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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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117/128

117.勇者チームの狙い

 そこからの道中も何故か罠が幾つも用意されていた。

 馬で走ってたら丁度首のあたりに引っかかるような糸が張られていたり。

 馬から降りて歩いてみたら落とし穴が掘られていたり、トラバサミが仕掛けられたり。


「王都から先の道って罠満載なんですか?」

『ないない』

『そんな訳ない』

『ダンジョンじゃあるまいし』


 ということは悪意ある誰かの嫌がらせか。

 僕を狙ってるって事は新手のPKプレイヤーかもしれない。

 でもそれにしてはそれらしい人影がないんだよね。

 少し離れた所でモンスターと戦ってる人は居るけど、僕には見向きもしないし罠を誤作動させても無反応だ。

 うーん、これが鉱山の町までずっと続くとなるとちょっと面倒だな。

 よし、なら一芝居打つか。


「フラン。ここをこうして……」

(くすくすっ)


 フランに耳打ちで作戦を伝え周囲の罠を確認する。

 というか、ざっと見て10個も罠が仕掛けてあるんだけど。いったいいつ仕掛けたんだろう。

 その10個の中から使えそうなものを見つけた。

 それは手前に分かりやすい罠が仕掛けてあって、それを飛び越えたら次の罠が発動するというもの。

 僕は敢えてその仕掛けに引っかかることにした。


バサッ!

「うわっ」


 情けない声を上げつつ網に捕まって木に宙づりにされる僕。

 そしてそれ程間を置かずに一人の男が姿を現した。木の中から。

 どうやら予め幹を掘りぬいて中に入り、木の蓋をすることで僕の視界に入らないようにしていたらしい。

 僕の視力では壁の中までは透視出来ないから分からなかった。

 今度どうにかならないか研究してみよう。

 そしてその男は僕のすぐ下まで来ると顎に手を当てながら僕を見上げた。


「ふむ。ここまでの罠を避けて来れたのは及第点を与えても良いが、まだまだ詰めが甘い」


 そう評価したその男、勇者チームの僕を攻撃してきた人だ。

 もしかしてあの時の事を根に持ってたんだろうか。

 でも相変わらず殺気の様なものは無いな。

 単純に僕の技量を見たかったの? 何のために?


「えっとあなたは……」

「そういえば名乗ってなかったな。俺の名はシェイド。

 今は勇者チームで斥候の様な事をしている」

「てっきり暗殺者なのかと思ってました」

「ふっ、そちらは少し前に足を洗った」


 ということは本当に暗殺者だったのか。

 それがなぜ冒険者をやってるのかは、まぁ個人の事情か。


「見上げながら話をするのは大変でしょうから降りますね」

「いやその網はそう簡単に切れるものでは無いが。いや待てまさか」

「よっ」


 シェイドさんが止める間もなく僕は網を解除して地上に降りた。

 なにせこの網はフランの糸で似せて作っただけのものだったからフランに一声掛ければあっさり解除できる。

 さっきは罠にかかった振りをしていただけなのだ。


「くくく、まさか俺がそんな単純な手に引っかかるとはな」

「僕が格下だと油断した所為じゃないですか?」

「まったくだ。俺もまだまだ修行が足りんな」


 僕の言葉に楽しそうに同意するシェイドさん。

 かと思えば同じ笑顔でもどこか残忍な笑みを浮かべて続けた。


「しかしこれは予想以上に鍛え甲斐がありそうだ。

 お前なら俺を超える暗殺者にもなれるだろう」

「いやなる気ありませんけど!?」


 これってあれか。

 運営が言ってた修業クエスト。

 なら今頃フォニーやコロンの所にも勇者チームの誰かが行ってるのかもしれない。

 トッププレイヤーの人達なら垂涎もののイベントなんだろうけど生憎僕は興味ない。


「そもそも暗殺者になって誰を殺すんですか?」

「そんなの決まっているだろう。この世界で打倒すべきは奴ただ一人!」


 まるで親の仇のように憎悪を燃やして語るシェイドさん。

 その相手っていったい誰なんだろう。

 僕に暗殺者になれって言ってるって事は僕にも関係がある人?

 それでいてシェイドさん自身で暗殺出来ない程の相手。

 もしかして勇者?

 いや、あの勇者なら寝込みを襲うとか食事に毒を仕込むとか色々方法はある気がする。

 ならもっと凄い存在か。

 勇者すらも手が出せないような相手とか?

 そのうえで1人だけと限定出来る相手となると……居た。

 え、そうなの?


「じゃあもしかして、武闘大会の騒動の犯人は勇者チーム?」

「ふっ」


 意味ありげに笑うシェイドさん。つまり当たりだ。

 あの事件は誰かが事前に闘技場地下にモンスターを配置していた筈なんだけどその黒幕は最後まで姿を現さなかった。

 だからそういうイベントだったのだろうと単純に思ってたけど、実は堂々とみんなの前に居たらしい。


「シェイドさんはそのめ、いやそのヒトに何をされたんですか?」

「命より大事にしていたものを奪われたのだ。俺だけじゃなく勇者チーム全員そうだ」


 その名前を口に出すなと目で制されたので言い直しつつ聞けば過去に何かがあったらしい。

 確かに神と呼ばれる相手なら今この瞬間も監視していても不思議ではないか。


「奴を打倒し奪われたものを取り返すために。

 なにより新たな犠牲者を出さない為にもお前たちを鍛えねばならん」


 どうやら単純に自分たちの復讐の道具にしたいって訳じゃないみたいだけど、だからと言って『はい分かりました。今後はその為だけに頑張ります』とはならない。

 僕達には僕達のやりたいことがあるし、そもそもまだ暗殺したいと思う程の何かをされた訳でも無い。

 僕の表情を見てそれが理解できる程度にはシェイドさんはまだ冷静なようだ。


「納得出来ぬまま修業をさせられても身が入らぬか。

 よし、ならばまず世界各地の聖域を訪ね伝承を聞いて回るのだ。

 真実を知ればお前も俺の言ってる事が理解できるはずだ。

 その過程で基礎能力の向上も見込めるだろう。

 では励むのだぞ」


 一方的に言いたい事を言って去って行ってしまった。

 僕はやるとは一言も言ってないんだけど。

 あと周辺の罠を解除して行ってほしい。これ後から通る人が迷惑する奴。

 もしかしてシェイドさんって片付けが出来ない人だな?


「はぁ」


 仕方ないので目についた罠は全部僕の方で解除しておこう。

 ついでなので罠の構造を覚えておけばどこかで役に立つかもしれないし。

 それとフォニーとコロンにも連絡を取っておかないと。


『フォニー、コロン。そっちに勇者チームの人が来てたりしない?』

『来ました。モンクのボーグさんがやって来て弟子になれって言われました。断りましたけど』

『こっちにも来たわ。バルスっていう頭のいかれた魔女。

 突然魔法を連射されて驚いたわ』


 シェイドさんが言ってた通り二人の所にも来てたか。

 あと現れてないのは勇者本人。イベントを進めると出てくるのかな。

 ともかく無事でよかった。

 一方、僕の配信を観てくれてる人はと言えば。


『あ、音声正常に戻った』

『さっきのって勇者チームの人ですよね。会話の内容が一切聞こえなかったんですが何話してたんですか?』


 どうやらネタバレ防止の為に自動でミュートになってたらしい。

 そう言う事なら僕からも話すべきでは無さそうだ。


「簡単に言うと世界各地を巡って強くなれってことらしいです」


 その結果女神と敵対することになるのか、それとも女神の味方として勇者と戦うことになるのか。

 どちらにしても中々に大変そうだ。



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