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27.夏イベントが始まったらしい

夏と言えば海!

ではなくもう1つの方になりました。


 無事にボウガンも受け取ったのでこれ以上用事は無いのだけど、それですぐ「はいさようなら」って言うのも味気ない。

 それにフォニーとコロンがお昼寝中の猫みたいにまったりとしているので僕も倣ってまったりしよう。

 急ぎの用事もなければ最前線の攻略組に追いつきたい等の願望も無いのだから。

 しかしこのゲームは、いやこの世界は事件が起きるように出来ているらしい。


「大変だオヤジ!」

「どうした騒々しい」


 ドタドタと足音を鳴らしてやって来たおじさん。

 どうやらおじいさんの息子らしい。


「大変なんだ。仕入れに出ていたボヤンがモンスターに攫われた!」

「なんだって!?」

「その話詳しく」


 さっきまでのんびりお茶を飲んでいたコロン達が食い気味に話に入ってきた。

 その瞳は正義の炎が燃えている、と言う訳ではなさそうだけどはて。

 ひとり勢いに付いていけてない僕にフォニーがスケッチブックを見せてくれる。


『これは夏イベントの特殊(とくしゅ)フラグ』

「そうなの?」

『たぶん間違いない』


 そういえばお姉ちゃんがそろそろイベントが始まるとか言ってたかな。

 特殊ってことは、滅多に引けない当たりくじを引いて、だからコロンはこんなに乗り気なのか。

 そうやって僕が納得している間にも息子さんの説明は続いていた。


「一緒に居たトンズが何とか逃げ延びて報せてくれたんだ。

 夜に野宿してるところを急にモンスターに囲まれて、護衛の冒険者も為すすべなく捕まっちまったらしい」

「攫われたってどこに?」

「そこまでは分からない」

「じゃあモンスターの種類は?」

「ゾンビを始めとしたアンデッドだったらしい」


 そこまで聞いたおじいさんは戸棚に立て掛けてあった大きな巻物を広げた。

 あ、これこの国の地図だ。

 中央にあるのが多分王都。そこから幾つかの街が線(多分街道)で繋がれ、街どうしも繋がっていたりする。


「えっと今僕たちが居る街は……」

「ここだ」


 王都の東やや北よりに位置するようだ。

 おじいさんの指はそこから北西へと移動し、別の山に隣接する街を指した。


「ボヤン達が向かった仕入れ先はこの鉱山街。

 そこから戻ってくる経路付近でアンデッドが出没するのは、ここだ。

 廃都『ロンジョ』」

「じゃあボヤンさんが攫われた先もそこである可能性が高いってことですね」

「そうだ」


 ふむふむ、少しずつ見えてきた。

 これが夏イベントってことは「ゴーストタウンで肝試し」みたいな企画ってことだろう。

 本当にゴーストやらゾンビが居るのはゲームならではって感じだけど。

 そして僕たちのミッションは肝試し+攫われた人たちの救助になるようだ。

 いやそれってつまり、通常よりもハードモードって事じゃないか?

 もしくは他の人も別ルートで追加ミッションを受けてるのかな。

 攫われたのがボヤンさん達だけとは限らないし。


「分かりました。

 なら僕達はこれからボヤンさん達の救助に向かいます。

 で、良いよね?」

『うん』

「もちろん」


 自分一人で勝手に決めそうになってしまい慌ててフォニー達に確認を取れば、当然と頷いてくれた。

 しかしおじいさん達にとっては意外だったらしい。


「いやしかし危険ではないか?」

「これでも僕達は冒険者ですし、異界の旅人なので万が一のことがあっても生きて帰って来れますから」

「ううむ、そういう事ならわかった。お前たちに頼もう。

 しかし決して無理はするな。危険だと思ったら逃げるのも冒険者には必要な能力だ。

 それと依頼書を用意しよう。

 それを冒険者ギルドに提出すれば正式な依頼としてランクアップに繋がるだろう」

「ありがとうございます。

 もしかしたらギルドも何か情報を得てるかもしれないし、街を出る前に寄ってみます」


 これが夏イベントなのだとしたら似たような依頼がギルドに持ち込まれている可能性は高いと思う。

 そこから攻略のヒントなども見つかるかもしれないし。

 あと何も言わずに出発したらフェルトさんをまた心配させそうだ。


「他にわし等に出来ることはあるか?」

「じゃあ馬車を借りれませんか?

 救助した人たちを連れ帰ってくるのにあると便利なので」

「それならトンズが乗ってきた仕入れ用の馬車を貸そう。

 金属運搬用に丈夫に出来てるからモンスターに襲われてもびくともせんだろう」

「ありがとうございます。あとは……」


 依頼書と馬車を用意してもらって僕らはおじいさん達の元を後にした。

 ちなみに馬車もアイテムボックスに収納できたので、行きは騎乗用の馬に乗って帰りだけ馬車を使うことになるだろう。

 そして冒険者ギルドへとやって来たんだけど。

 予想通りというか、全体的に慌ただしい。

 僕は受付に向かい話を聞くことにした。


「あの、何かあったんですか?」

「はい。それが廃都ロンジョでモンスターが大量発生しているという情報が入りました。

 放置しておくと付近の街に被害が及ぶ危険性があるので討伐隊を編成することになりました。

 また大量発生の原因の特定および解決を高ランクの冒険者に依頼する予定です。

 それとは別に行方不明者の捜索依頼が数件来ていまして手が足りない状態です」

「行方不明者、ですか。それは廃都の件とは関係ないのですか?」

「分かりません。同時期に起きているのでもしかしたら、という事はありえますが」


 ギルドもまだ手がかりを掴めていない状態ということか。

 ならこの依頼書が役に立つかもしれない。


「実は先日紹介してもらった工房でも事件が起きてまして」

「モンスターに誘拐された人たちの救出依頼、ですか。

 しかし……いえ。依頼主からして疑う余地は無さそうですね。

 ということは他の行方不明者も同じように攫われている可能性はあるということですか」

「はい。もちろん全部がそうとは限らないですけど」


 実は偶然、全く別の犯罪が紛れ込んでいたって可能性は否定出来ない。

 このゲームの突発イベントは大規模イベントとか関係なく起きるらしいし。

 なので可能性が排除されないように言葉を選びつつ、それより気になっていたことを聞いてみることにした。


「ところでアンデッド系モンスターって頭良かったりするんですか?」

「アンデッドに拘わらず上位モンスターであれば高度な知性を有している場合があります」

「そういったモンスターなら人を攫って何かをする可能性も?」

「無いとは言いませんが、あまり考えたくはない危険度です」


 つまり例えるなら魔王級ってことかな。

 アンデッド系で言えばリッチとか死神とかそう言う感じの。

 それ絶対僕じゃ勝てないやつだよ。

 何とかトップ攻略パーティーに討伐はお願いして、僕らは裏から誘拐された人たちの救出だけ出来たりしないだろうか。



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