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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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160/176

160.砂の海へ

 用事を済ませた僕らは再び南を目指す。

 足元からは次第に雪が減り頬を撫でる風には暖かみが増えた気がする。

 そして。

 僕らの目の前には海が広がっていた。

 そう、砂の海が。


「夜しか雪が降らないっていうからそうだと思ってたわ」

「砂漠は昼夜の寒暖差が激しいですからね」


 地平線の先まで広がる砂と岩の大地。

 ちなみに後ろを振り返ればまだ雪が見える。

 きちんとした境界線があった訳じゃないけど完全に別フィールドって感じだ。

 気温も太陽が昇っている今は春を通り越して初夏な感じ。


「特に対策とかはしてないけどこのまま進んでも大丈夫だと思う?」

「アイテムボックスの中には食料もテントもありますから脱水症状や熱中症でダウンして死に戻る、みたいなことは避けられると思います」

「よし、なら行こうか」


 リアルだったら『自然を舐めるな』って怒られそうだけど最悪どうとでもなるのがこの世界だ。

 なおこの世界の砂漠では馬は砂に足を取られて走れないらしい。

 仕方ないので馬から降りて徒歩に切り替える。

 そして十数分後。

 僕らは早くも自然を舐めていたなとちょっと後悔している。


「見渡す限りの砂で、ちゃんと前に進めてるのか分からなくなってくるね」

「このフィールドでは地図も見れないみたいです」

「ねぇ。目印にしてたあの岩、なんか動いてない?」

「「え」」


 右を向いても左を向いても砂と岩だけで道らしいものも何もなかったからコンパスで真南にあった遠くの岩を目標に歩いてたのだけど、なかなか近づく気配が無い。

 そしてコロンの言葉で足を止めた僕達はじっとその岩を見続けてみると。


「確かに。少しずつ西に動いてるね」


 コンパスで確認してみればいつの間にか南西よりやや西側に移動していた。

 見た目はただの岩なんだけど、どうやって動いてるんだろう。

 岩型のモンスターだったのかな?


「どうしよう。ちょっと気になるんだけど見に行っていい?」

「急ぐ理由も無いですし行ってみましょう」

「そうね」


 満場一致で岩の正体を確認することになった。

 2時間ほど道中のモンスターを倒しながら岩を追っていけば、ようやくその足元が見えてきた。

 といってもただ砂に埋まってるだけで別に足が生えてたりはしない。

 どうやら岩はただの岩、いやサイズ的に小島と言うべきかな。

 じゃあどうやって動いてるのかと言えば、地面そのものが動いていた。

 所謂『流砂』って奴だろう。

 当然初めて見たけど本当に川みたいに砂が流れてるんだな。


「自然って凄いね」


 流砂という言葉は昔からあるので、これはゲーム特有の現象ではなく、リアルでもあるはずだ。

 高低差がある訳でもないのに何をエネルギーに動いてるんだろう。


「いや実際の流砂は地下水の影響だから。これは別物よ」

「あれ、そうなの?」


 目の前の流砂は本当にただの砂。

 でもリアルの方は泥混じりで見た目もちょっと違うらしい。

 試しに流砂の中に手を入れてみても水気は感じない。

 やっぱりどうやって流れてるのかは不明だ。

 そして原理は不明でもこの地域で川の役目を果たしているのなら魚も住んでいる。


ザバッ

「おっと」


 流砂の中から1メートル近い魚が飛び出してきて僕の手に噛みつこうとしてきた。

 慌てて手を引き戻して避けたけど、魚なら食べられるのかな。


「そういえば魚釣りってやったこと無かった」

「やってみます?」

「うん」


 さっきので釣り方は大体分かった。

 僕は右手に短剣を持ちつつ左手を流砂に突っ込む。

 この状態で少し待てば。


ザバッ

「きたきた」


 流砂の流れを遮ったのに反応して魚が飛び出してくる。

 おぉ、改めてじっくり見ると鋭い歯がびっしり生えているな。

 その口に短剣を差し込むと飛び掛かってくる力と相まってスパッと切れた。


「あ」


 魚はキラッと光って消えてしまった。

 どうやら普通の魚ではなくモンスター扱いで倒したら消えてしまうらしい。

 アイテムボックスの中には今の魚の切り身が入っている。

 ……切り身なのか。

 試しに取り出してみたら綺麗に3枚に捌かれた白身魚だった。

 見た感じ砂まみれだったりはしないので普通に美味しそう。


「ラキア君、私達もやってみて良いですか?」

「もちろん。みんなで釣ってみよう」


 3人でちょっと間を空けて並んで流砂に手を差し入れる。

 するとどれだけこの流砂には魚が居るのか、それぞれにさっきと同じ魚が飛び掛かってくる。

 対する僕達の掴まえ方は。


「フラン」

(くすくす)


 肩に乗ったフランが糸を出して魚を縛り上げた。


「わっ!」


 フォニーは魚の耳元で大きな声を出して失神させていた。

 へぇ、魚って耳とかあるんだ。

 そしてコロンはと見れば空中に魚が固定されていた。

 どうやら新しい祝福で出せるようになった空気の盾で挟み込んだらしい。


「ものすごく驚いた顔してる」

「こういうのを(ギョ)ッとしてるっていうのかしら」

「「……」」

「い、いいじゃない。たまには」

 

 珍しく駄洒落を言ったコロンは顔を赤くしていた。

 余談だけど『ぎょっとする』って擬音語と魚は関係ないそうだ。

 ともかく折角だからもう何匹か釣っていこう。


「お前たち、そこで何をしている!」

「??」


 僕が5匹目を釣り上げた所で背後から声を掛けられた。

 振り返れば背の低い馬に乗った5人組が警戒した様子で僕らを見ていた。

 良く日焼けした褐色の肌につばの広い帽子。

 間違いなくこの地域の住人だろう。


「その先は流砂の川だ。間違って踏み込めば沈んで二度と出られないぞ」

「あ、はい。ご心配ありがとうございます」


 一瞬魚釣りをしてたのを怒られたのかと思ったけど違ったようだ。

 僕らが流砂に落ちないか心配で声を掛けてくれたのだろう。



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