表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/128

86.秋イベント準備中♪

 9月、というより2学期というべきかな。

 学校の代表的な行事と言えば修学旅行と文化祭だ。

 ただし修学旅行は学校によって冬にスキーに行ったり春先に沖縄に行ったりと色々。

 僕らの学校では11月半ばに九州に行くことになっている。

 そしてその1か月前。10月に行われるのが文化祭だ。

 今日はその文化祭で何をやるかを決める日。

 いや決まる日だ。

 ガラガラと音を立ててクラス委員が教室に戻ってきた。

 クラス中の視線が集まる中、委員長は頭を下げた。


「すまんみんな。うちのクラスは演劇になった」

「「あぁ~~」」


 何の話かと言えば文化祭1日目はステージ発表で、学年ごとに複数クラス合同で演劇または合唱を披露することになっている。

 今日はそのどちらをやるかをくじ引きする日だ。

 演劇と合唱でどちらがやりがいがあるかと聞かれると演劇なのだけど、同時に準備や練習が大変なのも演劇だ。

 出来れば合唱で楽をしつつ2日目の屋台などの出し物に注力したかったというのがクラスメイトの総意。

 そして僕も出来れば合唱が良かった。


「演劇だと僕に手伝えることが無いんだよなぁ」

「そっか。照元はそうだよなぁ」


 僕の呟きが聞こえた隣の生徒が相槌を打ってくれる。

 合唱なら指揮者が見えないだけで楽譜は耳コピすれば何とかなる。


「いっそ照元だけ合唱クラスに混ぜて貰えるように交渉してみたら?」

「いや、それはそれでうちのクラスからはみ出してるみたいで嫌じゃない?」

「確かにそうだな」

「探せば何か出来るかもしれないしこっちで頑張るよ。

 例えばそう、立ってるだけの木の役とか」

「無いだろ。幼稚園の学芸会じゃないんだから」


 まぁそうだよね。

 幼稚園では全員を劇に出さないと親御さんからクレームが出るから強引に役を用意している。

 だけど高校生にもなってそんなクレームを入れる親はほぼ居ない。うん、ほぼ。

 劇の内容にもよるけどキャストは数人から多くても20人。

 残りは大道具作りや音響照明などの裏方に回る。

 ただその裏方であっても僕に出来ることは思いつかない。

 まあ演劇部の人とかが中心になって動いてくれるっぽいし任せよう。


 それから数日。

 演劇担当になったクラスが集まってどんな劇にするか等が話し合われた。

 その中で誰かがこう言い放った。


「普通の劇ではつまらないだろう」


 その言葉に賛同する人多数。

 みんなノリが良いなぁと他人事で聞いていた僕はしかし続く言葉に驚くことになった。


「この学年には目の見えない男子が居たよな。

 彼を主役に据えた劇にするのはどうか」

「あ、こら馬鹿!」


 発言した男子は近くに居た別の男子に頭を叩かれた。

 その理由は単純。


「障害を持った人に対して、その障害をあてつけに何かを言ったりさせたりするのはダメなんだよ」

「ああそうだったな。すまん。悪気は無かったんだ」

「うん。別に気にしてないから大丈夫」


 頭を下げてくれた彼に問題ないと手を振る。

 今時代は差別とかいじめとかを抑止するための法令が色々と決められているのだ。

 有難いことにそれのお陰か僕は今まで目立ったいじめは、あー……小学生の時にちょっとあったかなって位で概ね平和だ。

 この学校でも変わらず平和に過ごせている。


「僕も目が見えないから何もしないなんて言う気は無いし、やれることがあるならやるから気兼ねなく言ってくれて良いよ」

「そう言って貰えて助かる」


 そして演劇部やラノベ好きのメンバーが中心にああでもないこうでもないと話し合った結果。


「え、僕が主役級で良いの?」

「おう。多少補助があればステージの上で動くことは可能なんだよな?」

「まあ走るのは難しいけど歩き回るくらいなら何とか」

「なら良し!」


 劇の内容は3人の侍が織りなすドタバタコメディになる予定らしい。

 元になった話は僕たちが小さい頃に流行ったアニメだそうだ。

 3人の内訳は、1人目が盲目の僕。2人目はガリ勉風の小柄な少年。3人目はお色気担当の天然くのいち風少女。


「なんか3人目だけ気合入ってない?」

「き、気のせいだろっ」


 目を逸らす男子たちとジト目の女子たち。

 そんなこともありながら全ての配役が決まり、約1か月後の文化祭に向けて本格的に準備が進んでいった。

 そして究極幻想譚の世界でも全プレイヤー共通の公式イベントの発表が行われた。



【さあさあみんなお待ちかね。秋イベントの告知だよ~♪

今回はみんなの予想通り、究極武闘大会~。わーぱちぱち~♪


夏の終わりからせっせと建築が進められていた王都東の闘技場がもう少しで完成となります。

そこでお披露目を兼ねてド派手にバトルしようぜって話だよ♪

競技内容は個人戦とチーム戦の2つ。

個人戦は予選の段階で全体を16組に分けてバトルロイヤル形式で行い、勝者16人による決勝トーナメントでチャンピオンを決定していくよ♪

チーム戦は1チーム3~6人でチーム内に1人大将を決めて、その大将を先に倒した方が勝ち♪

だから正面からねじ伏せるもよし、大将だけを集中砲火で倒すもよし。戦略次第で無名チームが優勝する可能性だってありそう♪

みんな奮って参加してね♪


あ、そうそう。話は変わるんだけど。

みんな従魔とは出会えたかな?

8月末に行われたサイレントアップデートで従魔との出会いイベントがかなり起きやすくなってるのは気付いてるよね?

え、そんなの知らないって人は祝福レベルが足りないのか運が足りないのかは分からないけど頑張って♪

個人戦は従魔が居ない人にはちょぉっと厳しいものになるからね♪

大会までに頑張って探してみよう♪

それと個人戦で優勝しちゃうような猛者にはサプライズプレゼントも用意してるから♪

ではでは、大会当日に会えるのを楽しみにしてるよ♪】



 という相変わらず♪マークが飛び交う内容だった。

 ただこの告知を境に大会までの練習に野良でPvPをするプレイヤーが急増するのかなと思ったけど、逆に減ったらしい。

 いや辻斬りみたいに誰彼構わず喧嘩を吹っ掛ける人は確かに増えたんだけど。

 でもそういう人は実力は伴っていないことが多くて返り討ちにあう事も多いのだとか。

 代わりにトッププレイヤーと呼ばれる人達は自チームの訓練場に引きこもって特訓しているそうだ。

 自分の手の内を明かしたくないという事らしい。

 その所為で何人かの配信者も新技の披露は控えて無難な内容の配信が増えたというのを噂で聞いた。

 僕は、そもそも対人戦に興味が無いので不参加の予定だ。

 観戦する側なら楽しめるかもしれないけど、応援したいプレイヤーはきっとミッチャーさんとイールさんくらいしかいない。

 フォニーやコロンもこういうのそこまで好きではなさそうだし。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ