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56.山登りにご案内

 ちょっとバタバタしてしまったものの無事に食事を終えた僕たち。

 そこへ女将さんが声を掛けてきた。


「ところで皆さんはどうしてこんな辺鄙な村にいらしたんですか?」

「僕たちは冒険者なんです。

 で、向こうの山に綺麗な景色が見れる場所があるって聞いたので来ました。

 あとついでに珍しい薬草とかあったら良いなと思いまして」

「なるほどそうでしたか」


 僕の答えを聞いてなるほどと頷いた女将さんはぽんと手を打った。


「そう言う事なら誰かに案内させましょう」

「え、良いんですか?」

「えぇもちろん。この村の者なら山には慣れてますからね。

 お~いカッタギさんや。ちょっといいかい」


 女将さんが外に声を掛ければすぐに40代くらいのガタイのいいオジサンが現れた。

 彼は僕らを見るなり「山に行くのか?なら案内したるで。さあこっちや」とお願いする前から案内する気満々だった。

 こんなにトントン拍子で話が進むのはゲームだから?それともいつもの事だから?

 王都から遠いこの村に来る人なんて行商人以外は何かの素材を求める冒険者くらいだろうから慣れててもおかしくないけど。

 とにかくさっさと行こうとするカッタギさんを追いかけて僕らは山へと入っていった。


「いやはやしっかし、こんなところまで足を運ぶとはお前さん方も物好きだなぁ。まあ物好きで言えば俺もそうなんだけどな。実はもうかれこれ20年以上前になるか。俺も当時は冒険者でな。この山に珍しい薬草があるって情報を知って一攫千金目指してやって来た訳よ」

「は、はぁ」


 このカッタギさんっていうおじさん。

 話好きというか、こちらが合いの手を入れる暇もないくらい話す話す。

 その調子でこっちに質問も飛ばしてくるから聞きそびれるところだった。


「それでお前さん方は強いのか?」

「え、えぇっと。まぁそれなりには戦えます」

「よしっ。じゃあモンスターの相手は任せた!」


 その言葉とほぼ同時に木の陰から飛び出してきたモンスターに僕らは慌てて武器を構えた。

 モンスターは猪や鹿やイタチといった、自然豊かな山なら居そうな動物をモンスター化させた感じだ。

 そしてカッタギさんが戦わないのは当然として、イールさんも諸手を挙げて戦力外宣言。


「すまん。こう木が密集してると飛び回るのは無理だ。風魔法で援護くらいなら何とかって所だな」

「了解です。じゃあカッタギさんの護衛をお願いします」

「分かった」


 後ろに下がるカッタギさんとイールさんを守るように僕らは前に出た。

 そして即興でフォーメーションを組んでモンスターを迎え撃つ。

 もちろんフォニーが前衛で僕が後衛だ。

 フォニーがスティックを握ってモンスターの頭を叩いてドンドンッ♪と響かせ、僕がボウガンで援護をする。

 モンスターもかなり強いけど、森の木が邪魔で同時攻撃が出来ないみたいなので、僕ら2人でもなんとかなりそうだ。

 援護射撃をしながらフォニーの後姿を見て、僕はふと懐かしさを覚えていた。

 まだ1月も経っていないけど、最初にフォニーとクマハチミツを取りに行った時もこんな感じで戦ってたなぁ。

 あの頃よりは大分強くなったと思いたい。

 数体倒してちょっと余裕が出来たところで、ふとフォニーがこっちを見てニコッと笑った。

 今のはもしかしてフォニーも同じことを考えてたのかな?

 などと気が緩んでいたせいで真上から落ちてきた大蛇に反応が遅れた。

 これは間に合わないか。


ピシュッ


 しかし肩に乗っていたフランが糸を吐いて迎撃。見事に両断して事なきを得た。


「ごめん助かった」

(くすくす!)


 フランから「油断しちゃダメ!」って怒られたけど全くその通りだ。

 そして無事にモンスターを撃退し終えたらまたカッタギさんが意気揚々と話しながら先頭を歩いた。

 どうやらこの先はずっとこんな感じらしい。

 などと思っていたら空気が変わった。


「!」

「気付いたか?」

「はい、今のはなんですか」

「イベントフィールドに侵入した証だろうな。

 その証拠に空を見てみろ」

「あ、いつの間にか夕方になってる」


 さっきまでは普通に昼間だったのに。

 どうやらイベントの内容に合わせて時間帯も変わるらしい。

 ある種別次元なのかな? まぁゲームだし難しく考えることは無いんだろうけど。


「この先に村があるから今夜はそこで一泊させて貰おうや」

「あ、はい」


 カッタギさんの話によるとこの先に村があるらしい。

 どうしてこんな山の中腹でモンスターが沢山出るところに村を創ったんだろう。

 まぁリアルでも山岳民族とか居るし日本でも山村谷村とかある。

 事情はそれぞれあるんだろう。

 そうして僕らは数度の戦闘を行いながらその村に到着した。

 入口で村人の1人がカッタギさんを見つけて明るい声を出す。


「あらカッタギさん、いらっしゃい」

「おぉ、ツーモさん。いつもながら別嬪さんやなぁ」

「うふふっ。ありがとっ」


 和気藹々と挨拶を交わす姿は随分と親しげだ。

 そしてツーモさんの視線がこちらに向いた。


「後ろの方はお客様かしら」

「冒険者のラキアです。こちらはフォニーとイールさんです」

「よ、よろしく」

「どうも」


 僕とフォニーはいつも通りだけど、イールさんは視線が泳いでる。

 その原因は恐らくツーモさんの服装かな。

 まるで今から海水浴に行くんですって感じのビキニ水着なのだ。

 更に出るところは出て引っ込むところは引っ込むモデル体型で顔も整っていて垂れ目の泣きほくろ付きだ。


「この山はモンスターも多く大変だったでしょう。

 さあ中へ入ってゆっくり休んでください。

 久しぶりのお客様ですからたっぷりおもてなししますよ」


 などと言いつつツーモさんがイールさんの腕に抱きつくようにして引っ張る。

 イールさんも「おほっ」ってちょっとあれな声を上げつつ嬉しげだ。

 そして村に入れば入ったで次々と村の女性達がやって来ては歓迎してくれる。

 その内の何人かは僕の方にも来たんだけど、僕が捕まらないようにスルリと交わすのを見て残念そうだ。


「ラキア君は女性に興味ないんですか?」


 フォニーからそんな質問を投げられたので首を振る。

 僕だって年頃の男子なので女性にもエッチなことにも興味はある。

 でもゲームの世界でっていうとどうなんだろう。

 人によっては後腐れが無い分、ゲームの方が良いって事もあるのかな。

 少なくとも僕はここの人達に心惹かれることは無さそうだ。

 そして歓迎ムードはそのまま広場で宴会のようになっていた。

 新しい刺激の少ない村だから外から来た冒険者の話に興味深々ってところかな。

 イールさんは両手に花って感じで美女に挟まれてお酒やら食事やらを食べさせてもらってる。

 なるほど「手が無いから食べさせて」って言えば自然とあーんが出来るのか。

 また僕とフォニーは並んで座りつつもその反対側には若い女の子たちが詰めかけている。


「ねぇねぇ今までどんな冒険をしてきたの?」

「大きな町では怖い人が居て油断してると食べられちゃうってホント?」

「ふたりは恋人同士なの?」

「この前知らないモンスターを見かけたの。怖いから添い寝して」

「お酒は大人になってからなんだって。ふたりはもう飲めるの?」


 などなど。うーん、にぎやかだ。

 僕は普段こんなに大勢の女の子に囲まれたことが無いのでどうしたらいいか分からない。

 でも隣にいるフォニーは僕以上に話の流れが早すぎて目を回している。

 これはどうにかこっちで主導権を握らないとダメだな。


「ちょっと聞きたいんだけど、この近くで綺麗な沢ってある?」

「えっと……?」

「あ、あそこの事じゃないかな。私達の水浴び場」

「そっか。私達には普通の場所だけど、外から来た人には新鮮かも!」


 僕が質問を投げかけると再びわいのわいのと盛り上がる。

 だけどそれも次の言葉でピタッと止まってしまった。


「でも今は立ち入り禁止なの」


 しゅんとお通夜モードになる女の子たち。

 どうやら問題が発生しているらしい。



すみません。

まだ確定では無いのですが、近いうちに1、2週間ほどお休みをいただくことになりそうです。

筆を置くわけではないので、少し早い夏休みと思ってお許しください。

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