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31.キャンプで作戦会議

 モンスターと無事に戦えることを確認した僕たちは改めてこれからの作戦を練ろうという話になった。

 その為に必要なのがゆっくりと話が出来る安全な場所。要するに拠点だ。


「それでどうやって拠点って造るの?」

「条件を満たす場所を用意すれば良いだけ」


 その条件というのが、まず付近にモンスターが存在しない事。

 これは廃都の外に出ればモンスターの数もそれほどではないので簡単に用意できた。

 続いて寝起きが出来る施設。要するにテントだ。

 これもふたりが持っていたのでそれを使わせてもらう。

 最後に護石と呼ばれる杭を拠点の四隅に刺せば完成だ。


『弱いモンスターはこの護石の内側には入って来れません』

「強いモンスターには簡単に破壊されるから油断は禁物」

「あ、うん」


 間違ってここを防衛拠点として使おうとしてもすぐに突破されるみたい。

 あくまで虫除け(魔除け?)くらいの効果だと思っておけばいいだろう。


「じゃあ休憩を兼ねつつ改めてこれからの方針を決めようか」

「ん」

『はい』


 休憩と言えば食事だろう。

 僕は立てたテントの前で焚火を用意し、アイテムボックスに溜まっていたフォビットの肉を串にさして塩コショウを振って火にかける。

 ついでに焚火の上に水の入ったやかんをセットすれば俄然キャンプっぽい。

 コーヒーは流石に無いからお茶? でも茶葉もないか。

 なら適当な薬草を使ってハーブティーないし薬湯ってことで。

 これで草原にウサギとかが駆けてたらみやびだけど、居るのはゾンビと巨大なバッタっぽいモンスターばかり。

 どちらも護石の効果かこちらには見向きもしない。

 でもいいや。リアルだとキャンプも難しいからね。


『ラキア君、楽しんでますね』

「あの顔は目的を忘れてる顔」

「わ、忘れてないよ?」


 焼けた肉串を配り、自分も1つ食べてからその串で地面に地図を書いていく。

 おじいさんの所で見せて貰ったけど、この廃都を中心に考えると南東に最初の街があり西南西に王都。あと北西に鉱山の街がある。

 僕らがいま居るのは廃都の東側だ。


「僕らが受けているクエストは誘拐された人たちの救出だ。

 その人たちは廃都のどこかに監禁されていると仮定して、どうやって見つけ出そうか」

『廃都と一言で言っても結構広いですよ?』

「それに地下やダンジョンもある」


 コロンも串を使って廃都の中に色々と書き込んでいく。


「廃都は大きく4つに分けられる。

 東は住宅街。南は商業区。西に教会と墓地。北には領主館がある。

 モンスターもこの順に強くなってく」


 つまり僕たちが行った東側は比較的モンスターが弱かったと。

 まあそうじゃないと始めたての僕が圧勝出来たのは変だよね。


「今回は特殊フラグを引いたのだから難易度は高め。

 よって教会と領主館が怪しい。どちらも地下室あるし人を閉じ込めるのに最適」

「コロン詳しいね。来たことあるの?」

「前にみっちゃん達とレベル上げに来た」


 なるほど。打撃が有効で動きが遅いゾンビとコロンの盾で殴るスタイルは相性が良いから。

 ただミッチャーさんの思惑としてはコロンがゾンビを見てどんな反応をするのか楽しみにしてたんじゃないかと思う。

 お姉ちゃんって生き物は弟や妹で遊ぶのが好きなものだから。

 だから面白い反応が見れなくて内心がっかりしたんじゃないかな。


「っと、噂をすればみっちゃんからメール」

「なんて?」

「向こうでも夏イベントの高難度クエスト受けたからこっちに来ないかって」

「流石だね」


 冒険者ギルドで高ランクの人にはモンスター増殖の原因調査を依頼するって言ってたから、見事それに選ばれたのだろう。

 コロンは本来ミッチャーさん達のチームに所属してる筈だからそっちに行くのかな。


「断っておいた」

「って、いいの?!」


 ノータイムでキャンセルしたらしい。

 この辺りの思い切りの良さは流石としか言いようがない。


「問題ない……友達・・と一緒だからって言っておいた」

「あーうん。ありがと」

『にこにこ』

「それに! 盾役がいないと救出作戦は無理でしょ」


 自分で言った友達という言葉に恥ずかしくなってしまったようだ。

 まぁその気持ちは分かる。

 恥ずかしいよね。恋愛感情とか無いのは明白だけど相手に好意を持っているって伝えるのは。


「よし。仲良し3人組で見事救出作戦を成功させよう!」

べしっ

「いたい……」

『くすくす』


 気合を入れて宣言したら頭を叩かれた。

 フォニーは終始笑ってるし。

 えー、こほん。

 話を戻そう。


「攫われた人が教会か領主館の地下に監禁されてると仮定して、どっちかを特定することは可能だろうか」

『正面から突入して地下を探索するのは?』

「私達3人だけじゃ戦力不足」


 どちらも上位の攻略チームが挑む場所だものね。

 多少相性が良いだけでは突破は難しいだろう。


「じゃあさ。フォニーの祝福で地下に監禁されている人達の声を拾う事とかは出来ない?」


 フォニーが授かっている女神の祝福は音に関するもの。

 なら遠く離れた人の声も聴くことが出来るんじゃないかと思ったけど。

 返ってきたのは否定。


『ごめんなさい。私の祝福は音を出す方に特化してしまってるから、聞く方は普通の人とそこまで変わらないです』

「そうなの?」

「祝福は元が同じでも使う人によって成長先が変わる。

 例えば私の盾は攻撃にも使える分、防御力や範囲は微妙。

 逆に防御特化の人はどんな攻撃でも防ぐことが出来るけど攻撃力は皆無だったりする」

「なるほどね」


 確かに『剣の祝福』とか『魔法の祝福』ってモンスターと戦うファンタジーRPGなら多くの人が求めそうだけど、そのままだったら自分だけの究極にはならない。

 だからそこから剣なら『鉄も切り裂く剛剣』とか『目にも止まらぬ神速剣』みたいに理想を追い求めることで、そこだけが尖った祝福になっていくのだろう。

 じゃあ僕の『視力』は? 

 今のところ『色々な物が良く見えるようになりたい』くらいにしか思ってないし、実際にその通りになってる。

 今後のことを考えればもっと戦闘に役立てることを意識した方が良いのか?

 いやでも僕は別に戦闘メインで活動したい訳でもないし今のままで良いのか。

 もし戦闘に特化させた結果、芋虫さん達が見えなくなったりしたら嫌だし。


「じゃあ音で探る作戦はなしにして、他に使えるのは僕の『視力』とコロンの人脈かな」

「私の、人脈?」

「うん。ミッチャーさんに廃都に馬車が出入りしてる形跡があるかどうか問い合わせて欲しいんだけど」

「馬車? まあそれくらいなら」

『どういうことですか?』


 コロンがメールを送っている間に僕はフォニーに自分の考えを説明することにした。


「ここに来てゾンビと戦って確信したんだけど、やっぱりそんなに強くないよね。特に外は」

『まあ、そうですね』

「それなのにボヤンさんとその護衛が成す術なく捕まったっていうのはおかしい。

 更に捕まえた人たちを連れ去ったって言うのもゾンビには無理だと思う」

『つまり犯人はゾンビではなく、ゾンビに変装した人?』

「うん。そう考えれば辻褄は合うと思う。

 攫った目的までは分からないけど、犯人が廃都の中に捕まえた人たちを運び込むとしたら馬車を使うかなって」

『なるほど』


 フォニーに説明を終えたところでコロンの方も返事が返ってきたようだ。

 だけどその顔は僕の推測が外れだというように横に振られた。


「馬車が通った形跡は無いって」

「そっかぁ」


 残念。馬車の轍の跡が残ってたりしたらどこに捕らわれてるのかも分かるかなと期待したんだけど。

 それじゃあ仕方ないな。



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