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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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87.ハニートラップ?

 数日振りに『究極幻想譚』にログインするとメールが2通届いていた。

 フォニーとコロンからだ。

 どちらも表現こそ違うものの、掛かりきりになっていたクエストがようやく終わって、何やら僕に見せたいもの(紹介したいもの)があるので時間の合うタイミングで会いに来るそうだ。

 ただ今はログインしていないらしい。

 僕の方は今のところクエストは何も受けていないのでログイン中ならいつでも大丈夫と返事を出しておいた。


「そういえば王妃様が何かクエストを発行しておくって言ってたっけ」


 急ぎでもないと言ってた気がしたのですっかり忘れてた。

 それに薔薇園のクエストも達成扱いの筈だから冒険者ギルドに行けば報酬が貰えるはず。

 そう思ってギルドの扉を開けると目の前にニットさんが待ち構えていた。

 しかも顔は笑顔なのに闘気を纏って。え、激おこモード?


「ラキア様。お話がございます。どうぞこちらへ」

「あ、はい」


 これは絶対に逆らってはいけないやつ。

 僕はドナドナされる牛のように奥の応接室へと連行された。

 そしてそのまま椅子に座らされると目の前にお茶とお茶菓子が置かれる。

 ってことはかなりの好待遇?

 対面の席に座るニットさんを見ながらお茶を一口。

 そのタイミングでニットさんが言い放った。


「ラキア様は私達姉妹を身請けしたい、という認識でよろしいでしょうか」

「ぶふっ。ゴホッ、ゴホッ」


 突然の爆弾発言に思いっきりむせてしまったけど、え、なに身請け!?

 全く身に覚えがないんだけど一体どこからそんな話が?

 というか何か条件を満たすと身請けとか出来るって事?

 僕がひとり慌てていると、その姿を見たニットさんがくすっと笑った。


「驚かせすぎましたね。すみません」

「いえ。あ、ということは冗談?」

「それがあながち冗談とも言い切れません」


 そう言いながらニットさんが取り出したのは見覚えのある包装。

 それはどこからどう見ても先日プレゼントしたハチミツの小瓶だ。


「ラキア様はこちらの価値がどれほどとお考えですか?」

「ハチミツは高価って話ですよね。

 あ、でも王妃様がレアな蜂っぽいことを言ってたから普通のハチミツより更に高いのかな?」

「そうですね」


 えっと普通のハチミツでもものすごく高いって話だったから数十万とか、高くて100万くらい?

 なら単純に0を1つ増やして1000万とか。

 いやでもハチミツの小瓶1つに1000万出す人の価値観とか理解できないけど。


「例えば王都に家が建てられるくらいになったり?」

「いいえ、もっとです。王家に献上したら爵位を頂けるくらいです。それも男爵ではなく伯爵とかです。

 爵位の代わりに邸宅が欲しいと言ったら大豪邸が使用人付きで手に入ります」

「そんなにですか」

「そんなにです」


 どうやら0が1つどころか3つ4つは増やさないといけないレベルらしい。

 いやまだアイテムボックス内に何本か残ってるんですけど。


「どうしてそんなに高価なんですか?」

「理由は大きく2つ。1つは希少性です。

 このハチミツを育てた蜂は『幻の蜂』とも呼ばれるミスティックビーです。

 特殊なスキルか、妖精の助けが無いと見ることすら適わないと言われています。

 ラキア様を除けば国内に数人いるかどうかというレベルです。

 また見えたとしてもその蜜を手に入れるのは困難らしいです。

 最後に確認されたのは30年前に妖精の女王が友好の証として王家に渡したものになります」

「そうだったのか……」


 あれ、凄くあっさりと貰えてしまったんだけど。

 それに僕以外にもフィーディアさんも蜂達が見えてたみたいだし。ってあれは一緒に居た妖精のお陰かな。

 フィーディアさんがハチミツを貰ったかどうかまでは確認していない。

 そっちで問題が起きてないと良いな。


「そして2つ目はその効果です。

 適切に加工すれば10年は若返る秘薬が作れるという伝説があります」

「伝説?」

「伝説です。それくらい現実味がない品です」

「僕が適当に加工した美容液を王妃様に献上してしまったんですが……」


 僕の報告を聞いてニットさんが頭を抱えている。

 多分だけど調合初心者の僕が適当に加工したものでもそれなりに効果が出ると思うけど、逆を言えば貴重な材料を雑に扱った罪は重いのかもしれない。


「問題になったりするでしょうか」

「正直分かりません。

 実際に効果が出た場合、王妃様は社交の場に出る機会は多いですから貴族の御婦人方を始め大勢の人に見られることになります。

 その際、ラキア様の名前が出てしまうと、その方々からの問い合わせが殺到する危険があります。

 まぁ王妃様もそれは重々承知していると思いますので易々と口に出したりしないと思いますが。

 ちなみにラキア様はそのハチミツが大量に手に入ったりはしないですよね?」

「あーそうですね。色々あってしばらくは手に入らないと思います」


 蜂達の巣は現在再建の真っ最中だろうししばらくはハチミツを生産する余裕は無いだろう。

 僕は備蓄していた分のハチミツを分けて貰った訳だけど、それはつまり巣の再建が終わってハチミツの生産が再開されても減った分の備蓄を補充しないといけないので、やっぱり他に回す余裕はないと思う。


「ひとまずハチミツは全部使い切って追加も手に入らないという事にしましょう」

「はい。ちなみに私達以外にもハチミツを配ったりしてますか?」

「えっと薬屋の魔女のおばあさんの所に1本置いてきただけですね」

「そうですか。あの方なら適切に処理してくださるでしょう」


 良かった。

 これでひとまずハチミツの問題は解決かな。

 まだアイテムボックスの中に5本くらい残ってるけど。

 それとこういう話って今後増えていく気がする。


「もしかしたらですが、僕に限らず女神の祝福を受けた冒険者は、その祝福を利用してこれまでは手に入らなかった激レア素材を見つけてくる機会は増えると思います」

「まぁそれは……簡単には喜べない話ですね」

「はい……」


 単純に不治の病に効く万能薬が見つかりました。とかであればまだ良いのだ。

 しかし世界を亡ぼす暗黒物質的な何かとかが見つかると困る。

 それにどちらにしても希少な物を所持しているとなると、それを巡って争いが起きるのも世の常。


「あ、そのハチミツを持ってるせいでニットさん達の身に危険が及ぶ可能性があったりしますか?」

「今はまだ大丈夫なようですが、今後どうなるかは分かりません。

 危険と判断した場合は早急に処分しようと思います」

「うーむ、良かれと思って渡したのに逆に迷惑になってしまいましたね」

「いえいえ、そこはお気になさらず」


 ニットさんは笑って許してくれたけど今後は気を付けないと。

 リアルでも宝くじが当たった途端、強盗に狙われるようになって苦労した人の話とかもあったし、高額過ぎるプレゼントは相手を困らせることもあるんだ。


「さて、この件に関してはこれくらいにして」

「え、まだあるんですか?」

「はい。というか本来はこちらが本題なのですが。

 薔薇園の調査依頼の報酬と、ラキア様への指名依頼が届いています」

「あ、そうでした。じゃあ先に指名依頼の内容を聞いておきましょうか」

「王都の危機を救ってほしいとのことです」

「は?」

「王都の危機を救ってほしいとのことです」


 聞き間違いじゃなかったらしい。

 え、なぜにそんな重大案件が僕に回ってくるんだ?



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