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74.薔薇園での調査

 翌日。僕は薔薇園の調査の為に王宮の前にやって来ていた。

 ちなみに王宮って城とは別なの?って思ったけど、王宮というのはいわゆる王族の住む家の事を指すらしい。

 対して城は職場なのだとか。

 考えてみれば城には大臣だとか将軍だとか、はたまた様々な式典で多くの人が出入りすることを考えるとそこに住むのはちょっと嫌だよね。

 そして王族とはいえ個人宅にお邪魔するので今日は配信はなし。


「呼び鈴はこれかな?」


 門の所に紐が垂れ下がっていたので引っ張ってみればカランカランとベルが鳴り響く。

 それを聞いて奥の屋敷の扉が開き執事服を着た男性が出てきた。

 屋敷の扉から門まで10mくらいあるのを見ると流石王族の家って感じだ。

 その男性(やっぱり執事だった)は僕が薔薇園の依頼を受けて来たと言ったら慣れた様子で庭園へと案内してくれた。

 そしてそこには10人以上の先客が。どう見ても全員プレイヤーだな。

 これは慣れるのも仕方ない。


「立ち入りが許可されているのは今通ってきた通路とこの庭園の中だけになります。

 決してお屋敷の方には近寄る事の無いようにお願いします」

「承知しました」

「またここでの騒動は重罪になります。くれぐれも問題を起こさないように」

「はい」


 これはあれかな。

 すでに誰かが騒動を起こした後だったり?

 よく見れば警備の人が隅の方に立ってるし何かあればすぐに捕まりそうだ。


「では私はこれで」

「案内ありがとうございました」


 去っていく執事を見送り僕は早速薔薇園に入っていく。

 そしてこの薔薇園。

 聞いていた通り多くの花は萎れて見る影もない。

 大体2/3はダメになってる感じだ。

 これから咲く蕾はあるけど、そっちはまだ大丈夫そう。

 一体原因は何だろう。

 植物の生育の為に必要なものは単純に言えば水と栄養と日光だ。

 もちろん細かい世話の仕方はあるのだろうけど基本はこの3つ。

 他に根腐れ、害虫、病気などでも枯れてしまう場合がある。

 でもそれは全部庭師が分かっていることだ。

 今更冒険者を呼んで調べさせることでは無い。

 だから僕が調べるべきは普通の庭師では分からない部分だ。


「そこは僕の『視力』を使って……ふむ」


 ふむ。

 うーむ。

 芋虫さん達みたいな子が薔薇の枝にくっついてたりは……しないな。

 じゃあ土の中に潜んでたり……しない。

 もちろん蜂みたいに空を飛んでも……いない。

 実は僕ら全員集団幻覚を見せられてるなんてことも、ない。


「フラン、何か分かる?」

(くすくすくす)


 分からないかぁ。

 分かるのは花の元気が無い事だけ。

 それは僕も見てて分かってるんだ。

 あ、そもそも今回の依頼は僕だけが受けてる訳じゃない。他の人達も受けてるんだ。

 僕の祝福だけが解決できる方法である筈がない。

 もっと誰でも解決できる何かが原因のはず。


「懲りずに今日も大勢来てらっしゃるのね」

「ん?」


 誰かが庭園に入ってきた。

 豪華なドレス。妙齢の女性おばさん。ちょっと厚化粧?

 そして後ろに従えてる屈強な護衛。

 ここから導かれる答えは。


「王妃様?」

「あらあなたは?」


 お、当たりらしい。

 でもこれって直答して良いのか?

 まぁ聞かれたから答えれば良いのか。


「僕は冒険者のラキアです」

「そう。それで何か分かったのですか?」

「残念ながらまだ何も」

「そう」


 そっけない返事。

 別に何も期待してなかったんだろう。

 王妃様は僕から視線を外しゆったりと庭園を巡りながら薔薇の様子を窺っていく。


「あらお母様も来ていらしたのね」


 続いて現れたのは僕と同い年くらいの女性。

 言葉からして王女様かな。

 一緒に居るのは取り巻きの令嬢たち。


「やはり花が咲いていないのでは来る価値はありませんわね」

「冒険者というのも粗野な方ばかりですわ」

「行きましょう皆様」

「「はい」」


 庭園の入口で中を見渡して感想を言った後、すぐに戻っていった。

 いったい何がしたかったのか。

 あ、もしかして上手に話しかければこのクエストのヒントを貰えたとか?

 でもあの高飛車な感じの女性と話せる程、僕の社交スキルは高くない気がする。

 それならまだ王妃様の方が話しやすいかも。

 視線を向ければ今も果敢にチャレンジしてる人が居るけど2、3言話したら護衛の人に追い払われてた。


「う~ん」

(くすくす?)

「いや、今チャレンジするのはやめておこう」


 僕が話しかけてもそもそも何を話せばいいのか分かってない。

 それよりももっと話しやすくて情報を持ってそうな人がまだいる。

 そう、庭師だ。

 多分奥に居るおじいさんがそうだろう。

 ついさっきまで別のプレイヤーの人が話しかけてたし間違いない。


「あの、すみません。庭師の方ですよね?」

「ああそうだ。お前さんは調査依頼を受けて来た冒険者だね。

 済まないが質問は1日2回までにして欲しい。

 皆から質問攻めにあっていて他の仕事が滞っているんだ」


 質問は2回だけ。それで解決出来なければ出直して来いってことか。

 これはゲーム的に考えて、裏を返せば有益な情報を持っているという事。

 じゃあ何を聞けばいい?

 薔薇の元気が無い原因に心当たりがないか……無いから冒険者に依頼してるんだよね。

 なら庭師には分からない魔法や呪いによる影響は考えられるか……いや聞いても分かる訳無いじゃないか。

 そうじゃなくて他に……あ。


「この庭園の出入りって誰でも自由に出来るんですか?」

「ん? まぁここは制限はない。が王宮への出入りには制限があるので外の者が出入りすることは難しいだろう」


 なるほど。つまり王族の方や王宮で働くメイドや執事、下働きの人達などはいつでも来れるんだな。

 でも庭園で悪さをしたのがバレたら良くてクビ。悪くて牢屋行きだ。死刑にはならないと思いたい。

 そんなリスクを負ってまでやるとしたら、まさか王族の暗殺が狙いか!

 いやいや、それにしたって庭園の花を枯らせることがどう繋がるのかさっぱりだ。


「他に質問は無いかい?」

「あ、ちょっと待ってください」


 他に何か有効そうな質問は何だろうか。

 出来れば他の人が聞いてなさそうなことで。

 悩む僕の目に庭師のおじいさんが使っている如雨露じょうろが飛び込んできた。


「その如雨露は水を撒いてるんですか?」

「いや、これは植物用のポーションだ。

 こうして萎れた花に掛けることで多少元気を取り戻してくれるのさ」

「なるほどそうなんですね」


 流石ファンタジー。

 リアルだったら栄養剤を花に掛けたらむしろ枯れる。


「さ、もういいかい」

「はい。ありがとうございました」


 質問を2つしてしまったのでお礼を言って離れる。

 するとすぐに別の人がおじいさんに話しかけていた。

 ほんとご苦労様です。

 さてここまでで得た情報で推理をする必要があるのか。


「『犯人はこの中に居る!』とか簡単に言えたら良いんだけどね」

(くすくす)


 残念ながら僕は名探偵ではないのでそんな簡単に解決出来たりしない。

 後ここで出来そうな事と言えば、枯れて落ちた花弁をじっくり調べてみるくらいか。

 ただ調べるとしたら植物学か薬草学などの専門知識が必要だけど僕は持ってない。

 ニットさんにお願いしたら良い人紹介してもらえたりしないかな。



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