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67.ようやくまともな交渉ができた

 勝負を始めてから1時間くらいで向こうの人達がこっちに戻ってきた。

 どうやら納品素材が集まったから勝負の結果を確認しようという事なのだろう。


「俺達はもう依頼された分の素材が揃ったんだが、そっちはまだ掛かるのか? なら俺達の」

「安心して。私も十分な量を確保出来てるわ」

「ちっ。ならお互いのアイテムボックス内の所持数を表示して判定だな」

「そうね」


 一歩下がって話を聞いていた僕は内心そんなことが出来るんだと驚いていた。

 アイテムボックスの内容はもちろん自分の分は見れるけど他人に開示するのは、あれどうやるんだ?

 スマートデバイスみたいに音声認識で項目検索とか出来ればいいのに。

 僕があれこれ悩んでいる間にもコロン達はテキパキと操作して結果を見せ合っていた。


『コロン:344個』

『プロージ:312個』


 僅差ではあったけどコロンの勝ちらしい。

 プロージっていうのがあっちのリーダーの名前かな。

 彼はこの結果がかなりショックだったらしい。


「まじかよ。絶対勝ったと思ってたのに」

「くそっ。もしかして何かズルしてたんじゃないか?」

「いやゲシュト。僕はそれとなく彼らの動向を観察してたけど途中から明らかに討伐の速度が上がっていた。

 きっと新しいスキルを手に入れたとかじゃないかな」

「でもよ。釣り役と壁役でアタッカー不在なんだぜ?

 どうやってゴーレムを倒したって言うんだよ」


 リーダーと鑑定眼使いの他のもう1人はこの結果に納得が行かないらしい。

 事実として素材は集まってるし、鑑定眼使いが言うように後半はモンスターを釣る頻度も上げていた。

 それはコロンの討伐速度が上がっていたから。


「一つ勘違いしてるようだけど、私アタッカーよ」

「は?? いやでも盾持ちだろ?」

「盾で敵を殴るのが私の戦闘スタイルなの」

「まじか」

「信じられないなら見て貰った方が早いわね。ラキア」

「任せて」


 コロンの指示で適当なモンスターをボウガンで攻撃しておびき寄せる。

 6輪駆動で大きめだけど今のコロンなら大丈夫でしょ。

 全速力でこっちに向かってきたモンスターにコロンが盾を構え。


「『ダブルカウンター』!」

ドドグシャッ!!


 コロンの盾に触れた瞬間、まるで時間を倍速で巻き戻したかのように吹き飛んでいくモンスター。

 その衝撃で全身が砕け光になって消えて行ってしまった。

 3人はその破壊力に驚いたようだ。


「まじかよ。あのサイズなら俺達全員で攻撃しないと倒せないぞ。

 それをたった1撃で!」

「いえ。僕も正確に見えた訳じゃないですが衝突の瞬間、盾がブレました。

 恐らくあの一瞬で複数回の打撃を与えたんだと思います」


 流石の観察眼だ。

 実際には3回殴っているのでダブルカウンターとはこれ如何にって感じだけど。

 でも目の前でやられたら納得するしかないだろう。


「疑って悪かったな。

 じゃあ約束通り俺達が集めた素材を渡そう」

「ちぇっ、また集めなおしか。面倒だなぁ~」

「まぁまぁ。能力の連続使用の練習にはなるんだから頑張ろう」

「あ、それなんだけど」


 潔く負けを認めて素材を譲渡しようとしたところ、コロンが待ったを掛けた。


「あなたたちさえ良ければ素材の代わりに貸し1つって事でどうかしら」

「貸し? 俺達に何をさせようってんだ」

「そんなに難しい事は望まないわ。

 例えば別の機会にモンスターの討伐依頼を手伝ってもらうとか、今後のイベントで面白い情報を手に入れたらこっちに共有してもらうって言うのはどうかしら」

「ふむ……」


 コロンの提案を聞いて3人で相談をし始めた。

 そして結論が出たのかリーダーのプロージが頷いた。


「分かった。ただしイベントの情報はレア度の低そうなものに限らせてくれ」

「えぇ、それで十分よ」


 交渉成立ということで握手をする二人。

 それが済んだら彼らはこれから納品に行ってくると王都へ帰っていった。


「最後の交渉は中々に良かったんじゃない?」

「あ、ラキアもそう思う?」


 僕達としては素材の納品はおまけみたいなもので、本命はコロンの交渉の練習+盾によるカウンターの練習だ。

 だからそんなに沢山納品素材があっても別に嬉しくはないし、だったら今後に繋がる貸しを作りつつ交渉の練習が出来たこっちの方が断然お得だ。

 あと余談だけど彼らは1つ見落としているものがある。


「僕のアイテムボックスにも納品素材が貯まってるんだけど出すまでも無かったね」

「ちなみに幾つあるの?」

「400個くらい」


 ドロップアイテムはパーティーメンバーそれぞれに自動で振り分けられる。

 彼らはこっちに来る前にリーダーに集めてたんだろうけど、僕らはその暇が無かったから各自で持っていた。

 僕らは2人合わせて700オーバー。

 だから実際には僅差どころか圧勝だったんだ。


「合わせてたらそれこそ、何かズルしたんじゃないかって疑念が晴れなかっただろうからむしろ良かったのかも」

「そうね。あれはズルって言われても仕方ないと思う」


 モンスターが発生する瞬間を狙って核を狙撃。

 これをして良いのであれば反撃を受ける心配も無いし、どんな強力な魔物でも楽勝だ。

 多分間違いなく近いうちに修正が入って出来なくなるだろう。

 ま、出来るうちは使わせてもらうけど。


「私達も今日のところは終了しましょう」

「ということは明日以降も続けるの?」

「私はね。スキルの特訓にも丁度いいし」

「なら僕も付き合うよ。他に急いでやる依頼も無いし」


 そうして解散して翌日。

 今日はフォニーもログインしてたので折角だからと声を掛けてみた。

 その結果。


「あぁフォニー。あなたもなのね」

「え?え??」


 がっくりとうな垂れるコロンと意味が分からなくておろおろするフォニーが居た。

 多分昨日の僕らもこんな感じだったんだろうなぁ。


「えっとごめんなさい。でも私、コロンちゃんと冒険するの好きですよ?」

「あ、うん、ありがと」


 コロンからの一見何の得もない提案をフォニーがすんなり受け入れてしまったので交渉にはならなかった。

 だから友達から遊びに誘われても対価の話は出てこないって言ったのに。



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