耐えられない!」
私もそれは嫌だから、それなら修道院に行くよ。
何しに来たの?
あ、自慢か。
なんか納得。
もう慣れた。
残念ながらユアノが見たかったであろう、私の屈辱的な顔を見ることはできなかっただろう。
義妹ってワガママですね。この子は病気ですね、もう。