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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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119/128

119.チームの優先順位

 僕達3人は問題の坑道前に到着した。

 そこには僕達以外のプレイヤーの姿も多数あって彼らも緊急クエストとして救助に乗り出してくれたみたいだ。

 これなら救助の成功率も高くなるかもしれない。

 早速僕らも中に突入しよう。

 そう思ったところで横から声を掛けられた。


「なああんたら。先日の武闘大会に出てた人だよな。

 確かチーム『十六夜』」


 声を掛けてきたのは20代後半くらいの見た目の男性プレイヤー5人組。

 僕の記憶が確かなら過去に会った事は無い。

 まぁこの言い方からして武闘大会を見て一方的に僕らを知った感じかな。

 雰囲気からして決闘の申し込みとかでは無さそうだけど。


「そうですけど、何か御用ですか?」

「さっき発表された救助依頼で行くんだよな。良かったら俺達も一緒に行っていいか?

 もちろん邪魔はしないから」


 僕としては同行者が多い方が楽に進めるかなって思うのだけどふたりはどうだろう。

 ちらりとコロンを見ると、コロンは特に興味は無い感じ。

 またフォニーも「ラキア君にお任せします」と目が言っている。

 今のところ彼らからコロン達に邪な視線は感じないし大丈夫かな。


「分かりました。ただ僕らは救助最優先ですので道中の戦闘は極力避けて行きます」

「分かった」


 そんな訳で急遽8人パーティーになった僕らは改めて坑道の中へと入った。

 坑道の中はランタンが壁に掛けてあるので意外と明るい。

 ただそれでも道は真っすぐではないので奥までは見通せない。

 急いで行けば出会い頭にモンスターと激突、なんてこともあるだろう。

 そして早速分かれ道だ。

 どっちに進むのが正解か。


「ラキア君。ここは任せてください」


 フォニーが一歩前に出ながら穴の開いた瓢箪のようなものを取り出した。

 それの端を加えて息を吹き込むとボーーッという低い音が響いた。どうやら笛の一種らしい。

 どういう効果があったのかは分からないけどフォニーは1つ頷くと左の道を示した。


「こっちの道の方がモンスターが少ないです」

「よし行こう」


 フォニーの言葉を信じて先に進むと、なるほどモンスターが少ない。

 居ても1体2体なので倒すことなくその脇をすり抜けて奥に進める。

 しかし流石モンスター大量発生というだけあって、ずっとその調子とは行かなかった。


「すみません。どっちに行ってもそれなりの数のモンスターが居そうです」

「ここまででも十分助かったし気にしないで。

 どっちも一緒なら最短ルートを進もう」


 ギルドで見せて貰った地図とここまで通ってきた道を照らし合わせて現在位置を把握。

 若干横に逸れてるけど、それでもモンスターを討伐しながらより余程早く先に進めただろう。

 そして僕達の道を塞ぐように現れた表面が赤錆びたゴーレム達。


「じゃあ今度は私が出るわ。

 見た感じ採石場のモンスターと同じで行けそうね」


 いつもの大楯を構えながらコロンが前に出る。

 そしてモンスターの動きに合わせるように盾を突き出し。


「『シールドバッシュ』!」

ガィンッ!


 重い金属同士がぶつかった音を響かせながらモンスターを吹き飛ばしていた。

 体重は明らかに向こうが上なのに相変わらずコロンは余裕でその場に残っている。

 物理法則どうなってるの?

 続いてフォニーが両手にスティックを持ってモンスターに襲い掛かった。


キンコンカンキン♪

(ドカバキャッ)


 音は鉄琴のようだけど、実際にはモンスターの身体が内側から粉砕されていく。

 あれ人間が食らったら内臓破裂してスプラッタになるだろうなぁ。

 敵が弱いのかふたりが強いのか、これならそれほど時間も掛からず突破できそうだ。

 などと油断していたのが悪かったのだろう。


「Tiiii」

「なっ」


 脇の小道からアルマジロのような小型のモンスターが飛び出してきた。

 慌てて短剣を構えるも受けるのが精一杯か。


バキッ!

「げっ。ぐふっ」

「ラキア君!」


 受けた短剣が根元から折れた。

 小型と言っても重量はかなりのものだったらしい。

 そのまま僕は体当たりをくらい吹き飛ばされてしまった。

 慌てて戻ってきたフォニーがモンスターを倒してくれたから良かったけど、1人だったら追撃食らってピンチだったな。


「ごめん、油断してた」

「怪我はありませんか?」

「うん。ありがとう」


 フォニーの手を借りて立ち上がれば正面のモンスターはコロン1人で殲滅し終えていた。

 なら先を急ごう。

 再びフォニーに先導してもらいつつ出来るだけ早く先に行けるルートを選択していると後ろからひそひそ声が聞こえて来た。


(なあ、さっきのってそういうことだよな)

(今のところ何の役にも立ってないし完全お荷物)

(あのモンスターなら俺でも勝てたぞ)

(噂では拘束系のスキル持ちって話だったけど、ここのモンスターには効かないだろうな)


 多分僕の事かな。

 僕ら3人の中では打撃力とか破壊力では僕が一番弱いし、今役に立っていないのも事実だ。

 だから陰口を叩かれるのは別に気にしない。

 ただ一緒に行くことになった5人はさっきの戦いにも積極的に参戦しようとはしなかったし、本当にただ付いて来るだけなんだろうか。

 まあ後ろからの襲撃に備えてくれるだけでも助かるし、本番は要救助者と合流してからだからそれまで体力を温存しててくれるのも良いことだろう。

 続いて現れたモンスターは幸い小型ばかりで道を塞ぐ程ではない。

 なら倒す必要は無いか。

 僕はそう思ったのだけど後ろの人達は違ったようだ。


「おい、あれジュエルスライムだ!」

「うひょお~超レアモンスターじゃないか」


 モンスターの1体を指差して色めき立つ。

 今度は嬉々として武器を構えて戦う気満々だ。

 でも今はそんなことをしてる場合じゃない。


「えっと、先を急ぎますよ?」

「え、倒していかないのか!?」

「はい。幸い横をすり抜けられそうですから」

「「……」」


 僕の返事を聞いて顔を見合わせている。

 何か悩むことがあったかな?

 と思ってたらコロンにくいっと袖を引かれた。


「ラキア、彼らを待つ必要は無い。先を急がないと」

「あ、うん。だね。

 すみません、僕らは先を急ぐので、あのモンスターを倒したいのであればパーティーはここで解散で良いですか?」

「あーそうだな。身勝手で済まないがそれで頼む。

 しかし本当に」

「はい。じゃあまたどこかで!」


 何か話が長くなりそうな予感がしたので、途中で切り上げてさっさと進むことにした。

 そんな僕らの背中を見送った彼らの視線は冷ややかだった。


「こんな一獲千金のチャンスを捨てるなんて戦闘力だけじゃなく判断力まで残念なんだな」

「付き合わされてる彼女たちが可哀そうだ」

「何か弱味でも握られてるんだろうか」

「あれを見てるとあいつを引退に追い込んで女性2人を解放しようっていう奴らの気持ちが分かるな」

「あぁ。っと、それより逃げられる前にジュエルスライムを倒すぞ」


 その後、彼らがどうなったのかは分からない。

 ただ確かなことは僕らの判断は決して間違っていなかったという事だ。

 その証拠に僕らが目標の休憩所前に到着したのと、その休憩所の扉がモンスターによって破壊されたのがほぼ同時だった。

 もしあのモンスターを狙ってたら救助が間に合わなくなっていただろう。



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