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70/104

70.なぜか増えてる

(昨日投稿し忘れてたので朝にこっそり)

 王都へ向かう道中は見かけたモンスターをボウガンで討伐しつつ、薬草などを見つけたら採取しつつとピクニック気分だ。

 多分まっすぐ王都に向かった場合に比べて数倍時間を掛けてると思う。

 そしてそんなのんびり配信の視聴者は現在137人。

 ……137人!?

 まさかの3桁である。


「えっと、失礼ですけど皆さん退屈じゃないですか?」


 思わず聞いてしまうくらい驚いてしまった。

 だって僕は特別凄いことをしてる訳でも無いし、何か面白トークを展開してる訳でもない。

 なのに最初の人とか1時間近く視聴し続けてくれてる。


『あ、コメント書いても良い感じですか?』


 僕の質問に返信コメントが書き込まれた。

 もしかして一方的に流すだけの配信だと思われてたのかな。

 別にお断りした記憶は無いんだけど。


「はい、ご自由にどうぞ。

 戦闘中とか忙しい時は読んだり返事したりは出来ないかもですが」

『じゃあ無難なツッコミを1つ。街道から随分外れてますよ?』

「え?」

『あ~あ、言ってしまった』

『黙ってた方が面白そうだったのに』


 コメントを読んだ僕は慌てて顔を上げて周囲を確認した。

 あ、確かにずっと向こうに街道がある。

 どうやら薬草採取に夢中になって寄り道しすぎたらしい。


「教えて頂きありがとうございます。

 今回は急ぐ必要もないので寄り道もありということで」


 言いながら進路を街道に近付く方向に軌道修正。

 急いで戻ってもどうせまた薬草を見つけてふらふらするだろうから大まかな方向だけ間違わないようにするに留める。

 ほらまたあそこにも薬草が。


『さっきからレアな薬草多くないか?』

「そうなんですか?」

『いや採取してる本人がなぜ分かってないんだ汗』


 そんなこと言われても僕に薬草の知識はない。

 見た目キラキラしてるから採取可能な薬草だってことは一目で分かるんだけど、その薬草がどんな効能があるのか、珍しいものなのかなどは分からない。

 強いて言えばフランが「あれあれ」って指差すのを優先的に採ってるくらいだ。

 今摘んだ薬草だって道中で幾つも見つけたのでそれ程珍しいものでは無いだろう。


『ボウガンの命中精度も高いけどそういう祝福?』

『いや採取系の祝福なんじゃないの?ボウガンはスキルで何とかなるだろ』

『幸運上昇系だったり?』

『肩の従魔が見えないのか? 召喚か使役系の祝福に決まってるだろ』

『従魔?ただのぬいぐるみじゃないのかあれ』

『それよりボウガンの矢が自動装填されてることに気付けよ』

『レア装備ならそれくらい出来るだろ。馬鹿じゃないのか』

『あん、それ言ったら薬草採取だってスキルレベル上げればレアなの採れますぅ』

「あ、いや」


 なぜかコメント欄で口論が始まってしまった。

 それも僕をそっちのけで。

 どうしよう。

 配信のコメント欄ってこんな風に荒れることもあるのか。


「皆さん落ち着いてください」


 と言っただけで落ち着くなら苦労はしないか。

 こういう時はリアルだったら時間を置いて場を改めるのが良いのだろうけど配信の場合は、あ、これがあった。


【コメントの受付を停止します】


 一時的にコメントを止める。

 書き込みが出来なければ彼らも口論出来ないので落ち着かざるを得ないだろう。


「えっと、色々推察するのはご自由にどうぞなのですが、僕の方から自分のスキルや特に女神の祝福について開示する気はありません。

 各種議論や考察はコメント欄ではなく、別の掲示板?とかでお願いします」


 伝えてからじっと10秒ほど待ってからコメントの受付を再開する。

 これでもしまだ喧嘩するようならコメント欄は凍結かなぁ。

 しかし幸いにも僕の心配は杞憂に終わったようだ。


『すまない。想定外の事が多すぎて興奮してた』

『配信者無視して話し込むのもマナー違反だった。反省』

『マナーというかブロックされてもおかしくないレベルでした』

『『ごめんなさい』』

「まあ怒っては居ないので大丈夫です」


 それにしても一体何が起きてるんだろう。

 こんなに視聴者が増えているのもそうだし、先ほどの議論もなんでそんなに興奮していたのかが分からない。

 こういうのってこっちから聞いても良いのかな。


「えっと僕から皆さんに質問とかしても大丈夫ですか?」

『ええよ~』

『なんでも聞いてくれ』

「ありがとうございます。

 皆さんはどうして僕の配信を観続けてるんですか?

 特に凄いことしてる訳じゃないし、もっと面白おかしく配信してる人は沢山いると思うんですよ」

『それはそうなんだけどな』

『これはあれか』

『気付いてないのは本人だけってパターン……』

「え?」

『ラキアさんにも分かるように言うと、珍しい祝福を授かってそうな人の配信にはそれだけで一定数の視聴者は付くんですよ。

 やっぱりそういう人の方がレアイベント引き当てることが多いし未発見情報とかにも期待してます。

 あ、珍しい祝福なんだろうなっていうのは戦い方やその肩の従魔?を見れば一目瞭然なので』

『冒頭の薬草園のネタとか初耳だったし。あれ広めても良い?』

『プロよりも不慣れな人の方が奇抜な行動を取ってくれるから面白い』

『やらかし希望』

『派手なだけの戦闘シーンは見飽きた』


 なるほど?

 見飽きたって、配信してるプロの方たちは一生懸命面白い企画を考えて頑張っているのにちょっと可哀そう。

 まあいくら何でもその人達を僕が追い抜くことはないのだろうけど。

 ちなみに珍しくない祝福っていうのは多分、戦闘系や魔法系あとは生産系みたいな多くの人が同じような祝福を受けてるものを指すのだろう。


「じゃあ無理して何か面白いことをしなくても大丈夫な感じですか?」

『むしろ自然体を希望』

『こういうのは下手に意識すると逆に何も起きなくなるから』

「なるほど。あ、薬草園の事は広めて頂いても大丈夫です」


 そういうものか。

 じゃあ僕は今まで通りやりたいことをやっていこう。

 って、あれは!


ワオォォーーン

ワンワンワンワンッ

「ぎゃああ~~~」

「まずいまずいまずいまずい」


 10体を超える狼っぽいモンスターの群れに追いかけられて逃げる男性プレイヤーが2人。

 あの必死さからして釣りではなさそう、かな。

 放っておいたら追いつかれて街に叩き返される未来が待っているだろう。

 多分最初の頃、フォビットに追いかけられてた僕もあんな感じだったのかな。

 あ、僕の場合はあんなに走れてなかったけど。


「あのぉ~、手助けは要りますか?」

「お願いしま~す」

「まじ助かる~」

「あ、逃げるのはこっちではなく、あっちに向かってください」


 声を掛けると僕の方に逃げてこようとしたので慌てて別方向に逃げるように指示する。

 残念ながら僕の戦闘能力ではまっすぐ向かってこられたら対応が間に合わない可能性がある。

 代わりに僕の前を横断するように走ってもらえたらモンスターは僕の格好の的だ。


シュシュシュッ

ぎゃいん、ぎゃいん、ぎゃいん。


 先頭を走るモンスター目掛けてボウガンを撃ちこめばあっさりと倒せた。

 この辺りはまだモンスターのレベルが低いみたいだし、急所に当てれば確殺できる。

 やっぱり先日のロックゴーレム狩りで発生直後のゴーレムの核を狙ってたのが良い経験になった。

 あれに比べればまっすぐ走るだけの獣を狙うのは造作もない。

 途中から僕の方に狙いを変えたけど、フランによる足止めも加わって僕の所に辿り着けたのは僅か1体。

 それも短剣に持ち替えて対応すれば若干手数は必要だったけどほぼ無傷で倒せた。

 これも最初の頃に比べると大分落ち着いて戦えるようになったんじゃないかな。

 モンスターを殲滅すると逃げていた2人がこっちにやって来た。


「危ない所をありがとうございました」

「無事で良かったです」

「あの、何かお礼を」

「いいですよ。僕も以前他の人に助けられたことありますし、世の中助け合いです」


 そうして別れて僕は改めて王都に向けて出発。

 だけどなぜか後ろを付いて来る2人。

 そっと振り向くと苦笑いが返ってきた。


「あ~もしかしてお二人って王都に向かう途中だったりします?」

「はい……すみません」

「あ、いえいえ。僕もそうなので良かったら一緒に行きましょうか」

「「はいっ」」


 旅は道連れ世は情け。

 僕の王都行き道中に2人増えました。



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― 新着の感想 ―
薬草園に深く分け入ると、 ベテランでさえも謎の死を遂げる例の件は、 ラキア君の頭には無いのだろうから、 確かめようとしてヒドイ事になる奴が出そうですね~
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