21.自信と油断は紙一重
ミッチャーさん、コロンと別れた僕はひとり街に戻ることに、あ、その前にステータスってどうなってるんだろう。
確か隠しフィールドはスキルレベルの上りが良いって話だったよね。
『
名前:ラキア
職業:探索者(17)
祝福:視力(11)【看破】
技能:短剣(9)ボウガン(12)薬草学(7)騎乗(3)隠密(3)意思疎通(4)
』
おぉ!
祝福のレベルが早くも11になってる。昨日は4だったから凄い上がり具合。
しかもその後ろに【】書きで何か書いてあるな。
きっとレベルが上がったことで特殊な効果が追加されたんだろう。
今度またフォニーに会った時に読んでもらおうかな。
それと技能も新たに増えてる。
意思〇通?……えっと、ここまで読めたならもう一息。これくらいは自分で解こう。
今回の冒険で増えたって事は振り返って何をやったかを考えれば答えが導き出せるはず。
と言っても戦闘はほとんどコロンがやってくれたから僕は後ろから見てるばっかりだったし。
他にやっていた事と言えば、こっそり近づいてくるモンスターを目で牽制してたくらい?
う~ん、意思を、通す?伝える?理解させる……あ、疎通だ!
『それ以上近付いたら攻撃するよ?』
『う~ん残念諦める』
最初は一方的に牽制してたけど、こんな感じで後半はモンスターの意思も伝わってきてた気がする。
でもそれなら薬草園の芋虫さん達は?
彼らとは初日から結構意思の疎通が出来てた気がするんだけど。
モンスターと芋虫さん達は別ってことなのか。
もしくは祝福のレベルが上がったことで技能も顕在化したって可能性もあるかな。
まあ便利になったなら難しく考えなくてもいっか。
さて。では改めて街に帰ろう。
となるとやることはあれだ。
タッタッタッタッタ
「すごい。何というか成長を実感できる!」
なんと街に戻るまで2回しか転ばなかった。
初日の3歩目には転んでたことを考えれば目覚ましい進歩と言えるだろう。
それと転ぶ時の受け身も上達したので転んでも怪我をしなくなった。
この調子なら普通の人と同じように走れる日も遠くないかもしれない。
と意気揚々と冒険者ギルドに戻ってきたのだけど。
「油断しないでくださいねとお伝えしたはずですが、どうして装備の更新もせずに行ってしまったのでしょう。
予算は十分にあったはずなのに」
「はい、すみません」
心配顔のフェルトさんが待っていました。
彼女は僕の状態を確かめて小さく息を吐いた。
「見たところ大したダメージも受けていないみたいですし、私の見立てよりもラキア様の戦闘技術が卓越していたという事なのでしょうね。
ですが何度も言うように油断は禁物です。
『俺なら大丈夫だ。余裕で帰ってこれる』は死亡フラグですからね」
「はい、肝に銘じておきます」
純粋にこちらを心配してくれているので僕も平謝りするしかない。
いや、こんな時のためのあれがあった。
「フェルトさん。心配させたお詫びに果物の盛合せをお納めください」
フェルトさん用に1つ残しておいた果物籠をアイテムボックスから取り出して恭しく差し出す。
「本来は冒険者の方から個人的なプレゼントを受け取るのは控えるべきなのですが」
と言いつつも既にフェルトさんの手は籠に伸びていた。
「特別高いものでも珍しいものでもないですし、個人がダメならギルドの皆さんでどうぞ。
まあそんなに量も無いわけですが」
所詮1籠分だからね。
むしろギルドに何人居るか知らないけど全員には行き渡らないと思うから次回からは多めに持ってこよう。
フェルトさんは受け取った盛合せをカウンターの奥にしまった後、こほんと咳ばらいを1つ。
「さてラキア様。
今後の活動を続けるにあたりやはり装備の更新は大事です。
そこで1つ依頼をお願いしたいのですが」
「はい、何をすればいいんですか?」
「市場調査です」
詳しい話を聞いてみれば、最近この街でプレイヤーメイドの装備品が数多く出回っているらしい。
しかし性能はピンキリ。
そのせいでクレームが飛び交い揉め事の原因になっているのだとか。
「でも僕、装備品の目利きなんて出来ないですよ?」
「はい、そこはそれほど期待していません。
ラキア様にお願いしたいのは街の露店を巡って目についた装備品を数点買ってきて欲しいのです。
もちろん代金はギルドから出しますので」
「お金が勿体ないような。それなら最初から目利きのできる人が行った方が良いのでは?」
「最初はそうしようとしたのですが、向こうもギルド職員や高レベルの職人が監査に来ていると分かると怪しいものは仕舞ってしまうんです。
そこで見るからに駆け出し冒険者という装備のラキア様にお願いできないかと」
なるほどそう言う事か。
ちなみにこの調査、僕が初めてと言う訳ではなく既に何度か実施されていてそれなりに成果も出ているらしい。
だから気軽に見てきてくださいと送り出されたのだけど、お仕事なら気合を入れていかないと。
さて露店が開かれている場所はもちろん街の中ならどこでもオッケーなどという事は無く、東南北にある広場周辺のみらしい。
西に広場が無いのは領主の館があるからなんだとか。
なのでまずは南の露店広場から見て回ることにした。
ここは主に防具を売る露店が並んでいる。
防具と一言に行っても金属製、革製など様々だ
(う~ん、人が多い)
露店を開いているという事は掘り出し物を求めてやってくる人も多い。
そして僕みたいな新人ばかりかなと思ってたけど意外と高級そうな装備の人も居る。
僕もこのゲームを続けていくとあれくらい凄い装備に身を包むことになるんだろうか。
いやでも動きづらいのは勘弁かな。
速く走るのが無理な分、腕の振り回しが邪魔されないものがいい。
とは言っても向こうに居るお姉さんみたいにヒラヒラ~なのもちょっと……。
やっぱり戦闘スタイルが似ているミッチャーさんが一番参考になる気がする。
なら丈夫な布がベースで要所を革か金属で補強しているものが良さそうだ。
(ならあの辺りかな)
色々考えた僕は布製品を多く扱ってそうな区画へと足を向けた。