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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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121/128

121.無茶の代償

 気が付けば目の前に広がる青空。

 あれ、死に戻った時って町の宿とかに飛ばされるんじゃなかったっけ。

 なんで外に居るんだろう。

 あと動けないんだけど。

 状況が掴めないまま、ギリギリ動く首を捻って周囲を確認すると、隣に座っていたフォニーと目が合った。


「えっと、おはよう?」

「!!!」


 僕が挨拶をすると飛び跳ねるように驚き、近くに居たコロンを呼びに行ってしまった。

 そして改めて僕の顔を覗き込む二人。


「ラキア君、痛い所とかは無いですか?」

「生きてるのよね?」

「大丈夫。このゲーム、痛覚は最低限に抑えられてるし。

 それより体が動かないんだけど、僕って今どうなってるのかな」

「フランちゃんの糸でぐるぐる巻きになってます」


 あ、なるほど。それなら動けないのも納得だ。

 まさかボスにやろうと思ってたことを自分がされてるとは思わなかった。

 間違いなくフランがやったんだろうけど。


「それでフランは今どこ?」

「それが……」

「ラキアのすぐ右に居るわ」


 右に? さっき首を回した時は気付かなかったけど。

 改めて右を見てみれば、そこにあったのはフランの形をした石のようなものが、って。

 ようなじゃなくてフランだ。

 表面は乾いた粘土みたいにカサカサになってるし、さっきからピクリとも動かない。


「えっ、フラン。それ無事なの??」


 呼びかけても反応は無い。

 慌ててステータスを確認すると【休眠状態】と表示されていた。

 良かった。少なくとも生きてはいるっぽい。

 でもどうしてこんな状況に?

 ひとまずフォニー達に糸を解いてもらいながら何があったのかを教えて貰う事にした。


「と言ってもラキア君の身に何があったのかは分からないんですけどね」

「そうね。私達が無事に坑道から脱出した後、ラキアに連絡を送っても返事が無くて、フレンドリストを確認したらログアウトした訳でも死に戻り中でも無くて。

 慌てて救助した人達をギルドに預けて戻ってきたら坑道の入口にラキアとフランがこの状態で倒れていたのを発見して今に至るって感じよ」


 なるほど。

 とりあえず救助した人達は無事のようだ。


「逆にラキアはどこまで覚えてるの?」

「えっと、ふたりと分かれた後はそのままボスモンスターを引き連れて奥に進んで。

 でもある程度行ったところで他のモンスターに道を塞がれたから、倒せないまでもフランの糸で拘束して逃げようとしたんだけど失敗して。

 クリティカルな1撃を受けて意識を失って、気が付いたら今って感じ」


 お互いの話を照らし合わせても僕が気を失った後の空白の時間に何があったのかは分からないな。

 ただ確かなことは1つ。


「間違いなくフランが何か無理をして助けてくれたんだろうね」

「はい。カート達もそうだろうって頷いてます」

「みっちゃん達にも聞いてみたけど、こんな症状は他の従魔では確認されてないわ」

「じゃあ知ってそうな人に聞きに行くしかないか」


 幸い従魔の事ならこの人。っていう当てがあって良かった。

 今すぐにその人の所に行きたいけどその前に1つやることがある。

 無事に糸から解放された僕は改めてフォニーとコロンに頭を下げた。


「ご心配をお掛けしました」

「はい」

「(ぺしっ)あんまり一人で無茶しないように」


 僕の謝罪にフォニーは静かに頷き、コロンは僕にチョップを入れながら許してくれた。


「今後はラキアが無茶しそうになったらこの糸で縛ろうかしら」

「それは名案ですね」


 にこにこと笑いあう二人。

 いや、これ許してくれてるのかな?

 どことなく目が本気なんだけど。

 こういう時は逃げるに限る。


「よし、じゃあ僕はひとっ走りして妖精女王にフランの治療を頼めないか聞いて来るよ」

「はい。クエストの後処理はやっておきますね」


 ふたりに見送られながら僕は王都に飛び花畑経由で妖精の国へと移動した。

 突然来ちゃったけどアポなしでも大丈夫だったかな?

 などという心配は杞憂ですんなりと女王様への謁見が許された。


「これはまた無茶をさせたようですね」


 女王様はフランの様子を見てすぐに大体の事情を把握したようだ。


「従魔は限界を超えて力を使うと稀にこのような状態になります。

 あなたを死地から救い出す為にはこうするより他無かったのでしょう」

「それで治せそうですか?」

「残念ながら無理ね」


 僕の問いにあっさりと首を横に振る女王様。


「その子が自力で目を覚ますまで待つしかないわ」

「待っていれば起きる?」

「ええ。ただどれくらいで起きるかは現時点では分からないわ。

 だから目覚めるまでの間はこちらで預かりましょう」

「えっ、僕がずっと面倒を見るじゃダメですか?」


 こうなってしまった原因は僕だし、出来ることなら僕が看病したいと思うのだけど。

 しかしこれもまた女王様は首を横に振った。


「駄目よ。その状態で更に致命的なダメージを受ければそれこそ目覚めない可能性があるし、その子もあなたの足手まといにはなりたくないでしょう。

 それに、あなたはその子が眠っている間にやらなければならない事があるわ」

「やらなければならない事?」

「強くなりなさい。

 少なくともその子がそうなった原因を取り除けるくらいには」

「!!」


 そうか。

 もし今フランが目覚めてもまた同じことの繰り返しになる危険がある。

 この先間違いなくモンスターは強くなるだろうし、いつか今回のあのボスモンスターが量産型の雑魚モンスターとして大量発生する未来もあるかもしれない。

 その時にフランを守り切れる強さを手に入れないと。


「あの、今回戦ったモンスターは『まこうせい』だったらしいのです。

 僕らでは手も足も出なかったのですが、どうすれば勝てたのでしょうか」

「あぁあの面倒な金属ね。

 なるほどそれなら今のあなたでは勝てないわね」


 妖精の女王をして面倒と言わせる金属。

 いやでも面倒ってことは対処法はやっぱりあるのかな。


「あの金属は打撃も斬撃も通らず、魔法もほとんど効かないわ。

 でも属性的に弱点がない訳じゃない。

 その弱点を突くか、そんなの関係なしに倒せるようになるか。

 私から言えるのはここまでね」


 流石に何でもかんでも教えて貰える訳じゃない、か。

 それにあのボスに勝てたとしても他にも強敵や難敵は居る。

 もちろん僕一人でそれら全部に勝てる必要は無いかもだけど、せめて退けて逃げ切れるだけの強さは身に着けよう。


「ありがとうございます。

 ではフランのこと、よろしくお願いします」

「ええ。目が覚めそうな兆候があったら連絡するわ」


 僕はフランを女王様に預け、その場を辞することにした。

 帰り道、妖精の国の広場に目をやれば獣魔と戯れるプレイヤーの姿がちらほらとあった。

 あれはたしか先日の打ち上げに参加してた人たちだ。

 無事にここに来る方法を見つけられたらしい。

 そしてフォニー達の元に戻った僕はフランの事を伝え1つ宣言することにした。


「これから僕はあのボスを倒せるくらいには強くなろうと思う」

「はい!」

「具体的にはどうするの?」

「そこはまだノープラン。

 まずは短剣が1本折れてしまったから新しい武器、それこそあのボスにダメージを与えられるものを手に入れることからスタートかな」


 一瞬、勇者チームとの修業クエストが頭を過ったけど、暗殺者としての技を磨いてもあのボスには勝てないと思うからパス。

 それよりも『視力』を磨いて敵の弱点や次の行動、更には思考まで視通せるようにならないかなって思う。

 そこまで行くと『視力』なのか分からないけどやれる事はやってみよう。



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― 新着の感想 ―
フランのためにも強くなろう!!頑張って!
(MMOでメタキャラに勝てないから実力不足、は普通にバランスアレよねって思うけどまぁメタ対策持つのも実力といや実力か。MMOとしちゃアレだけど。
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