152.新年祭は悲鳴と共に
新年祭の打ち合わせをしたり、花火作りをしたり、最初の街のおばあさん達のところで炬燵に入ってまったりしてたら、あっという間に新年祭当日になってしまった。
闘技場には現在、ステージ中央に女神の雪像が置かれ、それを囲むように教会関係者がなにやら花を供えたり儀式っぽい準備を行っている。
それを上から眺めるように観客席には僕らプレイヤーを始め、街の人達や、王侯貴族も参列している。
ちなみに北側に王様たちと近衛や騎士団が座り、南側にプレイヤーが座っている。
東側は今やってる儀式に参加しない教会関係者の席だ。
てっきり僕らが東側だと思ったんだけど。
『なに。普段から女神を後ろ盾に偉そうにしている者たちだ。
こういう時くらい女神の盾として働いて貰うべきだろう』
とはギルドマスターの言葉。
仮にモンスターの襲撃があった場合、教会の人達が戦ってくれる可能性はあるんだろうか。
無駄に負傷者が増えて無駄に混乱が助長されるだけだと思うんだけど。
などと考えている間に準備が整ったらしい。
「ただいまより新年祭を開催致します」
司会の言葉と共に楽団による演奏が始まる。
それがひと段落したところで国王が立ち上がり挨拶を始めた。
さて国王の挨拶は……良かった。それなりの長さで終わってくれた。
だけど。続く教皇の挨拶が長い。
「であるからして」
もうかれこれ15分以上続いてるんだけど終わる気配がない。
せめて何か価値のあるうんちくを話してくれればいいのに、半分以上が自分の自慢話で残りもよく分からない過去の思い出話だ。
観客席のみんなも退屈そうにしている。
誰か止めろと言いたいけど、教会のトップだから誰も止められない。
止められるとしたらただ一人。
ひゅう~~~……ゴンッ!
「ごべっ」
どこからともなく降ってきたレンガが頭に直撃して倒れた教皇は周囲の人達によって引き摺られて退場していった。
え、あれ死んでないの?
ちょっと心配になったけど騒ぎになっていないという事は『いつものこと』なのかもしれない。
前回の女神降臨の際もあの教皇が執り行っていたのなら同じことが起きてそうだし。
そしてレンガを投げた張本人(神)はというと。
教皇の姿が完全に見えなくなったタイミングで上空が光り輝き声が降ってきた。
「私の愛する人間たちよ。
今日と言う日を共に迎えられたことに心から感謝しなさい。
この世界に呼び寄せ祝福を授けた異界の者たちもとくとこの姿を目に焼き付けると良いでしょう」
上から目線というか、物理的にも上からの発言にプレイヤーの皆は感謝も怒りも通り越して呆れたまなざしを上空に向けていた。
それと光が強すぎて女神の姿は全然見えてないと思う。
次回からはサングラスを用意した方が良さそうだ。
「この1年、多くの苦難を乗り越え成長した祝福を確認出来ることを私も楽しみにしていました」
ようやく光が収まった後には上空からゆっくりと降下してくる女性の姿があった。
それを見た一部の人達がにやりと笑った。
「よし今だ。放て~~!!」
「「おぉ~~」」
一瞬、怒号に近い掛け声に敵の襲撃かと腰を上げたプレイヤー達は、しかし続くどこかで聞き覚えのある音を聞いて首を傾げた。
どんっ、ひゅ~~~……どっ。ぱらぱらぱら……
続けざまにお腹に響く砲撃音と笛の音。そして続く色とりどりの光を見てほとんどの人が打ち上げ花火だったっぽいと理解した。
なぜぽいのかと言えば、その狙いは全て上空の今まさに降りてきている最中の女神に向けられていたからである。
「うきゃ~~~まぶしい~~~」
「はっはっはぁ。祝いの打ち上げ花火だ。
存分に味わってくれ女神様!」
花火の使い方としては絶対間違ってる。
『良い子のみんなは絶対真似しないでね』ってテロップが出てきそうだ。
ただ女神も花火の直撃を受けても「眩しい」で済んでる所は流石だな。
この程度はダメージにもなっていないらしい。
若干ふらふらしながらも雪像の上に着地した女神だけど、そんなのんびりとする暇はない。
『さあ皆さん。女神様は皆さんが鍛え上げた祝福を確かめたいそうです。
その為にはやはりその身を持って確かめるのが一番。
存分に、全力で、手加減なしで、女神様に叩きつけて差し上げましょう!!』
「「おおぉぉ!!!」」
会場中に響く声に、プレイヤー達が武器を持ってステージに飛び込んでいく。
一番手は遠距離攻撃の魔法プレイヤー達だ。
「『エクスプロージョッ』!」
「『メルティラブ』!」
「『ブス出すガス核爆発』!」
「『リア充爆発しろっ』おらぁ」
「『俺こそが炎上系配信者だっ!』」
ズドドドドッ
示し合わせたように放たれる炎系の魔法が女神の雪像の顔面に直撃。
あっという間に蒸気に変えてしまった。
続く各種魔法が女神に降り注ぎ、女神が叩き落とされるように地面に降り立ったところで今度は近接プレイヤー達が襲い掛かっていった。
なんというフルボッコ。
しかし流石女神。これくらいでやられたりはしない。
「ふんっ。なかなかに荒々しい歓迎ですね!」
言いながら自分の周囲にバリアを展開しすべての攻撃を受け止めてしまった。
更にバリアを一気に広げることで近くのプレイヤー達を吹き飛ばしてしまう。
「残念だけど及第点をあげられるのは1割程度。
それで私に認めてもらおうなんて烏滸がましいにも程があるわ。
せめてまずはこれらを相手に勝利してみせなさい」
ぱちっ
女神が指を鳴らすと闘技場の外から幾つもの雪像が飛んできた。
現れたのは女神の雪像もあればどこぞの勇者のものもある。
ってそれ、冬イベントで皆が作ってた雪像じゃないか。
女神の魔法なのか雪像たちはまるで生き物のようにプレイヤー達に襲い掛かって来た。
だけどそれで怯む皆じゃない。
「っしゃあ。ここからが本番だぜ」
「待ってろ女神。すぐにこいつらぶっ壊してやるからな!」
気炎を吐いて雪像を迎撃するプレイヤー達。
ちなみに王族や一般の人達は、この光景をアトラクションか何かのように楽しそうに見ている。
流れ弾がそっちに行かない様に騎士団やギルドの皆が頑張ってるから大丈夫そうだ。
そして更に場を混乱させようと、闘技場の外。東側からモンスターの雄叫びが響いてきた。
「大変だ。モンスターの大軍が押し寄せて来るぞ」
「くそっ、警備隊はなにをやっているのだ!」
慌てる教会関係者達。
警備隊は市民の安全確保に全力を尽くしてるし、騎士団も王侯貴族の護衛で手いっぱいだ。
自分達の事は自分達で何とかしてほしい。
ちなみにモンスターの狙いも女神なので邪魔をしなければ積極的に狙われることも無さそうなんだけど、パニックを起こしている彼らはそのことに気付いていない。
まぁ頑張って。
「で、僕らはどうしよっか」
「皆さん頑張ってますし、このまま見物で良いのではないでしょうか」
「無駄に目立つ必要もないでしょ」
ということで、僕達3人は女神への襲撃には加わらず、のんびりと観客席から見物しているのだった。




