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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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163/179

163.朝の黄金の街

 冒険者ギルドで話を聞いた僕達はその足で市場へと向かった。

 ニードリッヒさんにも言われたけど砂漠で活動するための装備を整える必要がある。


「じゃあ手分けして行こうか」

「はい」


 3手に分かれて必要なものを買い揃えていく。

 僕の担当は食料品関連だ。

 え、食料品は必需品じゃないって?

 いやいやそんなことはない。

 旅の醍醐味は景色と出会いと食べ物だ。

 気候が変われば植生も変わる。

 砂と岩ばかりの砂漠でもオアシスはあるし人々が生きていけるだけの食料が生産されている。

 温暖な地域とはまた違うそれを食べなければ旅の半分を損したことになるだろう。

 なんて格好付けてみたけど、やっぱり美味しいものを食べたいよねって話だ。


「こんにちはおじさん。これは、えっと食べ物であってますか?」

「おういらっしゃい。旅人さんか?

 これはヤッシーの実だ」

「めっちゃ堅そうだけどどうやって食べるんだろう」


 ラグビーボールサイズの木の実。

 叩くとコンコン言うんだけど。噛んだら歯の方が負けるんじゃないかな。


「買うかい?」

「じゃあまずは1つ。で食べ方教えてください」

「あいよ。これは上側1/3の所で切って中身をスプーンで掻き出して食うんだ」


 包丁、いや鉈でスパッとカットすると中から柔らかい果肉部分が顔を出した。

 試しにスプーンで掬って食べてみれば食感は崩したゼリーもしくは硬めのヨーグルトって感じ。

 味はほんのりとした甘みと酸味があって食感と相まってフルーツヨーグルトだこれ。


「おじさん、これあと10個ください。

 他にもこの地方の特産品を色々と」

「まいど!」


 半分食べて残りはフランに渡しつつ買い物を続ける。

 ちょいちょい味見もしてるんだけど、やっぱり普段食べてるものとは違うものが多い。

 料理も見た目こそ焼うどんっぽいのもあればお好み焼き風のものもあるけど味付けは全然違う。

 魚のフライは、あ、これデザートフィッシュだ。

 ただその屋台は品数が少なかった。


「もしかしてデザートフィッシュの入荷が減ってるんですか?」

「まあな。ほら、例の盗賊の襲撃騒ぎがあっただろう。

 デザートフィッシュが獲れる流砂の川も街の西にあるから、盗賊と鉢合わせるかもしれないってんで漁師たちが行きたがらないんだ」


 僕の問いかけに若干歯切れ悪く答える店主。

 街の外はモンスターが居て危険だけど、それに輪をかけて盗賊の心配までしないといけないとなると大変だろうな。


「足しにもならないと思うけど、さっき獲ってきた分をお売りしますよ」

「おうすまねぇ」


 たった数匹分なのですぐに無くなってしまうだろうけど、気持ちの問題だ。

 今度また流砂に行ったら出来るだけ獲ってきてあげよう。

 市場の露店では食べ物を扱う店の他、宝飾品を扱ってる所もあった。

 並んでいるのは宝石や鉱石を加工したものが多く、金細工は少ない。

 盗賊団が狙う程の金はどこに仕舞ってあるのだろう。


『買い物終わりました』

『私の方も終わったわよ』


 二人から連絡が来たので目を付けておいた喫茶店で合流することにした。


「お疲れ様。それでどうだった?」

「はい、やっぱり『金』はほとんど見かけませんでした」

「それなんだけど、気になる話を聞いてきたわよ」


 コロンが仕入れて来た情報によると、朝日が昇る時間に街の東にある丘に登ると良い事があるらしい。


「時間帯が重要ってこと?」

「あっ。多分ですが時間と言うより朝の陽ざしが重要なんだと思います」

「……あぁ、そういう」


 お、どうやらふたりは何かに気付いたらしい。

 僕はまだ分かってないんだけど、ここで教えて貰うより実際にその丘に行ってみた方が良いかな。

 今日は時間的に微妙だったので翌日改めてゲーム内時間で日の出前に合流しようと話して解散した。

 そして翌日。

 真っ暗な街中を東に向かって移動する。


「おぉ~、日の出前は本当に寒いんだね」

「北の豪雪地帯とはまた違う寒さな気がします」

「これは確かに砂漠用の装備じゃないと厳しかったわね」


 この刺すような冷たさは物理的にダメージを伴ってそうな気もする。

 昨日買い揃えた厚地の服は空気を遮断することで断熱効果を得ているようだ。

 何も考えず普通のテントで夜を越そうとしたら朝には瀕死だったかも。


「環境ダメージってやっぱりあるんだね」

「リアルに比べれば大分抑えられてますけどね」

「それが無いと溶岩の海を泳げることになるし」


 それはもう人間を辞めてると思う。

 ともかく東の丘へとやって来た。

 周囲に特に変わったものは無い。

 見晴らしが良いし足元も岩だからモンスターが近づいてきたらすぐに分かる。


「日の出まであと20分くらいだし、今のうちに朝食にしようか」

「良いですね」


 地面にシートを敷いてその上に簡易な木の椅子とテーブルを出す。

 寒いので焚火台も用意して火を起こしてっと。


「朝食と言ったらパン?それともご飯?」

「私はご飯です」

「うちはどっちも半々くらい」


 こういうのも家によって違うんだろうな。

 ちなみに僕の家はご飯8割パン2割。週に1回くらいパンかな。

 残念ながらご飯はないので今日はパンだ。

 薄切りにしたパンに焚火で温めたチーズとハムを乗せて昨日買った野菜を乗せて。


「はい、お手軽オープンサンド」

「ありがとうございます」

「この上に乗ってる半透明のは野菜?」

「砂漠の特産品だって」

「ふぅん」


 見たことのない食材におっかなびっくりしつつも齧ってみれば爽やかな甘みが口の中に広がる。

 ハムは塩味強めなので丁度いいバランスだろう。

 あとデザートにヤッシーの実を出せば朝食としては十分かな。

 などとキャンプご飯を堪能してたら夜が明けて来た。

 ってしまった、夜明けだ!


「コーヒーを用意するの忘れてた」

「いや夜明けは別にコーヒーを飲まないといけない訳じゃないから。

 それよりほらあれ」

「え、おぉっ!」


 コロンが指差す先には朝日を受けて黄金色に光り輝く街並みがあった。

 日中は普通の砂色だったのに。

 周囲の地面も普通に砂の色なのに街だけが輝いている。


「なるほど、これが黄金の街の正体か」

「これを知ってたら奪おうだなんて発想は起きないですよね」

「ええ。だから盗賊団は余所者で確定ってことなんでしょ」


 うん、これは確かに盗めない。

 仮に街ごと奪えても黄金は手に入らないだろう。

 それから30分後には太陽は登り切り、街も普通の砂色に戻ってしまった。

 晴れていれば毎日見れるのだろうけどそれでも神秘的な光景には違いない。

 今度は街の中に居たらどう見えるのかも確認してみよう。


「ちなみにリアルでも同じような現象が起きる街はあるのよ」

「そうなの!?」

「他にも夕陽で真っ赤に染まる街とかね」

「あと本当に建物が全部青で統一された街というのもありましたよね」


 そうなのか。

 世界は広いなぁ。




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