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24.休みだからってゲームばかりは良くない

 朝。ベッドから起き上がって窓の外を確認すれば、今日も快晴のようだ。

 目がほとんど見えなくても太陽が出てるのは分かるし、何より夏の日差しが熱い。

 室内は冷房が効いてるから涼しいけど。

 居間に行けば先に起きていたお姉ちゃんが朝食を食べている最中だった。


「おはよう、お姉ちゃん」

「もご、んん。

 ああおはよう。夏休みだってのに朝ちゃんと起きてくるのは偉いな」

「そういうお姉ちゃんだってちゃんと起きてるじゃん」

「いやいや、あたしが学生の頃は昼近くまで寝てたわ」

「そうだっけ?」


 記憶を掘り起こしてみれば家を出る前のお姉ちゃんは大体僕の面倒を見てくれていた。

 だから基本僕より早く起きてたから、寝坊してるお姉ちゃんを僕は知らない。

 そして僕も休日でも規則正しい生活をしてたから、つまりお姉ちゃんが昼まで寝てたという事実は無さそうだ。


「ところで、晃は今日もゲームかい?」

「それなんだけど毎日ゲームって言うのあまり良くないよね」

「楽しんでくれてるなら私としてもプレゼントした甲斐があったってもんだけど、まあそうだね。

 よし、ならば今日はお姉ちゃんとデートしよう!」


 デート。親しい2人が一緒の時間を過ごすこと。

 昔はこの「2人」が男女を指していたけど、性の自由化が進んだ現在、男同士、女同士でも恋愛感情さえあればデートと認識される。

 まあ僕たちの間にあるのは家族愛なので要するに「お姉ちゃんをもっと構って!」ということだ。


「お姉ちゃんはどこか行きたいところとかある?」

「特にない! 強いて言えば外は嫌だな」

「まぁ暑いからねぇ」


 8月に入った今、外は30度超えは当たり前。

 晴れてる日は35度どころか40度近くになることもある。

 ただ散歩してるだけでも熱中症で死ねる気温だ。

 なので出かけるにしても屋内が好ましい。

 じゃああそこかな。


「デートって言うとあれだけど、行きたいところは1か所あった」

「おっ、いいねいいね」


 ということで姉同伴で向かったのは家から500メートルも離れてないビルの中。

 室温はしっかりと管理されていて自販機完備。

 健全な若者が集う場所。

 それは『スポーツジム』


「社会人になったら運動量が減るからジムで鍛えるってのは確かにありだな」

「うん。それと使ってみたいマシンがあったから」

「お、どれどれ」


 僕の向かったのは『ランニングマシン』だ。

 ここ数日ゲーム内で走る練習はしたからリアルでも同じ感覚で走れるようになっているのではないかという期待だ。


「ということで軽いジョギングから」

「おっけ~」


 マシンを設定してもらっていざスタート。

 ちなみにお姉ちゃんも隣で一緒に走ることにしたようだ。

 いつでも何かあればサポートするよっていう気持ちが嬉しい。


「よっとっほっ」


 最初はしっかりと手摺を掴みながら足を動かす感覚を確認する。

 よしよし、やっぱりゲームの時の経験が生きてる気がする。

 じゃあ手を放して。


「っととと」


 すぐに足が縺れて手摺に掴まる。

 やっぱりそう簡単にはいかないか。

 でもそんなことは分かり切ってたことだから再チャレンジ。

 そうして休憩も挟みつつ2時間ほど身体を動かす。

 あ、2時間の間にランニングマシンだけじゃなく他のも満遍なく利用した。

 大体のマシンは負荷決めてレバー握れば見えなくても使えるからね。


「うおぉぉ~明日は筋肉痛じゃあ~」

「お姉ちゃん気合入れてやりすぎ」

「何事も全力でやるのが私なのさっ。

 あ、そういえば配信見たよ?」

「え?」


 配信? 前振りなしでってことはあのゲームのだよね。

 見たって僕を? でもゲーム内キャラの姿ってお姉ちゃん知らないよね。


「疾風の新人攻略配信に出てた男性キャラって晃でしょ?」

「疾風ってミッチャーさんだよね。

 確かにこの前、配信に出てたけどよく分かったね」

「そりゃあの蚊を倒すしぐさは晃そのものだったし、何年お姉ちゃんやってると思ってる」


 もちろん僕が生まれてからずっとです。

 でもそっか。見る人が見たら分かるんだな。

 と言っても僕の場合、気付くのはお姉ちゃんくらいのものだろう。

 クラスメイトとかは絶対気付かないだろうし。


「ちなみにその配信、結構な再生回数だから。

 あとコメントで晃の事も話題になってたよ」

「そうなの? でも僕、ずっと後ろで蚊を退治したりフォローしてただけだよ」

「自覚が無いのは本人ばかりなりってね」


 うちの家族は褒めて伸ばす人達なので些細なことでも褒めてくれる。

 きっと女性陣が蚊に刺されるのを防いだだけでも良くやったと言ってくれることだろう。

 

「あ、母さんからメールだ。帰りに夕飯の買い物してきてって」

「じゃあいこっか」

「うむ。ではいつも通り目利きよろしく」


 ジムを後にしていつものスーパーへとやって来た僕たちは野菜コーナーへ。

 このスーパーでは産地直送の新鮮野菜を複数の農地から集められている。

 ここでの僕の役割は目利き。

 目が見えないのに?と思うかもしれないけど、野菜の鮮度や質の良し悪しは何も見た目だけで判断するものではない。

 軽く撫でてみたり匂いを嗅いだり。

 同じ野菜でも結構差はあるものだ。


「これと、これはこっち」

「相変わらず私には違いが全然分かんないなぁ」

「そう? これとかほら。根元のハリが良いでしょ?」

「言われてみればそうかなって思うけどさぁ」

「まあまあ。お肉選びはお願いね」


 今日は運動したからちょっと良いお肉にしようか、いや質より量でしょなどなど。

 ふたりでわいわい言いながらなら買い物も楽しいものだ。

 そうして無事に頼まれていたものを買い終え夕飯も食べ終えた頃。

 スマホを弄っていたお姉ちゃんが「おっ」と小さく声を上げた。


「どうやら夏のイベントが開催されるらしいよ」

「へぇ、何するんだろう」


 あのゲームはレベルって概念はあるものの、選んだ女神の祝福によって得意分野が全く異なるから共通のイベントって難しいと思うんだけど。

 イベントの紹介文を読み終えたお姉ちゃんは不敵に笑った。


「まあ夏の定番ってやつだね。

 もしかしたらだけど、晃の得意分野かもしれないよ」

「そうなの?」


 僕の得意分野ってことは運動系ではなさそうだけど、さて。

 そもそも僕の得意なことなんてあったっけ。



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