表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/178

151.お祝い事には花火がつきもの

 新年祭での女神を受け入れる準備はこれくらいで良いとして、改めて新年祭限定のイベントとか無いかなと適当に街を散策することにした僕達。

 特に当てもなく歩くのもありなんだけど、そうすると何でもかんでもイベントに繋がる何かなんじゃないかと思えてくるのでちょっと絞り込むことにした。


「さて問題です。年越し、もしくは正月と言えば何でしょう」

「突然クイズが始まったわね。まぁいいけど。

 えっと、除夜の鐘、初詣、おみくじ、餅つき、書初め、羽根つきとかかしら」

「食べ物で言えば年越しそば、お餅、お節料理とかでしょうか。

 海外だとまた別の料理が正月に食べられているそうですけど」

「うんうん。あと都市部では年越しのタイミングで花火を上げたりするらしいね」

「この世界に花火ってあるの?」

「見たことはないかな」


 この世界に火薬はあるけれど、それで花火を打ち上げたって話は聞いたことが無い。

 ただ僕らが知らないだけで有ってもおかしくはないのかなって思う。


「このままイベントを探すのも良いけど、折角だから花火を作ってみる?」

「素人の私達に出来るでしょうか」

「ま。間違って暴発しても私がふたりを守るから大丈夫よ」


 よし、そうと決まれば早速材料の調達からだ。

 火薬は鉱山の町に行けば手に入るので、問題は色付けするための金属粉だな。

 リアルならネットで買える気がするけど、もちろんこの世界では無理だ。

 それに炎色反応が同じという保障もない。


「親方なら色々知ってたりするかな?」

「無理だと思う。あの人はメカニックであってアルケミストではないから」


 一塊に理科と呼ばれても物理と化学は全くの別分野か。

 ならまずは困った時の冒険者ギルドかな。

 と思ったのだけど反応は芳しくなかった。


「花火?炎色反応?

 そもそも火薬は取り扱いが難しい素材です。

 一歩間違えれば大事故に繋がりますし。

 それを色付けして空に飛ばすというのは新手の兵器でしょうか」

「まぁそうなりますよね」


 普通に生活してたら危険物を見て、よしこれで夜空に花を咲かせて皆を楽しませよう、なんて発想はなかなか出来ない。

 モンスターの居るこの世界では火薬を飛ばして爆発させる武器の方が先に思いつくのは当然だ。

 昔の人はどうして花火を打ち上げようなんて発想に至ったんだろう。

 まあそれはログアウトしてからネットで調べれば良いとして。

 今は色違いの火の作り方だ。


「例えばモンスターの中に緑や黄色い炎を吐くやつとか居たりしませんか?」

「えーっと、あぁそれでしたら坑道内に同じ種類なのに異なる炎を扱うモンスターが居ります」

「よし、ならそのモンスターが落とすドロップ素材が使えないか試してみよう」


 モンスターの出現する坑道の場所を聞いて早速やってきた。

 坑道内の見た目は以前救助で潜った時とほぼ同じ。

 違うのは出てくるモンスターの種類だ。

 今回はゴーレムではなく生き物をベースにしたものが多い。


「巨大な爬虫類って苦手な人は多そうだよね」

「女性で好きって言うのは少数派だと思います」

「ムカデやゴキブリが出て来るよりマシじゃないかしら」


 などと雑談を交えながら討伐を進めていくと、無事にお目当てのモンスターが現れた。


「炎を扱うというか」

「炎そのものですね」


 てっきり火を吐くモンスターなのかと思えば全身が炎のモンスターだった。

 前情報通り、赤、青、緑と色違いになっているけどどういう原理だろう。

 僕としてはこう、坑道内の土に含まれる金属化合物を食べて成長したモンスターが、その食べたものによって吐く炎の色が変わってたりしないかなってのを期待してたんだけど。


「まぁとにかく倒してみようか」

「はい。ですが物理攻撃は効きそうにないですよ?」


 確かに。でも一応核っぽいのが小さくあるので、そこを撃ち抜けば倒せると思う。

 でも僕がボウガンを出す前にコロンが一歩前に出た。


「なら単純に火を消す要領で攻撃すれば良いんじゃない?」


 そうだとは思うけど、火を消す要領って?

 思いつくのはこう、密閉して空気を遮断することなんだけど、あのモンスターって空気を燃焼させてる訳じゃないと思うからそれは効かない気もする。

 だけどコロンの考えたのはもっと原始的なものだった。


「ふんっ」

バシッ!


 左右の盾で挟んで潰してしまった。

 いや確かにモンスターは倒せたみたいだけど、え、その消火方法って一般的なの?

 僕の隣でフォニーも凄く驚いてるんだけど。

 振り返ったコロンは驚く僕らを見てどこか納得いかない表情だ。


「何よ。理論的にも間違ってないのよ?」


 文句を言いつつ残ったモンスターも同じ手順で倒してからその理論を教えてくれた。


「盾同士をぶつけることによる衝撃波で炎を吹き飛ばせるし、ついでに炎が存在できる空間を物理的に排除することも出来て、更に風圧も加わっての3段効果よ。

 これで火種となる核があったとしても潰せるし、無いなら炎は存在できない空間になるのだから消えるしかないの。

 リアルに戻ったら『ダイナマイト消火』とか検索してみて」


 初めて聞いたけどコロンが自信を持って言うのだから本当にあるのだろう。

 ともかくモンスターは倒せたので僕らのアイテムボックスにはそのドロップ品が入っている。

 手に入れたのは『火の粉』。

 取り出してみたら本当に粉だった。(つまりリアルの火の粉とは別物だ)

 試しにマッチの火に掛けてみれば火の色が変わった。


「どうやら使えそうだね」

「なら後は量を確保しましょう」

「試作も考えると結構な量が要るわね」


 その後1時間ほどモンスターを狩って材料を集めたところで今日の所は一度解散。

 時間的にも遅くなっていたし、ネットで打ち上げ花火の構造を確認してまた明日集まろうということになった。

 そして翌日は朝から試作開始だ。


「まず最初に行うべきは安全の確保」

「はい!」


 火薬を扱うのだから火気厳禁は当然として、作業場所は開けた場所が望ましい。

 万が一暴発してもプレイヤーの僕らだけなら痛いで済む可能性が高いし。

 なので町の外の空き地で行うことにした。

 周囲にモンスターは出るけどそこまで強くないので問題ない。


「続いて星と呼ばれる材料の準備」

「私てっきり火薬をハンドボールサイズに丸くしただけだと思ってました」

「花火玉の中身は光を放つ星とそれを拡げる火薬で出来てるらしいね」

「本来どちらもかなり手間と時間を掛けて作られるみたいだけどゲームだから粘土みたいに捏ねるだけで出来るのは助かる」


 確かに子供の頃の粘土遊びに似てて懐かしくも楽しい。

 そうしてピンポン玉サイズで作った花火玉1号を試しに導火線に火を点けてボウガンで打ち上げてみた。


シュ……ボンッ!


 上空15メートルくらいの場所で直径2メートルくらいの花が咲いた。

 色は緑。真円には程遠い歪んだ形だったけど多分これが花火だと思う。


「えっと、一応成功で良いのかな」

「はい。ですけど改良の余地はありそうですね」

「サイズもこれの10倍は欲しいし、1発だけじゃなく一度に何発も打ち上げたいわね」

「そうなると発射台も必要だね」


 僕達だけだとちょっと手が足りないかもしれない。

 などと考えていたら町から人がやって来た。


「おい、今こっちで信号弾を打ち上げたのはお前たちか?」

「はいすみません」


 信号弾。なるほど、花火を知らない人からすると何かの合図、もしくは救難信号と勘違いされたのかもしれない。

 冒険者ギルドには作業の事は伝えたけど町の人にまで周知はしてないからね。


「って、君たちは」

「……えっとどこかでお会いしましたっけ?」


 僕らの顔を見て驚くおじさん達。

 どうやら僕達の事を知ってるみたいだけど会ったことはない、はず。


(ラキア君。先日の事件で助けた人達です)

(そっか、僕は寝てたから知らないのか)


「先日はミスリルの短剣をありがとうございました。

 大事に使わせてもらってます」

「おう良いって事よ。むしろこっちの方こそ命を助けられたんだからな。

 それでさっきのは何だったんだ?」

「あれはえっと」


 僕が花火について説明するとおじさん達はふむふむと頷いていた。


「僕達の世界では新年のお祝いにこれで盛大に盛り上げるんです」

「なるほど、新年祭で女神が登場したらぶっ放すのか。それは派手で良いな!

 よし、そう言う事なら俺達に手伝わせてくれ。

 こういうのを作るのは子供の頃からよくやってたからな!」


 そう言っておじさん達はすぐに花火の構造を学習すると町へと戻っていった。

 彼らなら火薬の取り扱いにも慣れてると思うし任せて大丈夫かな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ