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48.夏イベント惨敗♪

<ミッチャー視点>


 ラキア君がアジトを出ていくのを見送った私たちは早速行動を開始した。

 幸いにして死に戻り後の透明化は解除されているので街の人達に聞き込みも出来るようになっている。


「じゃあ早速【真実の鏡】などの幻影を見破るアイテムが無いか探しに行くか!」


 突撃隊長のビッテンがそう言うが、しかしリーダーのハルトが止めた。


「いや、それは生産メンバーに頼むことにしよう。

 彼らの方が街の人からの好感度が高いだろうし、何より僕らは先にラキアから教えて貰った情報を配信で流すべきだ」


 通常、イベント攻略に関する重要情報は他チームに伝えることは無いが、今回の実は敵だと思ってた相手がプレイヤーだったというのは私達だけが知っていても意味が無い。

 なら第1発見者として公表する方が他チームに貸しを作れるし評価も上がる。

 テキパキと慣れた操作でハルトが準備を行い、全員に目配せをしてから配信が始まった。


「チーム【電光石火】の配信を観てくれてありがとう。リーダーのハルトだ。

 突然の生配信で済まない。だけど急ぎ共有したいことがあってこうして時間を取らせてもらった。

 実は廃都地下マップの強モンスターの正体が判明した!」


 ハルトの宣言を聞いてコメント欄に驚きの声が多数上がる。

 この様子からして既出の情報にはならなさそうで少しほっとした。


「これは俺達が発見したというより、友人に教えて貰ったことなのだけど」


 そう前置きを入れるハルトに心の中で称賛を送る。

 こういう時に自分の手柄にせず、正直に言うところが彼の美点だ。

 そしてさっき私達が見ていたように2つの映像を並べて映しながら説明すれば誰もが同じ結論に達した。

 ただ、視聴者からこんなコメントが入った。


『あれ、なんか相手を倒したときに床が光らなかった?』


 その言葉に『気付かなかった』という返事も多くあったけど、見過ごせないと感じた私達は改めてスロー再生しながら問題の床を確認した。


「「光った!」」


 しかもただ光ったのではなく、手前から奥へと流れるように光が移動していった。

 これが意味するところが何か。

 考えられることは幾つかあったので視聴者を交えながら検討した結果。

 この地下施設で倒れた人のエネルギーを吸収しているのではないかという結論に達した。

 そしてそのエネルギーを何に使うかはこれまでの調査で分かっている。

 昔この廃都で召喚され倒されたという魔神の復活ないし召喚だ。


「つまりこの夏イベントの最後は魔神を討伐するレイドバトルって事だ」


 大規模イベントの最後を飾るのに持ってこいの内容だろう。

 復活する場所は恐らく地上。

 いつ出てくるかは恐らく前日くらいに公式からアナウンスがあるはず。

 そうじゃないと気付いた時には討伐されてたってクレームが出ることになるから。


「レイドの様子も生配信するからぜひ見に来て欲しい」


 そう言って配信を終了した私達はふぅと一息ついた。

 PvPバトルの次はレイドボスとは中々に楽しませてくれる。

 いったいどんなボスが出てくることやら。

 廃都だからやっぱりアンデッド系かな。

 などと考えていた所にビッテンの軽い声が聞こえてきた。


「いやはやあのラキアって少年の眼力を持ってしても床の光までは見抜けなかったんだな!」


 その言葉を聞いて、私は考えた。

 ここを出ていく際のラキア君はまだ何か言いたそうにしていなかったか。


「もしかしたら気付いてたかもね」

「あん? 隠してたってことか? あ、いや別に責めてる訳じゃねぇ。

 敵がプレイヤーだったって事を教えてくれただけでも感謝してる。

 だから睨むなって」


 私がムッとしたのを見て慌てて弁解している。

 まぁ彼が悪気があって言ってるわけではないのは分かってるから気にしてないけど。


「思い出してほしいんだけど、あの時最後は私達で話を纏めて結論を出してしまったでしょ?」

「確かに欲しい情報は得られたと話を終わりにしたのは俺達か」


 納得したところに、それを裏付けるようにコロンからメールが届いた。

 しかしその内容はまた別の事。


「えっとみんな。今コロン経由でラキア君から追加の情報が送られてきたんだけど……」

「煙突? げっ、本当だ!!」


 言われてから2度見返してやっと見つけられた。

 いや強敵を目の前にして誰がこんなギミックを見破れるんだって話よ。

 運営は中々に意地が悪い。

 そして続くメールには光る床の事も書いてあった。やはり最初から気付いていたらしい。

 更に敵の目的とPvP祭で盛り上がってる掲示板の情報まで添えてあった。

 しかも注意文付きだ。


PvP祭(これ)に参加するならNPCからの好感度が下がる可能性もあるから注意』

「だって。聞くまでもない気がするけど、どうする?」

「あぁ。聞くまでも無いことだ。俺達はPvP祭には参加しない。

 その後やってくるレイドバトルに全力を注ぐ!」


 注意文を読み上げてハルトを見れば、彼は当然だと頷いた。

 私達【電光石火】はトップ攻略チームを謳っているが、それは「何をしてでも」という話ではない。

 きちんと守るべきルールを定め、仁義を守りながらトップを狙う。

 他チームからはぬるいと嘲笑われることもあるけど、それが私達だ。


 数日後。

 予想通り現れた魔神に対し総攻撃をかける私達プレイヤー。

 なお現地の冒険者たちはもしもの時の為に廃都の外で陣を張っていた。

 ちらっとラキア君っぽい後姿を見かけたけど、多分気のせいではないと思う。

 そして大量の子分を召喚する魔神の本体に、私達はあと少し手が届かなかった。


「要するに惨敗だったって事ですか?」

「そういうことね」


 顛末を聞いたラキア君の言葉に私は頷いた。

 いったい誰が考えただろう。

 ボスに勝つどころか1ダメージも与えることなく試合終了になるなんて。

 最大の敗因はPvP祭で主だった攻略チームがボロボロだったことだ。

 万全の状態でも怪しいのにあれで勝てるわけがない。

 ただ召喚された子分の大部分を倒せたからなのか、魔神は廃都の中に留まって外へは出てこなかった。

 代わりに廃都の中央には魔王城っぽい城(いや魔神が住んでるんだから魔神城? ちょっと言いにくいけど)が建造され、超高難度ダンジョンとして私たちの挑戦を受け付けている。

 早速挑戦したチームが1階で撃退されていたので、最低でもレベル120くらいは無いと攻略は無理という結論に至った。

 そして今回のイベントの結果が発表され貢献度に合わせて報酬が配られることになった。


【夏イベント終了♪

メインクエストの攻略結果はこんな感じだよ♪


・アンデッド召喚儀式の阻止:失敗

・廃都外のアンデッド討伐:62%

・誘拐事件の真相究明:成功

・誘拐された人達の救出:成功

・誘拐犯の捕縛または討伐:成功

・上位悪魔召喚儀式の阻止:成功

・暗黒教団の討伐:37%

・地下施設のギミックの解除:失敗

・魔神召喚の阻止:失敗

・召喚された魔神の討伐:失敗

・召喚された魔神配下の討伐:78%


他にも隠しクエストが幾つか発行されてたけど、みんなは幾つ見つけられたかな♪

あぁ、成功失敗に関係なく世界の平和に貢献した分の報酬が配られるから安心してね♪

ただし人によってはこちらから渡す報酬以上の何かを得ている(失っている)かも♪

ではでは、次回のイベントをお楽しみに♪】


 だから♪マークはやめてほしい。

 まあいいけど。

 私達に配られた報酬はそれなりと言った感じ。

 例のPvP祭に参加したチームの方が報酬は良かったらしいが、やはりというか「分かっていて敵の罠に掛かっていた」ことが問題となり、NPCから白い目で見られたり冒険者ギルドからもマイナス査定を受けたらしい。



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