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25.不自由な3人組

フォニーの言葉遣いですが、ですます調に変更します。

その方がコロンとの見分けが付きやすくなりそうなので。

(以前の話では普通に砕けた感じでしたが後で修正しておきます。話の内容そのものは変わりません)


 今日はゲームにログインして何をするかと言えば、っとメールが届いてる。コロンからだ。


『みっちゃんから短剣預かってるのでタイミングの良い時に持っていく』


 お願いしていた短剣か。

 ミッチャーさんが直接渡してくれるんじゃなくてコロン経由でって事らしい。

 多分ミッチャーさんとしてはコロンの人見知りを改善したいって意図があるのだろう。

 僕としてもコロンと話すのは嫌ではないのでむしろ望むところだ。

 ただ当の本人は現在ログアウト中のようだ。


『分かりました。僕の方はまだしばらくは最初の街の近くに居るので、また声かけてください』


 メールの文面って何故か畏まってしまうよね。などと思いつつ送信。

 これでコロンの方は良いとして、フレンド一覧を見たらフォニーがログインしてたのでそっちにも挨拶しておこう。


『こんにちは、フォニー』

『今日は来たんですね。また漢字の練習しますか?』

『あ、じゃあお願いします』


 メールを送ったら秒で返ってきた。

 そっか、昨日はお姉ちゃんと出かけてたし、一昨日ももしかしたら僕がログアウトした後にフォニーはログインしてたのかも。

 返事を返しつつ例の丘に行けば既にフォニーが待っていた。


「おまたせ」

「ううん。わたしも、発声れんしゅーが出来うからたsかいます」

「おぉ、だいぶ違和感なく話せるようになってる!」

「がんばいました!」


 ふふんと胸を張るフォニー。

 その姿はちょっと微笑ましくもあるけど本当に凄いと思う。

 僕も負けてられないな!


「そうだ、フォニーに会ったら聞こうと思ってたんだけど、僕のステータスにある『看破』って何て読むのかな」

『それは「かんぱ」ですね。

 多分、隠れているもの、隠されているものを見抜く能力だと思います』

「なるほど」


 確かに狩人の森のモンスター達は自然に擬態してたし、それを見つけるスキルってことのようだ。


『祝福はレベル5の倍数で能力が追加されることがあるんです。

 それによって元は同じ祝福でも全然違う能力になるらしいです』

「そもそも同じ祝福なんてあり得るんだ」

『剣術とか魔法とかオーソドックスなものは被るらしいですよ。

 そこからパワー重視、スピード重視、属性重視みたいに分かれます』

「そうなのかぁ」


 フォニーは情報通だなぁ。

 お陰で話してると色々勉強になる。

 でもそうなると僕と同じように『視力』を祝福として貰った人もどこかに居るのかもしれない。

 もし会えたらどんな感じのか話してみたいな。


「そういえば近々、っとごめんメールが来た」

「はぃ」


 一言断ってメールを確認すればコロンからだった。

 どうやら今から短剣を届けに来てくれるらしい。


「今から友達が荷物を届けに来てくれるって」

「友達、ですか」

「うん。一昨日知り合ったばかりなんだけどね。

 っと言ってる間にもう来たみたい。ほらあそこ」


 僕の指差す先には住宅街からこの広場に出てきた少女の姿があった。

 流石に街中ではあの大楯は持ち歩いては居ないらしい。


「お~い、コロン。こっちこっち」

「あ」


 僕の呼びかけを聞きつけてコロンが一瞬表情を緩めたけどすぐに引き締めて歩いてくる。


「わざわざ届けに来てくれてありがとね」

「気にしないで良い。私にとっても散歩みたいなものだから。っ!」


 コロンの足がビクッと止まる。

 僕との距離はまだ3メートル近く空いている。例の人見知りが発動したとしてももうちょっと近くまでこれるはず。

 というか前回の最後の方では手を伸ばせば届くくらいの距離に居ても平気だったし。

 じゃあ一体なぜ、と思ったところでコロンの視線が僕以外に向けられていることに気が付いた。


「あ、えっと『こんにちは』」

「うん」


 フォニーがいつものスケッチブックを見せればコロンもその場で小さく頷く。

 そして流れる静かな空気。

 お互いに見つめ合ってアイコンタクトを取っているようにも見えるけど。

 えっと、あそうか。

 フォニーはまだ上手く喋れないから初対面の人を不快にさせないようにとスケッチブックを使ってるし、コロンはそもそも人見知りっぽいから話すに話せないのか。

 ならここは僕の出番かな。


「えっと、僕が二人のことを紹介しても良いかな?」

「『うん』」


 ふたりが頷いてくれたのを見て僕はこほんと咳ばらいを1つしつつ間に立った。


「こちらはフォニー。見て分かったかもだけど、リアルで耳が不自由な影響で会話は聞くのも話すのも練習中。

 だから話すときはゆっくり目に話してあげてほしい」

「もしかして『打鬼』のフォニー?」


 僕の紹介にコロンが驚いたように反応する。

 ダッキって何だろう。二つ名?


「え、フォニーって有名人なの?」

「なんでラキアが知らないの?」

「いやこの前知り合ったばかりだし」


 動画配信やSNSは見れないから、そういう有名人の情報っていうのは疎いんだ。

 僕にとってフォニーはフォニーでしかないし。

 そしてこの調子だと僕よりコロンの方がフォニーのことを知ってそう。


「それでこっちはコロン。若干人見知り、でいいのかな。対人恐怖症までは行かないよね?

 なので距離感を意識すれば大丈夫なはず」

『もしかして「鉄壁」のコロンさん?』

「そう呼ばれてるみたいね」


 鉄壁って、確かに大楯を構えるコロンは鉄壁って感じだけど。

 そうか二人とも有名人だったのか。


「ふたりとも凄いんだね」

「ラキアの方が私たちのことを知らないんじゃない?」

「そうかもしれない」


 呆れたと言う感じにため息をつくコロン。

 でもふたりとも1日一緒に遊んだだけなので、そんな色々知らないのは仕方ないと思うんだ。

 それよりコロンは普通に僕と話してくれるようでちょっと嬉しい。


「まあいいけど。

 それと、はい。みっちゃんから預かってきた短剣」


 コロンが取り出したのは真っ赤な短剣。

 刀身がゆらゆらと波打ってるちょっと変わった形状だ。


「『フレイムエッジ』。魔力を流せば刀身から炎が出せる」

「おぉ、それは便利だね!」


 つまり松明の代わりにもなるし焚火の着火とか料理にも使えるかもしれない。


「……今絶対変なことに使おうと思ってた」

「ぎく」

『それキャンプ道具じゃないから』

「いやほら、道具は上手に使ってこそだし」

「どう使うかは任せるけど。大事にしなさい」

「うん、それはもちろん」


 ミッチャーさんにも後で改めてお礼言いに行かないと。

 おさがりで良いって言ったのに、これ絶対高いやつだよね。


「じゃあ、はい」

「?」


 なぜか急にコロンが僕から5メートルほど離れた所に立って盾を構えた。

 どうしたんだろう、突然。


「新しい武器を手に入れたら試し切りが基本。

 私の盾なら確実に受け切れる」

「なるほど、ってほんとに切りかかって大丈夫なの?」

「問題ない。『鉄壁』の名は伊達じゃない」


 相変わらず盾を構えたコロンは格好いいな。

 よし、そういう事なら全力で!


「とりゃーーー、っとぉ。ふぎゃっ」


 全力で切りかかった僕は、しかしコロンの手前1メートルの所で転んでしまった。

 あぁ、僕を見下ろすコロンの目が冷たい。

 フォニーも横でくすくす笑ってるし。



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