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33.潜入ミッション

 階段を下りれば通ってきた入口は自動で閉まった。

 魔法というよりゲーム仕様かな?

 手で押せば簡単に開くみたいなので気にする必要は無さそうだ。

 それよりも隠し通路は当然のように真っ暗だった。


『明かりを』

「いや、点けない方が良いと思う。それとここでの会話は全部チャットでしよう」

『ラキア君は暗闇でも見えるんですか?』

『うん、そうみたい』


 夜目が利く、では賄えないレベルの暗闇の中で僕にはフォニーとコロンの顔がはっきりと見えた。

 当然通路の奥も見えている。

 それとチャットはみんな読めるようだ。

 チャット画面を開いていても周囲に明かりが洩れないことから、これもゲーム的な物なのだろう。


『僕が先導するから、ふたりとも右手を横に突き出して壁に触れながら、左手で前の人の服を掴んで』

『はい。これなら見えなくても壁にぶつかることは無さそうですね』

『ラキア以外に男が居なくてよかったわ』


 女性としてはゲームと言っても男性にべたべた触られるのは嫌だっただろう。

 僕は先頭を歩くので触られる側だ。

 間違っても彼女らを触らないように注意しよう。

 そうして僕らは慎重に通路を進んでいく。


『この先右側に脇道があるから注意して。その先は左にカーブするよ』

『意外と複雑なんですね』


 これで見つけた分岐は3つめ。

 てっきり一直線に廃都の中に繋がっているのだと思ってたけどそうではなかった。


『追手対策?』

『そうかも』


 この地下通路。本来の用途はお偉いさんが街からこっそり逃げ出すときに使うものだろう。

 逃げる理由は戦争か暴動か。

 どちらにしろ自分たちを追ってくる人を想定して迷路のように複雑にしたのだと思う。


『ラキア君はどうして正解の道が分かるんですか?』

『え、足跡残ってるし』

『この暗闇で足跡まで見えるとかチートね』


 うん、自分でも便利だなって思う。

 っとまずい。


『ふたりとも音を立てないように3歩下がって右の通路に入って。奥から人が来てる』

『『!!?』』


 フォニー達にも通路の奥が明るくなってきたのが分かっただろう。

 驚きつつもそっと移動して脇道に隠れる。

 さらにこのままだと見つかる危険があるのでコロンの大楯で壁を作る。

 そのままじっとしていると通路の奥から明かりと足音。そして複数の話し声が聞こえてきた。


「全く教主様も人使いが荒いよなぁ。

 『儀式を行うにはあと10人程生贄が必要です。

  今週中に出来るだけ活きの良い若者を攫ってくるのです』

 だもんな。そんな簡単に攫えたら苦労しないっての」

「最近は俺たちの情報を聞きつけたのか冒険者どもが廃都を嗅ぎまわってるから見つからないように注意しろよ」

「それは大丈夫だろ。

 あいつら地上にしか目が行ってないし、事前に召喚したゾンビどもと遊んでばかりだ」

「でもその所為で遠回りのこの隠し通路を使わないといけないんだ。

 いやがらせの1つもしてやりたいぜ」

「やめておけ。そもそももっと前から冒険者は廃都を徘徊してただろ」

「徘徊って。それじゃどっちがゾンビか分からないな」

「はははっ」


 彼らは雑談をしながら僕らの通ってきた道に去っていった。

 幸いこちらには気付かなかったようだ。

 そして今聞いた話。


『どうやら当たりだったみたいだね』

『はい。今回の件は予想通りモンスターではなく人による誘拐事件でしたね』

『生贄って言ってた。あとまだ足りないとも』

『まだ猶予があるってことか』


 流石に今日中に解決しろって話じゃなさそうだ。

 いやそれはそうか。

 これは夏イベントの一環。数日どころか1週間以上掛かるケースもあるだろう。

 まああまり遅くなりすぎると捕まった人たちの健康状態も心配になるので急ぐけど。


『まずは今日中に行けるところまで行こう』


 僕らは先ほどまでと同じように右手を壁に付けながら足取りも軽く進んでいく。

 やはり正解が分からずやっていた先程までとは異なり、今は確かにゴールが待っていると分かったのでやる気が出るのは当然だ。

 そして彼らの感じからして出口はそこまで遠くは無いだろう。

 結局分岐が10を超えたところで通路は行き止まり、いや扉に当たった。


『鍵は……掛かって無さそう。不用心だね。後は向こうに人が居るかだけど』

『この距離なら音拾えると思います』


 フォニーが扉に耳を当てて、物音がしないことを確認して扉オープン。

 そこは倉庫みたいに物が乱雑に置かれている場所だった。

 このゲーム、倉庫好き?

 いや隠し通路を作るのに都合が良いだけかもだけど。

 ただどこかから光が漏れてるのか室内はぼんやりと明るい。


『通常のダンジョンとか地下施設はこんな感じ。

 真っ暗だったさっきの方がレアケース』

『そうなんだ』


 でもそっか。

 普通に考えてダンジョンに入った瞬間、真っ暗で行くことも戻ることも出来ないってなったら困る人が続出してしまう。

 ベテランのフォニーは自前で明かりを持ってたっぽいけど、みんながみんな、そんなに準備が良いわけでも無いだろうし。


『この暗さだと歩くことは出来ても隠れているモンスターや罠が見つけられないので、ダンジョン探索に明かりは持って行った方が良いです』


 ちなみに明かりは松明のように手に持つのではなく自分たちの近くの空中に光の玉が浮かんで周囲を照らしてくれるらしい。

 なんてすごい技術なんだと思ったけど、普通の道具屋で安価で売られているのだとか。

 うーん、その技術を応用したらもっと他に使えそうだけど。


『ともかく引き続き敵に見つからないように捕まっている人たちを探そう』

『じゃあ今度は私が先頭を歩きますね』


 そういうフォニーと場所を交代して僕は最後尾へ。

 フォニーは自分の祝福は音を出す方専門だって言ってたけど、それでも常人より多少は聞く方も鋭いのでそれで人の足音や話し声から警戒してくれるらしい。

 そうして倉庫部屋を出て通路をひっそりと移動していく僕達。

 どこかの地下だと思うんだけど意外と広いなここ。

 出てきた部屋以外にも部屋がいくつもあるし通路の先は階段ではなくT字路だ。


『……右手側から男性の話し声が聞こえますね。それも複数』

『じゃあそっちは後回しで』


 複数の男性の話し声ってことは誘拐犯の可能性が高いと思い反対の左へと進む。

 その先はまた左に道が折れていたのだけど、そこでフォニーがストップを掛けた。


『奥の部屋の前に見張りっぽい人が1人居ます』

『監禁部屋かな?』

『恐らく。どうします?

 一人だけなら制圧できると思いますけど』

『騒ぎを聞きつけられて増援が来られると不味いよ』

『ならこれの出番』


 そういってコロンがアイテムボックスから出して見せたのは直径3センチくらいの丸い爆弾。

 いや爆弾は不味いんじゃない?って思ったけどどうやら眠りガスを出すアイテムらしい。


『効果範囲狭いし戦闘中には使えないからどこで使うか謎だった』


 不眠症の人には喜ばれるかも? 後遺症とかが無ければだけど。

 コロンはその眠り爆弾を起動させつつそっと通路の向こうへと転がした。

 10秒待って通路の奥を覗けば、無事に見張りを寝かせることに成功したようだ。


『これ僕達も眠ったりしない?』

『大丈夫なはずだけど念のため息を止めていく』

『(こくこく)』


 僕たちは息を止めつつ急ぎつつ足音を立てないようにしつつと大変だったけど、何とか見張りの居た部屋の扉を開けて中へと入った。

 そこには30人近い人達が疲れた様子で座り込んでいたのだった。



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