表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/104

30.ホラーに強い3人

 その後もちょいちょい出てくるゾンビたちはフォニー達にあっさりと殲滅されていった。

 もちろん僕の出番はない。

 新武器を試したかったのに残念。


「ところでふたりってゾンビとか幽霊とか、ホラーは大丈夫なの?」

『見てて気持ちの良いものではないですけど、ホラー映画って音ありきじゃないですか。

 だからリアルじゃほとんど見たことなくてむしろ期待してます』

「あ、それは僕も分かるかも」


 ホラー映画って「来るぞ来るぞ」って感じのおどろおどろしい音楽の後に「ギャーッ!」ってビックリさせてくるものらしいんだけど、映像が見れない僕では効果半減。うるさいなとしか思えない。

 多分フォニーも音無しで画面だけ見せられても玩具のびっくり箱のような驚きはあっても本当の意味でもホラー体験は出来ないのだろう。


「じゃあコロンは?」

「モンスターだと分かってるんだから問題ない。

 意味不明なことを言ってくる人より余程マシ」

「あ、うん。そうだね」


 世の中、同じ言語を使ってるのに分かり合えない人って多いよね。

 なら分かり合えなくても行動原理が明確なモンスターの方が好感度が高くても仕方がない。

 ともかく道中は何も問題なく廃都の手前まで来れたんだけど。

 そこで僕らを待ち構えていたのはテントの群れ。

 難民キャンプと呼ぶには活気がある気がする。

 入口の所に受付よろしく机を出してる人が居たので話を聞いてみることにした。


「あの、すみません。ここって何ですか?」

「やあいらっしゃい。新人さんかな。

 ここに来たってことは夏イベントのクエストを受けてきたで合ってるよな。

 俺たちはチーム『不夜城』でここは夏イベント攻略用の仮拠点だ。

 回復ポーションとかの消耗品の販売とリスポーン地点用の宿を提供している。

 あ、売り物は大体定価の2割増しになってるけどそこは勘弁な。俺達も慈善事業じゃないんで。

 チーム外の人の利用も認めてるから、もし使うなら帳簿に名前を記入していってくれ」

「なるほど、ちょっと考えさせてください」


 確かに街からここまでそれなりに距離があったので毎回往復するのは面倒だろう。

 夏イベントが数日掛かりで攻略するものだとすれば近場の拠点は有難い。

 受付のお兄さんに怪しいところは無いし使わせてもらっても良い気がするけど。


(二人はどう思う?)

(断るに1票です)

(私も。受けてるクエストが繊細なものだから極力痕跡は残すべきじゃない)

(なるほど、そこまで考える必要があるのか)

(それにリスポーン拠点なら私達だけでも造れる)


 疑心暗鬼になり過ぎるのも良くないけど、どこから情報が洩れて状況が悪化するか分からないのも事実。

 なら今は急いでここのお世話になる理由もないので避けて通るのもありだろう。


「すみません。やっぱり今は遠慮しておきます」

「そうかい? まぁ利用したくなったらいつでも言ってくれ。

 ただ、勝手に忍び込んで施設を利用するのはやめてくれよ。

 見つけたらチーム総出で叩きだすことになるからな」

「分かりました。では失礼します」


 お礼を言ってその場を後にする。

 ちなみに彼らは街道を塞ぐ形で仮拠点を造ってるけど、別にちょっと迂回すれば廃都に入れそうなので問題ない。

 でも別にポーションを買うだけなら署名とか要らないと思うんだけど。


「多分利用者数によってイベント終了後の評価が上がることを見越してる」

「あぁそういうのもあるんだ」


 もしかしたら街道を塞いだのも通行税を受け取る為なのかもしれない。

 実際にお金を取られるわけじゃないし損する話でも無いので僕は気にしないけど。


「ああいう仮拠点って他の所も造ってるの?」

「大きいところは大体。みっちゃん達も今頃王都側の街道付近に用意してると思う」


 街道付近(・・)なんだ。

 まあ王都側の方が場所取り合戦みたいなのも激しいだろうし、そこはある程度譲歩し合ってるのだろう。

 ともかく廃都の東門までやって来た僕たちは門の所から中の様子を窺ってみることにした。


「えっと、これって多いのかな。それとも少ないって言った方が良いのかな」

「微妙なところ。普段よりも多いけどって感じ」


 何がと言えば徘徊するモンスターの数の事であり、同時にプレイヤーの人数の事でもある。

 てっきりモンスターで溢れかえっているかイベントで集まった人で溢れているかのどちらかだと思ってた。

 でも実際にはそこまでではないように見える。


『まだイベント始まって間もないのだと思います』

「そっか」


 前回ログインした時はまだ廃都のはの字も聞こえなかったし、昨日今日始まったばかりなのだろう。

 なので情報に疎い人や別件で動いてる人なんかはまだ来ていないようだ。

 多分数日もすればイベントの報酬目当てで大勢の人で賑わうだろう。


「何回か戦ってみてモンスターの強さを確認してみようか」

『はい』


 道中でも遭遇したけど、やっぱり本拠地であるここのモンスターの方が動きが良い気がする。

 それと一度くらい僕も戦っておかないと。


「最初は僕に譲ってね」

「じゃあ任せた」


 ちゃんと宣言しておかないとまたふたりで殲滅しそうだからね。

 そして取り出したるはおじいさんに作ってもらったボウガン。


【新緑のマナボウガン。

 若いトレント材をベースにしている為、魔力伝導率は高くないが丈夫でしなやか。

 魔石を埋め込むことで自動装填を可能とした匠の逸品】


 説明書きは色々難しいけど、性能の程は使ってみれば分かる。

 ということで早速魔石に魔力を流せば「シャッ」と弦が張られるので矢をセットしてモンスターの頭めがけて発射!


シュッ

「ウゴッ?」


 あ、あれ?

 モンスターが「蚊に刺されたかな?」みたいな顔で振り向いてきたんだけど。

 今ちゃんと頭に当たったよね? 威力があり過ぎて貫通した?


『ラキア君。アンデッドは頭撃たれても死にません』

「え、そうなの!?」

「ゾンビは動く死体。頭は急所じゃない」

「まぁそうだけど。じゃあどうやって倒すの?」

『私達みたいに叩き潰すか魔法が有効です』

「核になってる魔石を破壊しても良い」


 なるほど魔石。

 モンスターなら大なり小なり体内にあるものだ。

 後で調べたら通常のモンスターの場合、魔石を破壊することで弱体化させることが出来るらしい。

 もちろんそんな弱点部位は身体の奥にあるので簡単には狙えない。

 でもこれがアンデッドなら肉体はボロボロで魔石が見えてる場合もある。

 そして魔石を破壊すれば弱体化を通り越して即死させられる。

 で、その魔石が遠目で見えるかと言えば、答えは直接見えなくても分かる、だ。


「多分あの魔力が集まってる所に魔石があるはず!」

シュッ、ピシッ!


 よし。放った矢が胸辺りにあった魔石を砕き無事に討伐できた。

 この調子で見える範囲のモンスターを撃ちまくれば糸が切れた操り人形のように力なく崩れて消えていく。


「……余裕過ぎない?」

「ボウガンにあるまじき連射力」

『体内の魔石の位置とか普通分からないです』

「え、そんなの見れば、ってそうか」


 僕の目には魔力が集中してる所が光って見えるんだけど、それは女神の祝福のお陰みたいだ。

 もしかしたらここは僕にとってはボーナスステージなのかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ