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64.ロックゴーレム狩り

 最初の街を出発した僕たちは一路西へ。

 と言いつついつも通りちょっと寄り道だ。


「やっほ~。今日はお土産もあるよ」

((くすくすくすくす))


 先日行ってきた亜人の村で買ってきた野菜を取り出して薬草園の前に置くと見る見るうちに食べられていく。

 そんなにお腹が空いてるの?って思ったけどそう言う訳ではないらしい。

 外食と同じで普段食べない味は新鮮なのだとか。

 また山の方で貰って来た薬草も出してみたけど、そちらは食べずに奥に持って行ってしまった。

 どうやらここでも育てられるか実験するらしい。


「もしかしたらミントみたく繫殖力旺盛って可能性もあるから気を付けてね」

(くすくすくす)


 元気よく頷く芋虫さん達。

 彼らは薬草に関してはプロだろうし心配はいらないか。

 お裾分けを終えた僕は待たせていたコロンにお礼を言って移動を再開した。


「さっきのがラキア専用のイベント……私には視えないし」


 移動しながらぽつりとコロンが呟く。

 確かに今のところ僕以外に芋虫さん達と話をしている人って見たことが無い。

 フランの能力を考えるとこれって相当凄い事なんだけど。


「僕だけそんなに優遇されてて良いのかな」

「それは単なる祝福の方向性の違い」

「方向性?」

「祝福は元が同じでも成長のさせ方で全然違う能力になるのは知ってるでしょ。

 その結果発生するイベントも当然その影響を受ける」


 そういえば以前にも僕と同じように『視力』に関する祝福を貰ってる人の話は聞いたっけ。

 僕はその人みたいに魔眼とかは扱えない。

 まあ魔眼プレイがしたいかって聞かれると微妙なんだけど。

 その魔眼に関連したイベントが起きても僕は困ってしまうし、逆に芋虫さん達のイベントが魔眼プレイヤーに発生してもそもそも見えてないのだから気付けないのか。


「じゃあ僕が知らないだけで他の誰も知らないイベントを発生させてる人は意外と多い?」

「沢山居るわね。

 でもそういう人は秘匿することが多いから詳細は不明」

「なるほど」


 それで知らないのか。いや僕の場合は全然リサーチとかしてないからだけど。


「もしかしてコロンも秘密のイベントやってたり?」

「それ、言ったら秘密にならないじゃない」

「あはは、そうだね」


 盾の祝福。それも珍しい攻撃に特化した祝福を授かっているコロンはいったいどんなイベントを進めてるんだろう。

 気にはなるけど問い詰めたりはしない。

 そんなことをしても人間関係を壊すだけで得になるものは何もないのだから。

 手伝ってほしいと言われたらその時に聞こう。

 そうして呑気に話をしながら馬を走らせていると周囲は草原から荒地、そして岩場へと変わっていった。


「この先がロックゴーレムの出現地域よ」

「いかにもって感じの場所だね」


 地面は硬い岩盤に覆われ、至る所にひび割れが出来ている。

 割れ目に足を引っかけて転ばないように注意しないといけないな、と思いつつ進んでるとそれは現れた。


ゴロゴロゴロゴロ……

「四輪駆動の車?」

「えぇ。残念ながら人型ではないわ」


 ゴーレムと聞いたら何となく人型を連想するけど、この世界ではその常識は当てはまらないらしい。

 また形状もバラバラで共通点は足が球形でそれが回転することによって移動しているってことくらい。

 探せばバイクみたいな2輪車から8つも足が付いてるものもある。

 またちらほらとプレイヤーの姿も見受けられ、冒険者なのか土木作業員なのか分からない戦いを繰り広げていた。

 使っている武器もハンマーやつるはしが大半で剣で戦ってる人はごく少数だ。


「やっぱり有効なのは打撃系と魔法?」

「もちろん」


 ということはボウガンと短剣を使う僕に出番は無いのでは?

 そう思ってたけどどうやら違ったらしい。


「ラキアには釣りをしてもらうわ」

「魚釣り?」

「モンスター釣り。

 ロックゴーレムは一応近づくと攻撃してくるアクティブモンスターなんだけど、反応距離が狭いの。

 だから近接武器だとこっちから近づいて行かないといけないから面倒。

 そこでラキアにボウガンで攻撃してもらって、こっちに向かってくるように仕向けて欲しい」


 なるほど。それくらいならやれそうだ。

 幸いにしておじいさんに改良してもらったボウガンは射程も少し伸びてるっぽいしガンガン釣っていこう。


「じゃあ早速始める?」

「ううん、もっと奥の人の少ない所を探しましょう」

「了解」


 移動しながらも他のプレイヤーの戦い方を見てみるとなるほど。

 パーティーの中に1人くらいは威力度外視の遠距離プレイヤーが居て次々にモンスターに攻撃を仕掛けてる。

 集めたモンスターをパワー系のプレイヤーが一気に殲滅するのか。

 参考にさせて貰おう。

 

「この辺りでいいかしら」

「半径300メートル以内に人影無し。

 って、大分人少ない?」

「元々人気のないモンスターだから。

 それよりまずは1体釣ってみて」

「じゃああっちの四輪で」


 ボウガンを構えて撃つ。

 相手が大きいし10メートルくらいなら狙う必要すらない。


こつんっ

『……!』


 人間なら「あいてっ」って感じの軽傷でモンスターはこちらに向きを変え、ゴロゴロと走ってきた。

 距離がある分どんどん加速して最高速度は時速30キロくらい?

 向きを変えたって事はどうやら前後があるらしい。顔は無いけど。

 その走る石の塊に対し、コロンもいつもの大楯を構えた。


「『シールドバッシュ浸透勁(しんとうけい)』」

ドゴンッ!!


 およそ人が出したら骨折を心配する衝突音を響かせてぶつかるふたり。

 重量で考えれば明らかに100キロ越えのゴーレムの圧勝だろう。

 しかし吹き飛んだのはゴーレムの方だった。

 コロンの方はほとんど下がってないし。

 しかもゴーレムはただ壁にぶつかっただけとは思えない程、本体の石が粉々に砕けて消えていった。

 凄い威力だ。

 その結果にコロンはよしよしと頷いている。


「良い感じね。ラキア、どんどんお願い」

「分かった」


 コロンからのGOサインが出たので次のモンスターに狙いを付けていく。

 相変わらずコツンコツンと大したダメージにはなっていないけど注意は引けている。

 そしてモンスター達は遮蔽物も起伏もないこの場所でまっすぐにこっちに向かって来ていた。


(あ、やり過ぎた?)


 気が付けば10体、いや10台の石製の車が一斉にこっちに走ってきているような状態になっていた。

 これがリアルだったら逃げ場が無くて死を覚悟したことだろう。


「大丈夫」


 そう短く言いながら前に立っているコロンの背中がものすごく頼もしい。

 そしてその後は先ほどの1台と同じ結果が待っていた。

 コロンの大楯に衝突して跳ね返されるゴーレムたち。

 でも流石に全部1撃で破壊とは行かないようだ。


「ちょっと面倒ね」

「生き残った奴ら?」

「距離が近いと加速が足りなくて衝突ダメージが稼げないのよ」


 この世界ではきちんと作用反作用が発生する。

 ゴーレムにぶつけられてコロンが跳ね飛ばされない理屈は分からないけど、跳ね返されたゴーレムには速度と自重に比例した反動ダメージが入っている。

 言い換えると速度の出てないゴーレムを殴ってもそこまで大ダメージは出せないのだ。



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