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6.戦い方講習

 フェルトさんに案内されてギルドの裏手へと移動する。

 その途中、ふと気になったことを聞いてみた。


「あのフェルトさん。最初に癒し草の採取クエストをした訳ですが、それって武器の扱いを覚えてからの方が良かったんじゃないですか?」


 癒し草を取りに行くのだってモンスターのいる街の外に行かないといけないので、自衛する準備を整えてからの方が良かったんじゃないだろうか。

 そう思ったのだけどフェルトさんの考えは逆だった。


「好戦的な性格の方にはそうしています。

 しかし今まで戦いとは縁のなかった方に戦い方を教えてしまうと好奇心でちょっと試したくなってしまうでしょう?

 そうなるとむしろ危険なのです。

 近隣のモンスターなら近づかなければ襲ってこないので」


 普段は内気な子が護身術教室に1日通って強くなった気になってガキ大将に勝負を挑んだらボコボコにされました、みたいな感じか。


「なるほど。でも今なら大丈夫なんですか?」

「ラキア様はご自身の目でモンスターの姿とそれと戦う他の冒険者の姿も見てきたかと思います。

 その結果、多少なりともご自身が戦う姿も想像出来るのではないでしょうか」

「確かにそうですね」


 これから全く見たこともないモンスターと戦えって言われてもオロオロする未来しか思い浮かばない。

 武器だって間違ってハンマーなんて持って行った日には振り回されて終わるだろう。

 練習するにしても相手の動きをイメージしてやった方が良いという意見はよく分かる。


「一番の問題は僕に扱える武器があるかどうか」

「それは1つ1つ試してみましょう」


 話している間に訓練場に到着したようだ。

 学校のグラウンドくらいの空き地には先客の冒険者が数人居て、めいめいに武器を振って感触を確かめている。

 僕も入口近くに立て掛けてあった武器の1つを手に取り、彼らに倣って振ってみる。


「えいっ」

ブンッ、ガツ。


 最初は他の人たちが良く使っていた刃渡り1.5メートルほどの剣を振ってみたのだけど見事に地面を叩いてしまった。

 お陰で手が痛い。

 横で見ていたフェルトさんも苦笑いだ。

 多分内心センス無いなって思っていることだろう。


「ラキア様。もう少し小さいナイフ等は如何ですか?」

「ふむふむ?」


 言われるままに刃渡り30センチほどのナイフに持ち替える。

 これなら地面を叩くことは無いな。届かないから。


「これはどうやって戦うんですか?」

「主に刃先で切り裂くか、体重を乗せて突き刺すかの2通りです。

 私が少し実演して見せましょう」


 そう言ってフェルトさんは僕の持ってるのと同じナイフを持ってモデルになってくれた。

 流れるような体捌きと鋭いナイフの動きが一体となってすごく格好いい。

 まるで踊っているようだ。

 それでいて突き刺す動作はズシリと体重が乗っている。


「お~パチパチパチ」

「恐れ入ります」

「フェルトさんは実は強いんですね」

「ギルド職員は自衛が出来る程度には鍛えてますから。

 それより真似できそうですか?」

「やってみます。

 よっ、と。うわっ」


 フェルトさんの動きをイメージしてやってみたら足を絡ませて盛大に転んでしまった。

 やはりそう簡単には出来ないようだ。

 これも地道な反復練習が必要かな。


「ラキア様。もう1回やってみて貰えますか?」

「え、あ、はい。よっ(ドサッ)」

「もう1回お願いします」

「えっとこうしてこううわっ(ドテッ)」


 フェルトさんの手を借りて立ち上がったら何故か再チャレンジを頼まれた。

 でも何度やっても結果はほとんど一緒。

 しかしフェルトさんは何か考えている様子だ。


「今度は足を動かさずに腕の振りだけやってみてください」

「えっと、こういう感じ? あぁ足を動かさないから転ぶことは無いですね!」

「やっぱり。では次は私が木刀で殴りかかるのでナイフで受け止めてみてください」

「え、いきなり!?」


 いつの間に持ち替えたのか、フェルトさんが木刀を僕の頭めがけて振り下ろしてくるので慌てて受け止める。

 良かった間に合った。本当なら力で押し負ける気もするけどそこは加減してくれたみたい。

 などと安堵してる暇は無かった。


「ではどんどん行きますよ」

「ええっ!?」


 宣言通り右から左から、先ほどのナイフの時のように流れるような連続攻撃が僕を襲う。

 僕は腕を振り回して何とか受け止めるけど息をつく暇もない。

 ってフェルトさんが消えた……後ろか!

 後頭部を守るように置いたナイフがコツンと叩かれる。どうやら正解だったようだ。


「まさかこれも反応できるとは」

「半分まぐれです」

「それでも素晴らしいです。

 これならナイフによる防衛もしくは迎撃は期待出来そうですね。

 後は攻め手ですか」

「やっぱりこれだけだと無理ですか」

「近づいてくる相手には勝ち目がありますが、遠くから攻撃してくる相手には打つ手がありません」


 それもそうだ。

 やっぱり相手に近づくために走る練習はしていく必要がありそうだ。

 実戦で躓かないくらいに上達するにはそれなりに時間が掛かるだろうから当面はモンスターとは戦わずにやり過ごすことにしよう。

 そう思っていたらフェルトさんが別の武器を持ってきた。



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