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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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84.お裾分け行脚

 蜂達に見送られて森を出た。


「沢山お土産を貰ってしまった」


 彼らはこれから復興で大変なはずなのに最初の予定の倍のハチミツと、警察のプロと王室のゼリーというよく分からないけどレアっぽいものまで貰ってしまった。

 今は使い道も分からないのでしばらくはアイテムボックスに死蔵かな。

 あと花の種。何が咲くかは分からないけど空いてる土地があったら蒔いて欲しいと言われた。

 花畑が増えれば彼らのご飯が増えるだけでなく景観も良くなるから積極的に蒔いていこう。

 と言っても私有地に勝手にする訳にもいかないのでちょっと考える必要はあるか。

 そしてここ。廃都の東側の森は王都よりも最初の街の方が近かったりする。

 なので折角だから最初の街に寄っていこう。


 数日振りに戻ってきた最初の街は、少しだけ以前と変わっていた。


「みんな、ではないけど従魔を連れた人が増えたみたいだね」

(くすくす)


 小人みたいな子、動物、魚などなど姿も様々なら大きさもバラバラ。

 地上を歩いてる子も居ればプレイヤーの肩や頭に乗っている子や空中に浮いてる子もいる。

 夏休みの頃は全然見かけなかったので、多分最近になって増えたのだろう。

 それは良いのだけどちょっと気になるのは。


「元気のない子も居るけど大丈夫かな」

(くすくす……)


 フランも僕の感想に同意のようだ。

 なら気のせいでは無いのだろう。

 でも原因も分からないし、分かっても僕が出来ることは無いかもしれない。

 あ、配信を通じて何かアドバイスとか出来るかも。

 いやたった100人程度しか視聴者の居ない配信では影響力は皆無か。

 ともかく僕はいつもどおり冒険者ギルドへ。


「フェルトさん、こんにちは」

「あっラキア様。王都は如何でしたか?」

「そうですね。流石都会って感じです。

 あとニットさんにも会いましたよ。フェルトさんそっくりで驚きました」

「ふふっ、そうでしたか」


 珍しくフェルトさんが悪戯成功って顔をしてる。

 ではこちらからもちょっと仕返しをさせて貰おうかな。


「この世界に来てからずっとお世話になっていたフェルトさんにはお礼にこちらをプレゼントします」

「これは?」


 きっちりと包装袋に入ってるのでぱっと見何かは分からない。

 そうしたのには理由がある。

 なぜなら中身はハチミツの小瓶だから。

 

「人前では開けない方が良いですよ」

「はぁ」


 家に持ち帰って開封した時にたっぷり驚いてもらおう。

 そして僕はまだ王都で依頼を受けてるのでまたすぐにとんぼ返りだ。

 あ、その前にいつもの果物屋に寄って。


「え?」


 果物屋は黒山の人だかりだ。

 前はこんなじゃなかったのに。


「おう、久しぶりだな!

 お前さんだろ? うちを宣伝してくれたの。

 お陰で毎日のように商売繁盛だぜ」


 人だかりの奥を覗けばいつものおじさんが僕の顔を見て元気な顔を見せてくれた。

 そして僕が何も言う前に「いつものだろ。サービスだ持ってけ」と果物盛合せをアイテムボックスに放り込んでくれた。

 すぐに別の客の相手をしてる所を見ると長居しても邪魔になるだけっぽい。

 僕はお礼を言ってそそくさとその場を後にして街の外の薬草園へ。

 行こうと思ったんだけど、こっちも数組のプレイヤーで賑わっていた。


「……何事?」

(くすくす………………くすくすくす)


 フランが自分たち特有のテレパシーみたいなので薬草園の仲間の声を聞いたところ、最近は毎日のように数組のプレイヤーが果物を供えに来ているらしい。

 多い時だと10組を超えるのだとか。

 あまりに多く来られるとお返しの薬草も品切れになってしまうのでその場合は申し訳ないけど果物の受け取りを断ってるらしい。

 芋虫さん達にとっては嬉しい事なのかちょっと難しい所。

 人間でいうと主食のお米を輸出してお肉を輸入しているような状態かな。

 お肉は嬉しいけど、それで米不足になってはいけない。

 タンパク質と脂肪の取り過ぎは肥満と病気に繋がるのだから。

 その辺りのバランスはきっと芋虫さん達が上手くやりくりしてくれると信じよう。


「もし困ってたら教えてね」

(くすくす!)


 よし、気を取り直して王都に出発。

 今回はさっさと馬で移動だ。やっぱり歩くより数倍速い。


「あっ」


 よく考えれば街から街に移動する転移装置を使えば一瞬だったのでは?

 まあ今更か。

 既に道半ばまで来てしまったのでそのまま走り抜けた。


「で、王都の方も同じ感じか」


 最初の街と同様にこちらでも従魔を連れたプレイヤーが多数見受けられた。

 割合的にはこっちの方が多い気がする。

 まあお陰でフランを連れていても視線を集めないので良しとしよう。


「ニットさん、こんにちは」

「ラキア様。今日はどうされたのですか?」

「知り合いからお土産を沢山貰ったのでお裾分けに来ました」


 言いながらフェルトさんに渡したのと同じハチミツの小瓶を差し出した。


「まぁありがとうございます。では職員みんなで頂きますね」


 こういう、独り占めにする気がさらさらない所とかは僕的には高ポイントだ。

 でも残念ながら小瓶1つを分けるのは無理があるだろう。

 かといって職員全員に配る量は無い。


「すみません。そこまでの量は無いので、ニットさんがここぞという時に使うかお金が必要になった時に質にでも入れてください」

「はぁ」


 中身が見えてないので僕の言ってることの意味は理解できないと思うけど、ここで説明して万が一にも他の人に聞かれると騒ぎになってしまう。

 それじゃあ逆に迷惑になってしまうので今は秘密だ。

 一人の時に中を確認してほしい。

 ギルドでの用事は今回はこれだけなのでニットさんに見送られながら早々に退散。

 ようやく次が本命の調薬だ。


「こんにちは~」

「誰だい、こんな時間に。ってお前さんか」


 『薬屋 虫の息』に入って奥に声を掛ければ相変わらずのパジャマ姿で出てくる魔女のおばあさん。


「材料集めてきました」

「意外と早かったね。じゃあこっちに来な」


 案内に従って奥の部屋に行けば、そこは魔女の調合室、というより台所だ。

 奥のシンクを見れば朝食で使ったのか汚れたお皿とコップが水に浸かっていた。


「作りたいのは植物の栄養剤と基礎化粧品だったね。

 なら使う材料はこれとこれと……まあこんなところだ。

 作り方は材料をすり鉢にぶち込んで5分ほど気合を入れて磨り潰して、この水に溶かして濾せば完成だ」

「え……」

「何だい聞いてなかったのかい?」

「いえ。てっきりもうちょっと複雑な工程があるんだと思ってたから拍子抜けしただけです」

「上級ポーションならともかく初心者向けが難しいはずないだろ」

「ごもっとも」


 てっきりこう、材料によって加工の仕方が違ったり、お湯は沸騰させないとか、分量をグラム単位で正確に量らないといけないとか色々難しい条件があって、成功するまで何度もトライ&エラーを繰り返さないといけないのだと思ってた。

 しかし実際は、用意した材料を全部すり鉢に入れて言われた通りに進めていけば無事に栄養剤も化粧品も出来てしまった。

 うーん。ここまでリアルな世界で、ここだけ雑で良いんだろうか。


(くすくすくす)

「ん? あの水が気になる?」


 そういえば特に考えずに用意してもらった水を使ったけど、実はあの水に秘密があったのか?

 じっと眺めようとしたら立ちはだかるおばあさん。


「おっと出来上がったんならさっさと出ていきな」

「あ、はい。ありがとうございました。

 これ今回のお礼です。じゃっ」


 ハチミツの小瓶を置いて追い出されるように店を後にした。

 ちらっとしか見えなかったけど、確かに普通の水ではなさそうだった。

 魔法の水?もしかして聖水とか?

 まぁ次来た時にでも教えて貰おう。



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