127.貪欲に食われる人達
掲示板回(簡易版)です。
本当は投稿Noとか投稿者名があった方が、
「え、この人がここでこんな発言を!?」
みたいな繋がりがあって面白いのですがコストが高くて断念しました。
【『貪欲な口』攻略掲示板】
「……」
「……」
「……」
「いや無言やめい。せめて草生やせw」
「第17次攻略隊のドルドルです。何とか脱出成功しました。生き残りは俺だけ><」
「おおっ!」
「遂に生存者が!!」
「生きてたか!!!」
「それで成果は?」
「月光草が3つ。調べたら蘇生薬の材料になるらしい」
「草ってことは第2エリアの地底湖か」
「あそこ草を摘んだ瞬間にミスリル亀達にロックオンされるだろ。
良く生き延びたな」
「あぁ。残りのメンバー28人が文字通り命懸けで時間を稼いでくれた。
彼らの事を俺は忘れない」
「いやいや。死に戻っただけだろうがw」
「そうだけど。やっぱり死んだら装備全損、それまでの拾得物全ロストって厳し過ぎるだろっ。
このダンジョンの仕様考えた奴出て来い!」
「ダンジョン名が『貪欲な口』だからなぁ」
「拾得物全ロストが無かったらゾンビアタックするプレイヤーが続出するだろうからその対策なんだろうな」
「まあなぁ。実際に5回目だっけ。全裸突撃を実行したのは」
「※注意:全裸と言っても半袖短パンスタイルです」
「そして全裸だと基本ワンパンで死ぬのであっさり全滅」
「やっぱり廃都ダンジョンと同じく今はまだ攻略レベルに全然届いてないんだろうな」
「廃都の方は装備もアイテムも失わないのでまだ易しい」
「あのぉ」
「おっ、この初々しさは新たな挑戦者さんかな?」
「あ、はい。つい先日初めてチームで『貪欲な口』にチャレンジしてきたんですけど。(もちろん全滅)
その時にダンジョンから出てきた人とすれ違いましたよ?」
「なに!?」
「その話詳しく!!!」
「すれ違い様に挨拶しただけなんで名前とかも分からないんですが。
男性プレイヤーで1人でした。速度重視の近接職って感じの装備でしたね」
「速度重視。避け専の特殊な祝福持ちか?」
「しかし7回目の挑戦の際にそれ系の祝福持ちに参加してもらったけど、第3エリアの蟻に囲まれて駄目だったんだよな」
「そのすれ違った人は何か拾得したとか言ってた?」
「いやえっと、確か探し物があったとか言ってたような」
「探し物。あのダンジョンは他では手に入らないものだらけっぽいから、その中のどれかまでは特定できんな」
「一番ありそうなのは第2エリアの月光草か?
あそこなら1本だけ摘んでダッシュで逃げ帰ればワンチャン行けるだろう」
「そう思って何度失敗したことか……」
「一度だけ第1エリアまで逃げれた時も道の真ん中に居たジュエルスライム(に擬態したモンスター)に殺されたんだよな」
「あぁ。その教訓のお陰で今回は逃げきれたようなものだ」
「ちなみに月光草のお値段っていくら?」
「失った28人分の装備代より安い」
「おぉぅ」
「でも蘇生薬って希少なんじゃないの?」
「いやそれが安価に手に入る代替品があるから蘇生薬としては基本そっちが使われるらしい」
「つまり骨折り損か」
……
「おいっ、新ネタを仕入れて来たぜ!
以前噂になった1人で潜ってたって奴が判明した」
「おぉ、でかした!」
「それでそれで?」
「まずはこの配信アーカイブを見てくれ」
「(視聴中)……いやいや」
「(視聴中)……うそだろ」
「つまり何か。このモンスターを豆腐のようにスパスパ切れる短剣が手に入るって事?」
「配信内で詳細は明かしてくれてなかったけど、前後の流れからしてそうらしい」
「しっかしこんなマイナー配信を良く見つけたな」
「友人がこいつのファンだった」
「まじかw」
「えぇ~。見た感じやってること普通だし戦闘も単調じゃん。何がいいの?」
「その普通だと思ってた中に突拍子もないのが混ざってるらしい。
だいぶ前に話題になってた薬草園のギミックを見つけたのも彼なんだそうだ」
「あれ?というか彼、秋イベントで有名になった【十六夜】チームのリーダーじゃない?」
「たしかに。トレードマークみたいに肩に乗せてた従魔が居ないから気付かなかった」
「つまり相当な実力者ってことか」
「この地味な戦いも実力を隠してのものって可能性もあるなw」
「……というか、この人。アクティブスキルを使わないのはなんでだ?」
「ん?」
「おりょ?」
「言われてみれば使ってるのは矢の弾道を変えるくらいで、短剣についてはスキル特有のエフェクトが一切出てないな」
「じゃあこの燕返しも背後の敵を3枚おろしにしてるのもスキル無しでやってるのか」
「化け物じゃねぇか」
「この人の実力なら『貪欲な口』でも勝てるのかな」
「いや、それでも無理な方に1票」
「俺も無理だと思う」
「へい。ちょっとひとっ走りして会って来たぜ!
『貪欲な口』の攻略についてアドバイスくださいって土下座したら1つだけ教えてくれたぞ」
「土下座ww」
「ようやるわ」
「それでそれで?」
「『鉱山の町のギルドで相談してみてください』だってよ」
「ギルドって冒険者ギルドだよな。
あそこの受付のオネエサン達怖いんだよなぁ」
「分かる。握手なんてした日には手が握り潰されそうだ」
「ハグされたら背骨が折れるよな」
「そんなお前らに恐ろしい情報を1つ。
どうやらあそこの受付嬢は全員既婚者らしいぞ」
「「旦那は特殊な訓練を受けてるに違いない!」」
「まあ受付嬢の件は良いとして。
何か有益な情報は聞けたのか?」
「いやぁ、それが……」
「焦らすなww」
「『今のあなたでは攻略は無理です。
本気で攻略したいならレベルを100は上げてきてください。
それでもソロでは絶対に無理ですが』」
「100かぁ」
「今って冒険者レベルいくつ?」
「107」
「つまり200は必要って事か。そりゃあっさり負けるわな」
「え、じゃあ【十六夜】の彼はレベル200ってこと?」
「今のレベルキャップ的にそこまで上がらないだろ」
「なら彼はどうやったんだ?」
「一応それも聞いてみた。他人の情報は言えないけどって前置きされつつ。
『ある条件を満たした人は生きて帰れます』
だそうだ。当然俺はその条件を満たしてないらしい」
「……あれ、攻略できるとは言われてない?」
「うん」
「そういえばすれ違った時も彼は攻略はしてないって言ってた気がする」
「攻略してないのにあの短剣を手に入れたの?」
「上手い事、宝箱を見つけたとかか?」
「よし、じゃあ次は途中の素材もモンスターも無視して宝箱を探してみるか」
……
「くっそ。やっと宝箱見つけたのに」
「ミミックじゃねぇか!」
「しかも逃げ帰ろうとしたらモンスターが大挙して道塞いでたな」
「という事は無理して奥まで行っても帰って来れないのか」
「鉱石が掘れそうな場所もあったのになぁ」
「もう一度、例の彼に土下座して攻略手伝って貰う?」
「既にお願いしてみた。そして断られた。
『同じ手は通じないと思うし、今は冬イベントが忙しいから』だって」
「冬イベント。冬イベントかぁ」
「ある程度予想通りと言えばそうなんだけど、俺達には関係ないよなぁ。彼女いないし」
「え?」
「「え??」」




