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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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39/128

39.足止めチームの口八丁

<ラキア視点>


 フォニー達が捕まっていた人達と共にここを抜けてからどれくらい時間が経っただろう。

 10分?20分?

 もう時間の感覚なんて無い。


「このっ、いい加減倒れろ」

「そっちこそ諦めて帰れば?」


 間断なく攻撃を仕掛けてくる敵の剣を受け止め弾き返していく。

 もう50回は凌いでいる。もしかしたら100回超えてるかも。

 敵も最初の余裕は無くなり若干の焦りが見えてきた。

 これは良い兆候だ。

 焦れば動きに隙が出て付け入ることが出来るかもしれない。


「いつまで遊んでいるのですか。

 そんな子供1人。さっさと倒して逃げた奴らを連れ戻しなさい」

「お言葉ですが、この狭い通路では二人並ぶのがギリギリで押しきれません。

 奴の短剣捌きは未来が見えているかのように正確で、守りに徹している分、隙もありません」


 うん、この場を守るだけなら僕でもなんとかなっている。

 ゲームのお陰で息切れの心配や肉体的な疲労もないのが助かる。

 とはいっても精神的にはちょっとしんどいので出来ればすぐに終わってほしいと思っているけど顔には出さない。

 フォニー達が脱出に成功したらメールで一報くれることになってるので、まだかまだかと待つばかりだ。


「もういい。下がりなさい。私がやります」


 おっ、敵も遂に本気になったか。

 ずっと偉そうにしていた黒ローブが相手をするようだ。

 でもわざわざ選手交代を指をくわえて待っているようなスポーツマンシップは持ち合わせていない。


シュッシュッ

「ぐあっ」

「ちっ」


 向こうが距離を取った隙にボウガンに持ち替えて反撃を撃ち込む。

 ただしそこまで時間は無さそうだったので2本だけ。

 まだまだ敵に替わりは居るみたいなので気休めだ。


「こざかしい真似を」

「隙を見せる方が悪い」

「ふっ。ならば見えなくしてあげましょう。『ブラインド』」

「!!?」


 黒ローブの右手から靄のようなものが飛んできて僕の顔面を覆う。

 くそっ。奴は魔法使い。それもデバフ系のいわゆる呪術師って奴か。

 とっさにボウガンをもう1発放って反撃したけど矢は奴の後ろに控えていた男に防がれてしまった。


「そう何度も通るはずがないでしょう。

 それよりどうです?

 何も見えない暗黒の世界は」

「何も見えない世界? そんなの慣れっこだよ」


 こっちは10年以上その世界と付き合ってきたんだ。

 今更恐れることなんて何もない。

 それに、奴は大きな勘違いをしている。


「見栄を張っても無駄です。さあ、絶望のうちに死になさい!」


 そう言って逆手に短剣を持って襲い掛かってくる。

 僕に見えないと思って余裕の大振りだ。

 でも実はその一挙手一投足が今の僕には見えていた。

 だから左手の短剣で敵の攻撃を受け流しつつ、右手の短剣を奴の胸に突き刺す。

 しかしどうやら浅かったらしい。

 驚き後ろに倒れるようにして逃げられてしまった。


「馬鹿な。魔法は確かに発動しているはず。

 なのになぜ見えているのです!?」

「敵に教えてやる義理は無いかな」


 奴の魔法が発動してるのに効果が出てない原因は明白だ。

 より上位の女神の祝福が僕の『視力』を保障してくれているから。

 物理的に目隠しされたならともかく、魔法の靄ごときで女神の祝福はどうにかなるものではない。

 そして敵のリーダーが怪我をした今が反撃のチャンスだ。

 僕は余裕の笑顔を作って出来るだけ上から話しかけた。


「それよりお前たちは勘違いしてるんじゃないか?

 ここを襲撃しているのが僕達だけだなんて誰も言ってないぞ。

 こんな少人数で潜入していること自体、変に思わないのか?」

「なんだとっ。まさかお前たちは別動隊か」

「本隊は今頃表からこの施設を制圧してるところだろうな」


 嘘だけど。本隊なんて居る訳ないけど。

 でも余裕綽々な顔で言ってのければ多少なりとも信じて貰えたらしい。

 これで捕虜を追いかけるのを諦めてくれたら嬉しいんだけど。

 そう期待していた僕は、しかしこの中で一番驚くことになった。


「大変です!

 冒険者の集団が儀式の間に突入してきました!!」

「なんだとっ」


 慌てた様子で奥からやって来た敵の仲間がそう報告してきた。

 おぉ、これが身から出た錆ってやつか。あれ、瓢箪から駒だっけ? まぁどっちでもいいや。

 とにかくこれを利用しない手はない。


「さあ、このまま僕1人の為に手を焼いてていいのかな?」

「ちっ。行くぞ!」

「しかし生贄達は」

「問題ない。

 おい。貴様こそ我々の仲間が他にも居ることを忘れているのではないかね。

 今頃逃げた者たちは捕らえられてここに戻って来ているかもしれないぞ」

「それはどういう」


 僕の声には答えず、彼らは去っていった。

 戻ってくる気配はないよな。


「ふぅ~~」


 緊張を解す様に大きく息を吐く。

 何が起きているのかは分からないけど、ひとまずここでの僕の役目は無事に終わった。

 壁に背中を預けてひと休憩。

 本当は急いでフォニー達を追いかけた方が良いんだけど、流石に疲れた。

 敵が愚直に接近戦を仕掛けてきてくれたから何とかなったけど、複数人で矢を射かけられたり攻撃魔法を撃たれてたら負けていた。

 ちょっと反省。

 今後はそういうのの対策も考えていかないといけないだろうなぁ。


「で、何が起きてるんだろう?」


 深呼吸をして落ち着いてきた所で改めて状況整理。

 儀式の間に突撃してきたっていう人たちに心当たりはない。

 無いけど、まあ恐らくは他のプレイヤーの人達が偶然このタイミングで攻略に乗り出してきたんだろうなとは思う。

 なにせ今は夏イベントの真っ最中でかなりの人数がここ廃都に集まっているから。

 僕達以外にも特殊フラグを見つけた人達が居ても不思議じゃないだろう。

 ま、わざわざ確認する必要もない。

 僕たちは僕たちのやるべきことを、だ。

 だから問題はフォニー達の方。

 さっきの黒ローブの捨て台詞からすると奴らの別動隊がフォニー達に向かっていたのかもしれない。


「フレンドリストは、特に問題なしっと」


 特にふたりがログアウトしてしまっているとかそんな様子はない。

 ならきっと無事なのだろう。

 それに離れていても連絡手段はあるのだから安否確認も容易だ。


『フォニー、そっちは順調? どこまで進んでる?』

『ラキア君ちょうどいい所に。

 私たちは先ほど隠し通路から外に出た所です。

 ってラキア君の方こそ大丈夫だったの?』

『うん、こっちは無事。何とか敵を追い返すことが出来たから今からそっちに向かおうと思ってたところ』

『そっかぁ、よかった~』


 メールの文面からして向こうも別にピンチって程ではなさそうで安心した。

 でも「ちょうどいい所に」って言う事はなにかあったのか?


『それでそっちは何か問題が起きてるの?』

『うん、それなんですが実は今、変な人達に絡まれてて』

『変な人……敵の仲間じゃなく?』

『プレイヤーみたいだから違いそうです。

 今コロンちゃんが応対してくれてるんですが一触即発な状態で』

『それは不味いな』


 自分たちだけならともかく要救助者を抱えてる状況で争いごとは良くない。

 でも僕はまだ向こうに着くまで時間が掛かるし、フォニーはまだ流暢に会話は出来ない。

 コロンも交渉は苦手な方だろう。

 何か良い手はないものか。



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