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44.電光石火チームの攻略配信

「リーダー、そんな探るような真似してると嫌われますよ?」

「すまんすまん。だけどこれから伝える情報を他に漏らされても困るから口の堅さは確認しないといけなかったんだ。

 ラキア君も悪かったね」

「いえ、全然気にしてません」


 謝ってくれたけど、僕としては本当に気にしてない。

 組織の上に立つ人ならそれくらいの慎重さは必要だろうし、騙された訳でも傷つけられた訳でも無い。


「じゃあ改めて俺達が知っている情報と受けたクエストについて話させてくれ。

 今回の黒幕だが、暗黒教団が関係しているらしい」

「いかにもって名前ですね」

「ああ。知っているかもしれないが、奴らの目的は女神を打倒して自分たちの信じる神を降臨させることだ」


 女神って僕達に祝福を授けてこの地に招いたとされるあの女神か。

 なら完全にプレイヤーの敵って事だな。


「女神を打倒するってどうやるんですか?」

「さあ。今のところテロ行為ばかり確認されてるから女神の祝福を受けた人類を滅ぼせばって考えてるんじゃないか? 知らんけど。

 まぁそこは今は置いておこう。

 今回に限って言えば廃都でアンデッドや悪魔を召喚して近隣の街を襲わせる計画らしい」


 その悪魔召喚の為の生贄として街の人達を誘拐していた、と。

 やっぱり一足飛びに魔神召喚とは行かないよね。


「俺達はその計画を阻止するために廃都の主要施設である領主館の攻略に乗り出したんだが、そこでデバフ部屋に誘い込まれた上に強力なモンスターとの連戦を強いられた結果、こうして死に戻ったと言う訳だ」

「なるほど」


 僕が遭遇したあいつも呪術師っぽい魔法を使ってたし、その暗黒教団というのはそういう奴が多いんだろうな。

 うん、そこまでは分かったけど肝心な部分がまだ分からない。


「それで、どうして僕が呼ばれたんですか?」

「それなんだが、どうもクエストの難易度が高すぎる気がするんだ。

 実は死に戻ったのは俺達だけじゃなく、他の有力な攻略チームが幾つも壊滅してる。

 だからもしかしたら何らかのギミックが絡んでいて、それを解除しないとクリア出来ないのかもしれない。

 そこで『狩人の森』で見事な洞察力を発揮していた君ならそのギミックが分かるかもしれないと思って来てもらったんだ」


 なるほどそういうことか。

 でもここまでの話を聞いても全然ピンとくるものはない。

 僕は名探偵ではないので『謎は全て解けた!』とか『犯人はこの中に居る!』みたいな名推理は出来ない。

 むしろナゾナゾ系はちょっと苦手まである。

 狩人の森では隠れ潜んでいたのを見つけただけなのだ。

 だから僕は首を横に振る。


「一度見てみないと何とも言えないです」

「そうだろうな。

 と言う訳で、今から先ほどまでの探索の様子を撮影した映像を見て貰おうと思う。

 ネタバレも含んでると思うけど良いだろうか」

「はい。ネタバレ(そういうの)は気にしてないので大丈夫です」


 僕の返事を受けてハルトさんがウィンドウを操作すると壁一面に映像が流れ始めた。

 舞台は街中。目の前には大きな洋館が建っていた。

 これが恐らく領主館なのだろう。


『これより俺達、チーム【電光石火】は領主館の攻略を開始する!』


 カメラに向かって画面の中のハルトさんが宣言した後、屋敷の中へと突入した。

 屋敷の中は、ゲームだからだろう、外観以上に広くて複雑に廊下と部屋が入り組んでいた。

 出てくるモンスターはゾンビやゴーストと言ったアンデッド系ばかり。

 僕たちが戦ったのより数段強そうだけど余裕で討伐して先に進んでいく。

 道中、罠も頻繁にあったのだけど全てミッチャーさんが発見、解除していた。


「ミッチャーさん凄いですね」

「罠探知のスキルがあるお陰よ。

 ダンジョン探索するなら1人は持ってないと危険ね」


 そんなスキルがあるのか。

 罠の中には発動したらパーティーが全滅するような凶悪な物もあるらしいので後で取得方法とか調べておこうかな。

 ともかく1階は無事に探索が終わり、続いて地下へと降りて行った。

 すると周囲の様子が一変する。

 それを見てハルトさんはニヤリと笑った。


『どうやら当たりらしい』


 当たり。つまり今回のイベントの重要施設ということだ。

 隣で一緒に映像を見ていたミッチャーさんが「通常なら普通の地下室なのよ」と補足してくれた。

 出てくるモンスターもアンデッドから僕も対峙した黒フードの怪しい奴らへと変化した。

 でもやっぱり多少苦戦はするものの余裕を残して撃退。

 そしてやってきました怪しい部屋。

 床に魔法陣みたいなのが描かれていたり燭台が幾つもあったりと見るからに悪いことしてますよって感じだ。

 そこで待ち構えていた黒フードが手をかざすと魔法陣が光り羽の生えたモンスター(悪魔?)が3体召喚された。


「今回の中ボスね」

「流石に強そうですね」


 そう思ったのだけど、そこは実力者揃いの攻略チーム。

 モンスターの放つ黒い槍みたいなのを受けたり弾いたり、時に掠めたり吹き飛ばされたりとヒヤッとする場面もありつつも誰一人脱落することなく討伐に成功していた。

 というか今の戦い、最後の身のこなしが出来るならもっとスマートに勝てたと思う。


(所謂、魅せプって奴かな)


 プロレスなどのように配信者が観てくれる人が喜ぶように好ファイトを演じるっていうのは良くあるらしい。

 僕は多分そんな余裕はないだろうけど。

 ともかく部屋の中にはモンスターを召喚した黒フードの姿は無く、どうやらさっきの間に奥の扉から逃げていたらしい。

 何とも贅沢な時間稼ぎだ。

 それに気づいた電光石火の皆も扉の先へと進んだ。


「問題はここからよ」


 どこか緊張した声でミッチャーさんが補足してくれる。

 扉の先はまた通路になっていて、うっすらと赤い霧のようなものが立ち込めていた。

 でも視界が遮られるって程ではない。

 通路の行き止まりには扉。

 その扉を慎重に開けた先はバスケットコートくらいの部屋になっていて、そこには黒フードの他に6人組が居て武器を手に襲い掛かって来た。

 それを見て電光石火の皆さんも負けじと応戦。


『雷神剣』

『ウオォォーーッ』


 電撃を帯びたハルトさんの剣と相手の大剣がぶつかったのを皮切りに全力のスキルが飛び交う。

 やっぱりトップチームの戦いは派手で見ごたえがある。

 昔の特撮映画ではキック1つで大爆発が起きたって言うけど、まさにそんな感じ。

 炎や氷の魔法が飛び交い、剣を振るえば風の刃が飛び、ミッチャーさんも目にも止まらぬ速さで駆け抜けて相手に攻撃を加えていく。

 そうして5分掛けて何とか電光石火チームが勝利を収めたもののかなりのダメージを受けてしまっていた。


『どうやらここからが本番ってことらしいな。

 次の扉に進む前に体力を回復させよう』

『さっきの悪魔が可愛く見えるくらい強かったわね』

『ったく、難易度急に上がり過ぎだろっ』

『この赤い霧の所為か身体が若干重い気がするな』


 その場に座り込みながらポーションを飲みつつ先ほどの感想を言い合う。

 しかしそんな彼らをあざ笑うかのように右手側の扉が向こうから開き、次の対戦相手が姿を現した。

 みんなは慌てて立ち上がり、再び全力戦闘を強いられ、メンバーの1人を倒されつつも何とか勝利することが出来た。


『このままここに留まっているのも危険らしいな』

『ミューラがやられちまったし、ここは一度退くか?』

『いや、行けるところまで行ってみよう』


 ハルトさんの決定に従い、左手側の扉を開けて先へと進む一行。

 その通路の先にはまた部屋があって中には同じように武装した集団が待ち構えていた。

 そして今度こそは負けてしまい、全員が死に戻って今に至るということらしい。

 うん。

 なんだこれ。



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