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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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147/179

147.来年の話をすると

 クリスマスも無事に終わり、今日は2学期の終業式だ。

 うちの学校の校長は話が短くて助かる。

 式の後のHRも終わってさあ帰ろうかと思ったところで担任に呼び止められた。


「照元。ちょっと来てくれ」

「はい、なんでしょう」


 担任に連れられてやって来たのは生徒指導室。

 呼ばれた感じ、怒られる訳では無さそう?

 とは言っても呼び出された理由に心当たりはない。

 一応これでも優等生とまでは行かなくても問題行動は起こしてないし、先日の期末試験も全教科平均点は超えていたから大丈夫なはず。

 考えても分からなかったのでまずは先生の話を聞こう。


「これはまだオフレコにしておいて欲しいんだが。来年度から授業にVRマシンを導入しようという話が持ち上がっている」

「それは、色々凄いですね」


 予算と言う意味でもそうだし、消費電力やネットワーク設備と言う意味でもそうだ。

 今でもこの学校にはパソコン室があって週に1回パソコンの授業があるけど、あれのVRマシン版って事だよね?

 VRマシンを1クラス分=30台を並べようと思ったら普通の教室には収まらないし、電気や通信の事を考えると専用の施設を建設するのかな。

 それなら何千万か下手すると億単位のお金が動くんじゃないだろうか。

 僕の妄想を知ってか先生はそうじゃないと否定した。


「ゆくゆくはクラス全員が使えるように、というのが理想なんだろうが現実的ではないのは分かるだろう?」

「はい」

「そこでまずは2台だけ試験的に導入して、実際の使用感を確かめる方針なんだ」


 なるほど、2台くらいならそこまで負担ではないか。

 それで僕にこの話をしたという事はそう言う事かな?


「照元にはテスターとして協力をお願いしたい」

(やっぱり)

「幾つかの授業を実際にVRマシンから受けて貰って感想を聞かせて欲しいんだ。

 その内容次第で再来年度以降の運用拡大を検討する予定だ」

「感想、ですか?」


 あれ。若干先生の言葉に違和感を覚えてしまった。

 だって試験とかテスターっていう言葉は研究っぽい印象を受ける。

 それにかなりの額が動く話なのだ。

 だからてっきり具体的な数値をレポートに纏めて報告して欲しい。位の話なのかと若干身構えていたのに感想などという個人の気分的なものを求めるだけで終わりなんだろうか。

 これは何か裏があると見るべきだな。


「先生。隠し事はお互いに損をするだけだと思います」

「あ~その、な」

「はい」


 ガシガシと(多分頭?)を掻いた先生は大きく息を吐いた。


「まぁどうせ同意書やら何やらあるしな。

 お察しの通り感想を聞くって言うのは建前だ。

 実際にはマシン利用中の脳波を始めとしたバイタルチェックの提出を依頼することになる」

「それってもしかして個人情報保護に抵触しますか?」

「一部な。なので協力してもらう前に照元とご両親には同意書を書いてもらう必要があるし、学校側というか契約先の研究機関に対して知りえた情報を外部に漏らさないっていう契約書を交わすことになる」


 同意書とか契約書とか、ちょっと物々しいって思うけど、今時代は個人の脳波から様々な情報を引き出せたり、某特殊機関は犯罪者の摘発にVRマシンにアクセスした人の情報を利用しているという噂もある。

 例えるなら指紋情報や唾液(DNA情報)を取られるのに近い。

 なので取り扱いは厳重で、あくまで研究の為であってそれ以外には一切使わないし、仮に情報漏洩があったとしても個人を特定できない様に暗号化を施したり不要な情報は削除するという取り決めが行われる。

 と言う話を先日の授業で習った。

 完全に他人事だと思ってたのにまさか自分に来るとは思わなかった。


「契約内容については学校側でも抜け穴が無いかチェックするし、外部機関にも念のため確認してもらう予定だ。

 同意書についても書類を渡してすぐサインしろと迫ることは無いから安心してほしい」

「はい」

「ただVRマシンが授業に導入出来れば照元にも十二分に恩恵があるのは間違いないから出来れば前向きに検討してほしい」

「分かりました。このことを家族に相談しても大丈夫ですか?」

「ああもちろんだ。ただまだクラスメイトやSNSを始めとした外部には漏らさないで欲しい。

 まだ確定した話ではないしな」


 まぁその点はうちの家族は大丈夫だと思う。

 みんな口は堅い方だし他人の噂を言いふらす人は居ない。

 そしてもし普段の授業をVRマシンで受けられるのだとしたら、専用の外部カメラが取り付けられて黒板の板書を見れるようになったりクラスメイトの顔を見れるのかもしれない。

 問題があるとすれば、物理的に僕が教室に居る時間が減ることかな。

 ん? クラスメイトの顔が見れることと、一緒の教室に居られることだと、どっちが良いんだろう。

 顔が見れるって言ってもカメラ越しだし、それなら近くで相手の呼吸を感じられた方が伝わる情報量は多い気がする。

 でもどっちにしても仲良くなれるかどうかは別問題かも知れない。

 ひとまず先生の話は以上だったので、帰路に就いた。


(……)

ちゃ~ちゃ~ららちゃ~ら~ら~♪


 道を歩いてるとほんの数日前までは駅前でうるさいくらいに響いていたクリスマスソングが一切聞こえなくなったことに気付く。

 代わりに聞こえてくるのは「もういくつ寝ると~」というお正月ソングのメロディーだ。

 恐らくは店頭の飾りなんかもサンタから門松などに切り替わっていることだろう。

 ちなみにこの切り替えの早さはゲーム内にも適用されている。

 僕は直接見てはいないけど、冬休み最終日つまり23日の夜にあれだけ沢山あった屋台は終了30分前に閉店セールを開始したかと思えば終了後10分で片付けられてしまったらしいのだ。

 残ったのは一緒になって営業していたプレイヤーの屋台だけ。

 完全に取り残されて物寂し気な様子が配信されていたそうだ。

 そして今日からは年越し&1周年イベントが始まるらしい。

 何とも慌ただしい話だ。

 ゲームにログインした僕は、宿を出てすぐに街の広場に人だかりが出来ているのに気が付いた。

 あ、そうそう。

 広場の中心には優秀作品に選ばれた雪像が展示されている。

 流石選ばれるだけあって精巧な造りだ。

 ただみんなの視線は雪像ではなくその手前にある何かに向けられていた。

 う~ん、ここからじゃ見えないな。

 仕方ないので近くのおじさんに聞いてみることにした。


「あの、何を見てるんですか?」

「教会からの告知だ。

 なんでも今年の新年祭には女神様がお姿を見せてくれるらしい」

「へぇ、それって相当珍しい事ですよね?」

「もちろんだ。前回は確か5年以上前だったかな」


 あれ、意外と頻繁だった。

 てっきり100年に1度とか一生に1度あったら幸運くらいの頻度だと思ってた。

 あ、でもそうか。例の勇者チームも女神と因縁があるような話をしていた。

 つまり彼らも実際に女神に会った事があるんだからそんなに昔である筈がない。

 まぁ今年に限って言えば僕らプレイヤーが居るから、というより運営都合な気がするけど。



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もういくつ寝るとだったか〜 チャルメラの音かと思った〜
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