132.3つ目の支え
僕らの道を塞ぐ巨大な川。
ジャンプして飛び越えるには川幅が広すぎるし泳いで渡る事も多分無理だろう。
だから謎かけを解いて正しい方法で渡る必要があるんだけど。
「4本足の馬に乗って渡るのはどうだろう」
「馬では丸太の上を歩くのは厳しいと思います」
「駄目か」
支えが3つ無いといけないって事はどんなにバランス感覚の良い綱渡りの達人でもゲーム的不思議パワーで落とされてしまうんだろう。
両足で2つなので後1つ。
「このダンジョンが2人用で丸太も2本って事は、2人で協力して渡るってことかな」
「そうだと思います。
……あ、そうか。私分かったかもしれません」
もう分かったのか。流石フォニーだ。
どうするんだろうと続きを待っているとフォニーはアイテムボックスから長さ2メートルくらいの棒を取り出した。
「ラキア君。棒のそっち側を持ってくれますか?」
「うん」
「私が棒の反対側を持った状態で、一緒に橋を渡れば」
「あ。両足と棒の3つで支えられた状態になった!」
慎重に丸太橋に足を踏み出せば、無事に滑り落ちることなく歩いて行ける。
これでこの川はクリアかなと思ったけどそう簡単な話では無かった。
川の真ん中まで来たところで僕達が持っていた棒が真ん中からボキッと折れ、その拍子にフォニーがこっちに倒れてくるのが視えた。
「あぶないっ」
「はい?」
咄嗟に手を伸ばした僕を、何故か何事も無かったように立っているフォニーが見返した。
え、もしかして僕の見間違い?
そう思った次の瞬間、空から雪ではなく氷の塊が降って来て僕らの持っていた棒を叩き折っていった。
フォニーの方に手を伸ばしたことで態勢が崩れていた僕は、その衝撃で更にフォニーの方に身体が傾いていく。
「ラキア君!」
ぱしっ
間一髪、フォニーも手を伸ばして僕の手を取ってくれた。
お陰で丸太から落ちるのは免れたんだけど。
「ありがとう」
「はい。ただ、今のは何だったんですか?」
「僕にもよく分からないんだ。
ひとまず向こう岸まで渡ってから考えようか」
「そうですね」
棒の代わりにフォニーと手を繋ぐことで3つめの支えと認定されたらしく安定して歩くことが出来た。
さっきの氷がまた降ってくるかなって警戒したけど、どうやら1回だけのトラップだったらしい。
対岸に渡った僕らは休憩も兼ねてさっきの現象を確認することにした。
「僕の目には棒が折れてフォニーがこっちに倒れてくる姿が視えたんだ」
「でも実際は棒はまだ折れてなくて、ラキア君が手を伸ばしたところで折れた?」
「うん。そして倒れたのはフォニーじゃなくて僕だった」
言葉にしてみると支離滅裂な状態だ。
僕は幻覚を見る病気にでも罹ったんだろうか。
不安を覚える僕に、フォニーは落ち着いて問いかけた。
「仮にラキア君が何もしてなかったらどうなってたでしょう?」
「何も……つまり声も上げずにフォニーの方に手を伸ばすこともしてなかったら?」
「はい。棒は降ってきた氷で折れて、その衝撃で私はバランスを崩してたかもしれません」
「……僕が視た状態になる?」
「そうです。
つまりラキア君は未来を予見していたのではないでしょうか」
凄い発想だけど、言われると納得できる部分も多い。
モンスターとの戦闘で当たらなくなったのも、数秒後の未来を視ていたからだと考えれば理解できる。
以前は「現在から数秒後に向かう位置」を狙ってたのに「数秒後の未来に居る位置から更に数秒後に向かう位置」を狙ってたら当たるはずがない。
動きを止めたモンスターに当たるのは数秒後も変わらずそこに居るからだ。
「ただちょっと気になるのは、そこまで行くと目が良くなって出来る範疇を超えてると思う」
「そうですけど、ここはゲームの世界ですし、女神様の祝福の力で何とかしてるんじゃないでしょうか。
ちなみに今ラキア君の祝福レベルは幾つですか?」
「あ、それなんだけど」
僕はステータス画面を見せながらトトさんに祝福を預けた件を説明した。
ちなみに現在の祝福レベルは3まで上がっているけどまだまだ低い。
モンスターとの戦闘はそれなりに行ってるのでもっと上がっても良さそうなものだけど。
そんな残念な数値を見てフォニーもジト目だ。
「……ラキア君」
「なに?」
「それってクラスチェンジとか、覚醒イベントの類なんじゃないですか?」
「んん??」
どういうことかと聞いてみると、ゲームによっては職業やスキルが進化することがあるらしい。
そして進化するとレベルは1に戻るけど以前とは比べ物にならない程強力になるとのこと。
「これはもう元の祝福とは全く別のものになったと考えても良いかもしれません」
「そうだったのか」
「あと、このゲームで同じような話は聞いたことが無いです。
そのドラゴンが居たダンジョンは本来ならまだ攻略不可の場所ですし、途中のプロセスを全部飛ばしてしまった可能性もあります」
「その所為で力を上手くコントロール出来てないって話かもしれないな」
「攻撃系の祝福で無いことが幸いですね」
本来ならレベル200で手に入れる力をレベル100で手に入れてしまったら。
身体がその力に耐えられなくて崩壊する、とまでは行かなくとも力の制御が出来ないってことは十分ありえそうだ。
だから意図せず未来を視てしまって混乱していたのか。
「ちなみにその場合の対処法って」
「強くなるしかないと思います」
「そうだよね」
この祝福の力をコントロール出来るようにならないと日常生活にも支障が出てしまう。
せめて他人に迷惑が掛からない様にしよう。
あれ、でもトトさんに預けた祝福は戻ってくるんだよね?
その場合は祝福が2つになるのか合体して更に強くなってしまうのか。
う~ん、それはその時に考えればいっか。
ともかく色々分かってよかった。
僕一人だとなかなかそんな答えには辿り着かなかったし、フォニーが居てくれて良かった。
「よし。ひとまず疑問は晴れたし先に進もう」
「はいっ」
今何とも出来ないことで悩むのはやめる。
今はまずイチゴを収穫して帰ることに専念しよう。




