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45.隠された真実

 映像を見させてもらった僕は、ちょっと困惑していた。

 強力な敵と戦って負けたということだけど、いや僕が戦っても瞬殺されるくらいの強さだったと思うけど。

 どういうことなんだろう。


「うーん、分からない」

「あぁ、やっぱりラキア君でも分からないか」

「あ、いえ。皆さんが何に悩んでいるのかが分からないんです」

「「は??」」


 負けた原因は明白だし、解決策も目の前に転がっていたのにどうして誰も見向きもしなかったんだろう。

 いやそうか。もしかして僕と見ているものが違うのか。

 ただそれをそのまま伝えても信じてくれるかは分からない。

 何か証拠になるものが無いと。


「あの、この映像って配信してたんですか?」

「もちろん。やっぱ生配信が一番視聴者を稼げるから。

 あ、ネタバレ注意って説明欄に書いてあるぞ」

「なるほど。それって他の全滅したチームの人達も配信してるでしょうか」

「してるだろうな」

「それを観ることはできますか?」

「ちょっと待ってくれ」


 ハルトさんが画面の向こうで何かを操作すると、どこかのチームの配信動画が映し出された。

 そのチームは西区の教会へと向かったらしい。


「あ、全滅する戦いの所まで飛ばしてください」

「はいよ」


 映像が早送りされて、問題の戦闘シーンが映された。

 そこでは電光石火の皆さんと同じような光景が広がっていたけど求めていたものじゃない。


「別のチームのものはありますか?」

「何か探してるのか。

 じゃあこれでどうだ」


 今度は画面が16分割されてそれぞれの画面で別チームの攻略シーンが流れた。

 って、このゲームをプレイしてるチームってこんなにあるんだなぁ。

 感心しながら見ていると、お目当ての映像があった。


「停止してください。

 一番右の上から2番目の配信を戦闘の開始から流してください」

「分かった」


 1画面表示に切り替わったそこでは扉を抜けてやって来た相手に対し、リーダーと思われる大剣使いがスキル名を叫びながら突撃していた。


『竜舌蘭撃』

『グラァ!!』


 そこから激しいスキルの応酬が始まり、5分ほど粘ったけど全滅してしまった。

 一度映像を消してもらって皆に問いかけた。


「今のを見て何か気付きませんでしたか?」

「いや。強いて言えば俺達があのモンスター達と戦っても勝てた保障は無いくらい強かったなってくらいだ」

「他の方はどうですか?」

「…………はっ、まさかそういうことですか!?」


 お、どうやら向こうの魔法職の人が気付いてくれたっぽい。

 やっぱり後衛の人の方が戦場を俯瞰してみてるものな。

 その人はもう一度さっきの戦闘シーンを映す様にハルトさんに伝え、そして最初の切り結んだところで一時停止した。


「この敵の使ったスキル。これ『雷神剣』じゃないですか?」

「え、それって俺の」

「次のシーン。この後衛の魔法使い型モンスターが放った鳥の姿をした炎の矢。

 これ私の『フェニックスアロー』です。炎の矢をわざわざ変形させる人なんて他にいません」

「じゃあ何か。このモンスター達は俺達のスキルを模倣してたってことか」


 おしいっ。

 折角ここまで正解に近づいたのに、最後に間違った結論に突っ込んでしまった。

 訂正しようと思ったけど、代わりに僕が首を横に振ったのを見たミッチャーさんがちゃんと正解に辿り着いてくれた。


「違うわハルト。このモンスターに見えるのが私達自身ってことよ。

 私たちの配信と並べて映してみれば分かるわ」

「どれ」


 その言葉に従って画面を2つに分割して最初の切り結んだところから同時再生すれば鏡写しのようになっていることが分かった。

 ここまでくれば全員が同じ結論に至ってくれた。


「つまり幻術か何かで別ルートから来たプレイヤーをモンスターと誤認させられてたってことか」

「ええ、多分この赤い霧が原因じゃないかしら」

「なるほどそれで幾つものチームが全滅してたのか。

 相手が同じ攻略チームだってんなら強さについても納得だな」

「しかし配信映像を観ても相手がモンスターに見えるとは運営も凝ったことをする」


 そりゃこうして配信している手前、そうしないと視聴者のコメントですぐネタバレしてしまうからだろう。


「流石の洞察力だが、ラキア君はどうしてすぐに分かったんだ?」

「僕は最初から相手がプレイヤーに見えてましたから。

 多分【看破】ってスキルがあるからでしょうね」


 そのスキルのお陰で配信を観た感想は「皆対人戦も強いんだなぁ」だった。

 でもこれちょっと危険かも。

 騙し要素を看破出来るのは良いんだけど、僕一人だとそれに気付いていなかっただろう。

 この先、騙されることも攻略のヒントになる場面があった場合、僕はそれを取りこぼすことになってしまう。

 だからちゃんと相手がこちらを騙そうとしていることも見抜けるようにならないと。


「さて、敵の強さの秘密は分かった。

 だがそれが分かったところで次にどう解決するかだ」

「この情報を他チームにも共有すればプレイヤー同士で潰し合うのは避けられるんじゃないですか?」

「俺が運営ならプレイヤーの動きに似せたモンスターを混ぜる。

 例えばそうだな。遭遇してすぐは攻撃せずに無害アピールをすることでプレイヤーと思わせて油断を誘い、背中を向けたところで一気に襲い掛かってくるようにプログラムすれば判別は難しくなるだろう」

「うわっ、性格悪いですね」

「結局はこの擬態を破らないと攻略は難しいってことか」

「教会とかギルドに行けば何かあるかもしれないですね。【真実の鏡】とか」

「よし、じゃあそっち方面で一度調べてみるか。

 ラキア君のお陰で大分解決に向けて前進できた。

 この礼はまた後日改めてさせてもらうってことで良いだろうか」

「あ、はい」


 電光石火の皆さんの間で話はまとまったようだ。

 じゃあこれ以上僕から何か言う必要は無いかな?

 実はまだ視えているものがあるのだけど。

 でもそれを伝えてしまうとネタバレどころか答えになってしまいそうだし言わない方が良いか。

 僕は電光石火のアジトを出て1つ伸びをしながら街の様子を確認した。


「誘拐事件が起きてた時に比べると大分落ち着いてる、かな」


 小さい子供だけで歩いてる様を見るに誘拐事件はほぼ終息したと見ていいだろう。

 なら夏イベントも廃都で暗躍している奴らだけの問題で、そこから出さなければこちらの勝ちかな。

 たださっきの動画の内容から考えて、いくら答えが分かっていると言っても僕があそこに行けば問題を解決する前に倒されてしまいそうだ。

 圧倒的な実力不足はどうしようもない。

 まあ僕1人でどうするかを考えても仕方ないよな。

 フォニーとコロンは、おっ、ログインしてる。


『今日もこれから合流できる?』

『大丈夫です』

『うん』

『じゃあ冒険者ギルドで待ち合わせで』


 ふたりからOKの返信が来たのを確認して僕はギルドへと向かった。

 僕1人じゃ無理でもみんなが居れば良い案も出てくるだろう。



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