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78.薔薇園の事件解決に向けて

 さて。王都の周りを軽く散策するだけのつもりが何故か大冒険になってしまった。

 あの真っ暗な空間は本来ならまだ行けない場所ってことなので無視して良いけど、妖精やその住処への行き方は調べる必要がある。

 あの綺麗な花畑に可能ならフォニー達も招待したいし。

 でもまずは出来ることから1つずつ解決していくべきだろう。

 なので行き先は王宮の薔薇園だ。

 と言っても別に謎が解けた訳ではない。


(くすくすくす)

「お、フラン。お務めご苦労様」


 薔薇園の入口に来たところで僕の肩にフランが飛び乗ってきた。

 実はフランには前回来た時にここに残ってもらって密かに監視する任務についてもらっていたんだ。

 上機嫌な様子からしてどうやら成果はあったらしい。

 王宮を出て冒険者ギルドに向かいながらその報告を聞けば、犯人が誰なのか、そしてその目的が何なのかも分かってしまった。

 やっぱり内部の犯行だったらしい。

 それが分かった今なら思い返せばヒントは幾つもあったことが分かる。

 後の問題はどうやって解決するか。

 多分犯人を捕まえただけだと評価はされないと思う。

 きっちりと根本解決を目指さないと。

 思いつくのはあれくらいか。


「ニットさん。調薬を学びたいのですが、どこか紹介して頂けないでしょうか」

「畏まりました」


 ギルド受付のニットさんに問い合わせたところ、ニットさんはじっと僕とフランを見つめた後、ひとつ頷いてメモ用紙に何かを書き込んで渡してくれた。


「これは地図と道案内?」

「はい。王都には幾つか薬屋はあるのですがラキア様ならここが一番良いかと思います。

 ただし少々分かりにくい場所にあるお店なので迷わないようにご注意ください」

「分かりました。ありがとうございます」


 手書きの地図には少々思うところがあるけどここは王都。

 主要な道は碁盤の目状に綺麗に交差しているので迷う心配はない。

 例えばメモの説明文に『東に3ブロック、南に2ブロック』と書いてあったら先に南に2ブロック進んでから東に向かっても同じ場所に辿り着くことが出来る。

 しかしそれなら地図なんて要らない訳で。


「南側にある階段を下る。階段? あ、あった」


 路面店ではなく地下にあるお店なのかな?

 と思ったけど道はまだまだ続く。

 しかも裏道なのかなと思ったら普通に人通りもあれば街灯も点いてる立派な地下街だった。

 立ち並ぶお店も普通の飲食店もあれば際どい服装のお姉さんが客寄せしてるお店もあって入るのは勇気が要りそうだ。

 そしてニットさんが紹介してくれたお店は……よかった。外見は普通のお店で看板に薬瓶の絵が描いてあるから間違いなさそう。

 ただ店名が『薬屋 虫の息』。大丈夫かな。


「こんにちは~」


 恐る恐る店内に入って声を掛けてみる。

 あ、店内は意外と普通。

 そりゃ薬草が吊るしてあったり中身がカラフルな薬瓶が並んでたりするけど、謎の骨格標本とか呪われた何かが所狭しと置かれていたりはしない。

 薬瓶の下には値札と説明が書かれているのでかなり親切。 


「おやおや、こんな時間に客とは珍しい」


 言いながら奥から出てきたのはパジャマ姿のおばあさん。


「あ、すみません。もしかして営業時間外でしたか?」

「いんや。ここいらの者は夜になってから来ることが多いからね。昼間は暇なのさ。

 それで」


 じろりと僕を見た後、フランに目が留まる。

 そしてにっこり。


「おぉおぉ珍しい。妖精獣じゃないか。

 そいつがいればイイ薬が作れるよ。ヒッヒッヒ」

「ちょっ。フランは僕の友達なので薬の材料にはさせませんよ!」


 怪しげに笑う姿はまさに魔女。

 きっと奥の部屋には大きな鍋があって紫色に輝く謎の液体が入ってるのだろう。

 僕は慌ててフランを抱きしめながら一歩下がった。

 僕の必死な様子が面白かったのかおばあさんはさらに笑った。


「ヒッヒッヒ。冗談だよ。

 薬になるのはその子の吐く粘液の方で殺してしまっては意味が無いよ」

「ほっ」

「それで、見たところお前さんは健康そうだが何しに来たんだい?」

「あ、はい。冒険者ギルドの紹介で、こちらで調薬を学ばせてもらえないかと思ってきました」


 どうやら本当にさっきのは冗談だったようで、今はただただ楽し気で、それでいて目は真剣だ。

 その姿はどことなく最初の街の工房のおじいさん達を思い出す。

 つまり熟練の玄人だってことだ。


「妖精獣を友達と呼ぶ女神の祝福を受けた少年か。

 なるほどなかなか面白そうだ。

 いいだろう。ただし使う材料は全部お前さんの持ち込みだ。

 足りない分は都度調達してきてもらう。それでいいね?」

「はい、よろしくお願いします」

「それでどんな薬が作りたい?

 どんな傷でも癒すエリクサーか。

 それともどんなバッドステータスでも打ち消す万能薬か。

 あるいはドラゴンすら昏倒させる劇薬か」


 なにやら凄いものを提示されたけど僕初心者ですよ?

 それに別に調薬の専門家になりたい訳でもない。

 それと今回はちゃんと作りたいものも決めている。


「植物の栄養剤と基礎化粧品が作りたいです」

「は? 栄養剤は分かるが化粧品とな。

 いやまぁ今時代は男でも化粧するのは変ではないのか」

「まあそうですね」


 ちなみに僕の父さんも風呂上がりの化粧水は欠かしていない。

 間違って忘れると翌朝顔を洗った時の手触りが全然違うらしい。


「それで僕でも作れそうですか?」

「中級くらいなら大丈夫だろう。

 特級の世界樹を生やす薬とかミイラを赤ん坊のようなピチピチ肌にしたいとかでなければな」

「そんなのは求めてません」


 え、というか頑張れば作れるの?

 あーそういう女神の祝福を受けてれば作れる可能性はあるのかも。

 エリクサーとかファンタジーの定番だし、ポーション頼りで世界征服しますって漫画をお姉ちゃんが持ってたし、このゲームでも狙ってる人は居そうだ。

 それはともかく。

 僕はアイテムボックスに入ってる素材を見せて材料が足りてるかを確認してもらったところ呆れられてしまった。


「なんだいこの薬草の量は。

 お前さん、薬草屋でも始める気なのかい?

 まあ栄養剤の材料は十分だ。

 しかし化粧品を作るならちと足りないね。

 お前さんでも手に入れられそうなもので言うと、ハチミツなんかがいいね」

「クマハチミツならありますけど」

「そんな樹液混じりのものじゃ駄目さ。却って毒になる。

 もっと純粋な蜜蜂が集めたものじゃなきゃ」


 そういえば説明欄に中毒性があるって書いてた気がする。

 でも普通のハチミツなら王都で売ってるんじゃないかな。


「じゃあ商店とかで買ってきますね」

「そりゃ無理だろう。純粋なハチミツってのはかなり高価だからね。

 一見さんには売ってもらえないよ」

「それならどうすれば」

「冒険者なら自力で採取しておいで。

 手に入ったらまた来な」


 そう言って僕はお店から追い出された。

 ハチミツかぁ。

 あ、妖精の国なら花畑があったし蜂も飛んでたからハチミツも手に入るかも。

 でも入口をまだ見つけれてないんだった。

 うーん。



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