164.砂漠の嵐
黄金の街の景色を堪能してきた僕達は今度こそ盗賊の問題を解決するために街に戻ることにした。
なにせ盗賊たちが東側に拠点を置いていない事が確定したし。
「街の東に居たならあの景色に気付かないはずがないよね」
「全員朝に弱いと見ない可能性はありますけど」
「逆に徹夜して見ることになるんじゃない?」
「それ以前に夜警くらいは居ると思う。居るよね?」
「情報の裏どりをしてない時点で相当な馬鹿っぽいから……」
こういう時、自分ひとりだと思い込みで「これで間違いない」って他の可能性を無視してしまうけど、3人で考えることで死角を補い合えるから助かる。
歩きながら話し合った結果、9割がた東ではないだろうという結論に至った。
残り1割は、まぁ誰にも想像もできない事をする人はどこにでもいるから。
街の門を潜るころにはすっかり太陽も登り気温も大分暖かくなってきた。
この時間なら朝市とかも出ているんじゃないかなって思ったんだけど。
「凄く閑散としてるね」
「はい、何かあったんでしょうか」
朝市どころか道には人の姿が全然ない。
昨日はそれなりに賑わってたのに。
これは何かあったに違いないと僕らは急ぎ冒険者ギルドに飛び込んだんだけど。
「あれ?」
てっきりギルド内は右へ左への大騒ぎかと思えば平常運転。
特に事件が起きた訳じゃないの?
「あの、すみません」
「はいなんでしょうか」
声を掛けた受付のお姉さんの対応も昨日と変わらない。
ならやっぱり何も問題ないようだ。
じゃあ時間帯の問題?
「外に人が出歩いてなかったんですけど、あれはいつも通りなんですか?」
「え、あぁ。いつも通りと言えばそうですね。
今日はこの後、嵐が来そうなんです」
嵐か。確かにそれなら外出しようとはあまり思わないかな。
でもこの世界に天気予報とかあるの?
「あ、ここからでもそろそろ見えてきましたよ」
「え、あれ?」
窓の外をみれば南の空が砂色に染まっていた。
まるで砂の壁が迫って来ているようにも見える。
そうか、砂漠の嵐は雨じゃなくて砂なのか。
などと感心している間に街はどんどん砂嵐の中に沈んでいき、もう向かいの建物すら見えなくなってしまった。
壁に当たる砂がザラザラと音を立ててるし、この中を出歩くのはかなり嫌だ。
「ギルド内には工房や調合室などもありますので、嵐が通り過ぎるまでは屋内で出来る作業をすることをお勧めしますよ」
「そうですね。流石にこれは外出しようとは思いません。
ちなみにこの嵐はどれくらいで通り過ぎるか分かりますか?」
「30分から2時間の間ですね」
さすがに1日中家の中に閉じ込められるってことはないか。
そしてこれを見越してギルド内には各種生産施設が完備してあるらしい。
周りを見れば他の冒険者たちはカードゲームを始めたり武器を手入れしたり、はたまた嵐が何分で過ぎ去るかを賭ける人など様々だ。
「じゃあ僕らはなにしてようか」
「ご飯はさっき食べましたしね」
「ログアウトしてリアルの用事を済ませてくるって手もあるけど」
そうなんだけど、それは若干負けた気がする。
この先もこうした足止め系イベントはあるだろうし、その度にログアウトしてたらその内ログインするのが億劫になってしまいそうだ。
それにこういう時間ならではのイベントもあると思う。
例えば向こうでカードゲームしてる人に勝負を挑んで勝ったら何か手に入る、とかね。
ただし僕はルールも分からないので勝負以前の問題だけど。
仕方ない。
今日の所はアイテムボックスの整理でもしてようかな。
道中で色んなモンスターを倒して気が付けば色々溜まってるし。
テーブル席を1つ借りた僕達はアイテムボックスのリストを流し見ながらため息をついた。
「モンスターの爪とか皮とか、売る以外使い道が無いんだよね」
「いつか使うかもしれないって言ってずっと残ってしまいそうです」
「そして出来上がるガラクタの山」
コロンの言葉に思い当たることがあるのかフォニーがちょっと遠い目をしている。
その点でいうと僕の家は物が少ないし滅多に増えることも無い。
まぁ僕が躓かない様にっていう家族の配慮なんだけど。
それは兎も角、アイテムボックスの半分以上を使わないアイテムが占めている。
装備の新調に使えるかもしれないけど僕らは鍛冶はやってないし今使ってる装備で十分だ。
それに短剣はトトさんの以上の物が早々作れる気がしない。
「って、あれ?」
「どうしました?」
「いやなんか変な選択肢が出て来た」
リストの中のモンスター素材をタッチしたら『取り出す』などの項目の中に『暴食の短剣に与える』って言うのがあった。
暴食の短剣って、トトさんの短剣のことかな。
試しにその項目を選んでみたら、リストからそのアイテムが消え、代わりにトトさんの短剣の横にバーが表示され、それが若干伸びた。
「どうやらトトさんの短剣に食べさせられるみたい」
多分このバーが一定以上になったらレベルアップするとか、そう言うのだと思う。
なのでストック数が2桁以上のレアでは無さそうな素材を全部投入してみた。
これで大分すっきりしたかな。
「私の持ってる素材も使いますか?」
「ううん、そこまで劇的に成長する訳でも無いみたいだし良いよ」
これがもし、手持ちのアイテム全部食べさせたら一気にレベルアップするって話なら考えたけど、そう都合良くは行かないみたいだ。
なので今後もアイテム整理の際に捨てるよりはマシ、くらいの感覚で与えて行こうと思う。
「ラキアの短剣なんだから食べ物を与えておけばいいんじゃないの?」
「どういう理屈? 残念ながらモンスター素材しか受け付けないみたいだよ」
仮に店売り品でも良いって話なら全財産はたいて買い漁るって手もあったけどそれは出来ないみたいだ。
それと同じものばかり与えても伸びが悪くなるとかあるかもしれないし時間があったらどの素材をどう与えるのが効果的なのか調べてみるのも良いかも。
あと気になるのは素材を与えたのは今回が初めてなのにバーは最初からそれなりの長さがあった。
なので普段使っている間にも少しずつ伸びてるのだろう。




