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79.ハチミツを求めて

 分からない事は冒険者ギルドで聞けばいい。

 ということでギルドに戻ってきた。

 う~ん、やっぱり便利に使いすぎだろうか。また今度差し入れ持ってこよう。


「ただいま戻りましたニットさん」

「お帰りなさいませラキア様。魔女様には会えましたか?」


 魔女様って呼び名だったのかあのおばあさん。

 いや確かにそれっぽかったけど。


「はい。それで薬を作るのにハチミツが必要だと言われました。

 ただし街では簡単には買えないだろうとも」

「そうですね。ハチミツは入手が困難なため庶民が手にすることは滅多にありません」

「入手が困難ということは高レベルモンスターが徘徊する場所とか断崖絶壁にある感じですか?」

「いえ。ハチミツの取れる巣自体は普通の森の中になります。

 しかし巣を守る蜂は数が多くて殺傷能力が高い為、討伐任務の場合でも10人以上、レベル50以上が必須と言われています。

 また討伐の際に誤って巣を破壊してしまうとハチミツは入手出来なくなりますので広範囲魔法も使えません」


 小さくて数が多いのに範囲攻撃は使えないのか。それは確かに困難だ。

 討伐条件を満たそうと思ったら、例えばミッチャーさん達のチームに協力してもらえば行けるか。

 あれでもその前に確認。


「この世界で蜂ってモンスターなんですか?」

「モンスターの蜂も居ます」


 逆を言えばモンスターじゃない蜂も居るってことか。

 妖精の国に居た蜂はモンスターって感じしなかったしな。

 あの蜂たちならお願いしたらハチミツを譲ってくれるかもしれない。


「話が変わりますが、妖精の国への行き方って分かりますか?」

「いえ、残念ながら。

 それについてはむしろラキア様の方がご存じなのではないでしょうか」


 そう言いながらニットさんの視線はフランへ。

 そうか、フランも()()獣なのだから妖精の国に行く方法を知ってるかも。


(くすくすくす)


 しかし首を横に振るフラン。

 どうやらフランはこっちの世界で生まれ育ったから妖精の国は今初めて聞いたみたいだ。

 当然行き方も分かる訳が無い。

 ならやっぱり妖精の国に行くのはしばらく後になりそうだ。

 ハチミツもこっちで何とか調達するしかない。

 考えられる方法は、


1.お貴族様にお願いしてハチミツを分けて貰う。

2.モンスターな蜂の巣を襲撃してハチミツをゲットする。

3.モンスターじゃない蜂の巣を襲撃してハチミツをゲットする。

 

 1は貴族にコネが無いから無理だろう。

 2はミッチャーさん達にお願いすれば何とかなるかも?

 3は気合を入れれば自分だけでも出来るかもしれない。でも強盗みたいなものだしやりたくはない。穏便に譲ってもらえるのが一番なんだけど。

 ってそうか。


4.モンスターじゃない蜂にお願いしてハチミツを分けて貰う。


 これで行こう。

 幸いにしてこっちの世界でも話が通じそうな蜂に心当たりはある。


「相談に乗って頂きありがとうございます。

 まだもしかしたらって段階ですけど何とかなるかもです」

「そうなのですか? それは良かったです」

「なので今からちょっと行ってきますね」

「はい、お気を付けて」


 ニットさんに見送られながらギルドを出た僕は買い物を済ませて街の外へと向かった。

 目指すは北東。廃都だ。


「そういえば廃都って今はどうなってるんだろう」


 夏休み中のイベントで魔神が復活して根城にしたって話は聞いたけど、それ以降何かが起きたという話は聞いていない。

 騒ぎになっていないということは魔神が暴れたりもしていないという事だとは思うけど。

 南門の前を通ってみた所、そこにはちょっとした町が出来ていた。

 入口に警備のおじさんが暇そうにしてたので聞いてみよう。


「あのぉ、ここって何ですか?」

「お、新人さんかな。

 ここは廃都を監視する部隊の待機所兼ダンジョンアタックする冒険者の為の宿場町だ」


 そういえば元々廃都はアンデッド系モンスターが出るダンジョン扱いだったけど、今では魔神が呼び出した強力なモンスターが徘徊する高レベルダンジョンなんだった。

 多分トッププレイヤーの人達が日夜攻略に勤しんでいるんだろう。

 僕は興味ないので素通りだ。

 そしてやって来たのは廃都の東側。

 確かこの辺りに、あ、あった。


「こんにちは~」

『ブゥゥ~ン』


 目的の場所はもちろん薬草園。

 前回ここで蜂さんに道案内してもらったのを思い出してやって来たのだ。


「こちらつまらないものですが」


 言いながら果物盛合せを差し出す。

 蜂さんもぺこりとお礼を言いながら早速リンゴを食べ始めている。

 その様子を眺めながら僕は本題を切り出した。


「実は今日はお願いがあって来たんだ。

 もし可能であれば、君たちが集めたハチミツを少し分けて貰えないかな」

『シャクシャクシャクシャク』


 せっせと果物を食べる蜂さん。

 その様子からは良いのかダメなのかは分からない。

 なのでまずは食べ終えるのをじっと待つことにした。


『ブン、ブン』

「聞いてみるから付いてきてってことかな」


 巣に戻らないとハチミツは無いだろうし、何より女王蜂に確認しないといけないのだろう。

 ひとまず断固拒否では無かったことに安堵しつつ飛び上がった蜂さんの後を付いていくことにした。

 向かった先は森、いや林かな。

 木と木の間隔が広くて下草が沢山生えてる。

 花も多ければ虫も沢山いる。

 そしてモンスターは全長30センチの……


「げ、蜂型のモンスター!!」


 ちょっと待って。

 え、これ戦ったらマズくない?

 今からハチミツを分けて貰おうとしてるのに同族殺しなんてしたら交渉どころじゃない。

 と思ったけど違う。

 奴の狙いは僕だけじゃなく蜂さんも狙ってる!

 自然界でも蜜蜂を襲う蜂がいるそうだしこれも同じ感じか。


「なら容赦はしない」


 高速で飛んでる時ならともかく、ホバリングしてこちらを狙っている状態から急加速は出来まい。

 僕のボウガンの連射により頭と胸を撃ち抜かれた蜂モンスターは抵抗する間もなく倒れた。


「数が居たら大変だろうけど単独の遭遇戦なら問題なさそうだ」


 その後も蜂型以外にも様々な虫型モンスターを討伐しながら進んでいく。

 気になるのはこんなにモンスターが居たんじゃ通常サイズの虫たちは生きていけるのだろうか。

 狙われたらひとたまりもないと思うんだけど。


『ブゥゥ~ン』

「あ、普段は見向きもされないの? さっきは僕と一緒に居たから?」


 じゃあ僕のせいで危険に晒してしまったのか。ごめんね。

 そして辿り着いたそこで、僕は千を超える蜂に囲まれてしまった。

 最近こういう事が多い気がする。


『ブゥゥ~ン』

『『ブブブブ』』


 先導してくれた子とここに居た子たちで羽音の大合唱。

 さすがにこの数では聞き取ることが出来ない。

 きっと僕の事を説明してくれているのだろう。

 さてどうなるか。



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