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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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111/128

111.観客Aは観た!

<観客視点>


 武闘大会()日目。今日はプレイヤー主体の団体戦だ。

 え、大会は2日間じゃないのかって?

 実はそうじゃないんだな。

 昨日のプレイヤー主体の個人戦。

 さらに一昨日は現地冒険者主体の大会が行われていたのさ。

 その1日目に開会式とかオープニングセレモニーが行われていたけど、それらがあった事を知らないプレイヤーも多い。


 まぁそれはさておき今日の団体戦だ。

 注目株はもちろん有名なトップ攻略チームだけど、今回はもう1チーム。

 昨日のNPC最強冒険者チームに目を付けられた3人。

 その3人が急遽結成したチームが大会に参加するという。

 あ、3人のうち2人は結構名の知れたプレイヤーだ。

 【打鬼】フォニー。無言で敵を殴打し続ける女性プレイヤー。その戦う姿はまさに鬼のごとし。

 【鉄壁】コロン。常に小柄な体を大楯で隠していた女性プレイヤー。元『電光石火』チームの盾アタッカー。

 そしてもう1人の男性プレイヤーの名はラキア。彼の事はよく分かっていない。

 最近配信もしているようだが視聴者も100人程度の底辺配信者だ。

 チーム結成が昨日だからその後すぐに大会に参加することが決まったらしい。

 いや募集期間はとうに過ぎてるのにどうやって捻じ込んだ?

 実は国の上層部とも繋がりを持っているのだろうか。


「謎過ぎる」


 そのチームが予選第1試合に登場した。

 残りのチームは、まあ中堅どころのチームだな。

 さてどういう戦い方をするのか。

 普通に考えれば【鉄壁】を前面に出して【打鬼】が遊撃、ラキアが支援か遠距離攻撃を行うって流れだろう。


「え、横並び?」


 てっきり【鉄壁】が前に立つのだと思ってたのに、ラキアを中央に左右に【鉄壁】と【打鬼】がちょっと距離を空けて立っている。

 ということはラキアも近距離アタッカーなのか?

 まあそれは始まってみれば分かる。


『それでは団体戦予選第1試合。始め!』


 開始の合図と共にラキアだけが前に出た。

 その瞬間、他チームの視線が釘付けになったのが観客席からでも分かった。

 同時に【鉄壁】と【打鬼】が左右に分かれて走り出した。なのに誰もそっちには目を向けない。

 いったいなぜ?

 まるで魅了に掛ったように全員が盲目的にラキアに向かって行く。

 そう盲目的に。

 もっと回り込んで囲めば良いのに、他の人が見えていないかのように真っすぐ向かおうとするので渋滞が起きている。


(やはりそういうスキル、いや女神の祝福か?)


 そして隙だらけの相手チームの後ろに回り込んだ【鉄壁】と【打鬼】がリーダーの後頭部を棍棒と盾で殴打していく。威力は前評判通りで無防備に急所に受けてるから致命傷だ。

 いやなぜ誰も気付かない。足音や打撃音で普通気付くだろう。

 あれ、そういえば打撃音は?

 ゲームだからリアルよりも派手な音が響く筈だけど。

 驚いている間に試合は終わってしまった。

 結果を見れば圧勝。何が起きたのかはまるで分らなかったが。

 掲示板とかを見れば考察好きな奴らがあれこれ書き込んでくれるだろう。

 ラキアについて紹介している記事とかも探してみるかな。

 それらを眺めている間に予選は無事に終わった。

 勝ち上がったのは、半分以上は予定通り。

 でも残りは弱小チームが協力して強豪チームを集中攻撃した後に泥仕合をして勝者が決まった形だ。

 正直がっかりだ。

 もし例のチームが決勝トーナメントでその弱小チームばかりに当たって勝ち上がったら目も当てられない。

 などという心配は杞憂だった。


「これは、なかなか」


 決勝トーナメント1回戦第1試合。

 『電光石火』vs『十六夜』


「いやこれ実質決勝戦じゃないのか?」


 そんな声も聞こえてくる。

 俺も結構ワクワクしている。

 調べてみたらラキア達は以前から『電光石火』と懇意にしていたらしいし、【鉄壁】は元『電光石火』メンバーだ。

 もし【鉄壁】を強引に引き抜いたのなら因縁の対決なのかもしれない。

 ただ3対6では『十六夜』チームに勝ち目はないか。


「って流石『電光石火』。粋なことをする」


 ステージ上では『電光石火』の中で3人だけが前に出て残りは自分からステージ外に出てしまった。

 大会ルールで場外は失格だ。

 つまり3対3の対等な状態で戦おうと言ってるんだ。

 更にそれぞれ間隔を空けて立っている。タイマンしようぜって事か。

 対する『十六夜』もそれに応えるようにそれぞれ分かれた。

 【打鬼】が『電光石火』リーダー【雷電】のハルトの正面に立った。

 【鉄壁】の相手は大槌使い【粉砕】のガッツン。矛盾ではないけど相性はどうなんだこれ。

 そしてラキアの相手はあの【疾風】のミッチャー。

 【疾風】は『電光石火』チームの中でも最強最速のアタッカーだ。


「これほかの2人が戦い始める前に終わる可能性もあるな」


 【疾風】には出来れば少し待ってから戦い始めて欲しいところだけど。

 審判がステージ上に上がった。

 さ、集中して観戦させてもらおう。


『団体戦決勝トーナメント1回戦第1試合。始め!』

「ふっ!」


 開始の合図と共に疾風どころか光の速さで攻撃を仕掛ける【疾風】。

 一瞬でラキアの後ろに回り込んで膝下からの切り上げ。

 あれは防ぐのは難しいぞって防げるのか!

 【疾風】も防がれるのが当然とばかりに一切驚かず追撃を行っていくがラキアは全て防ぎ切った。

 あいつは背中に目でも付いてるのか??

 ようやく他のメンバーが衝突した時には既に10回くらい切り結んでるし。


(俺がラキアだったら切られた事すら気付かずに死んでたな)


 でも今のところラキアからは手を出していない。

 攻撃が苦手なのか?それとも攻撃に転じる余裕が無いだけか。


(って【疾風】の動きが止まった!?)


 まるで手足を糸で縛られたかのように不自然なタイミングで【疾風】が固まった。

 そこにようやくラキアが反撃。

 動けない【疾風】の心臓に短剣が振り下ろされる。


 【疾風】万事休す。


 なんてことはなく、すぐに自由を取り戻した【疾風】は慌てて距離を取った。


「「はぁ~~~」」


 やべぇ、息止まってた。

 まったく観てるこっちがハラハラする。

 今って戦闘開始から何分経った? え、まだたった15秒!?

 てっきり5分くらい経ったんじゃないかってボリュームなんだが。

 他の2組なんてやっと本格的に戦い始めたところだぞ。

 いやそっちもそっちで迫力がある。

 大楯と大槌のぶつかり合いは爆撃のような轟音を何度も響かせている。

 【粉砕】の攻撃を防ぐとは流石【鉄壁】の二つ名は伊達じゃない。

 おっ【鉄壁】のシールドバッシュに【粉砕】が3メートル吹き飛ばされた。

 お返しに空いた距離で助走を付けて【粉砕】のジャンピングストンプ!

 リアルなら絶対盾を持つ腕が折れてるぞ。

 一進一退の攻防と言いたいところだけど、若干大槌が勝っているか?

 【打鬼】とハルトの戦いは魔法剣士どうしの戦いのお手本のようだ。

 まあ【打鬼】が使ってるのは剣じゃなくて棒状の武器だけど。

 武器どうし、スキルどうしが激しく火花を立ててぶつかり合う。


(ただこれは、【打鬼】に勝ち目はないな)


 残念ながら地力が違う。

 トップ攻略プレイヤーは伊達ではない。

 冒険者レベル、スキルレベル共に【打鬼】よりハルトの方が上だろう。

 チーム戦なのだから他の2人がサポートに回って3対1なら勝ち目もありそうだけど、その2人だって余裕はない。

 って、ラキアが【疾風】の連撃を受けて吹き飛ばされた!

 その吹き飛ばされた先にはハルトが剣に雷撃を纏わせて【打鬼】に切り掛かる所だ。


「あっ」

「あ……」


 驚いたハルトがその剣をラキアへと振り下ろした。

 これによりラキアは退場。リーダーが負けたので『十六夜』チームの負けだ。

 何とも言えない結末にもやもやするが、団体戦ならこういう事もあるか。

 その後も第2試合、第3試合と続くけど、やっぱり初戦の見応えがあり過ぎたな。

 結局、『電光石火』チームが決勝まで勝ち上がった。

 さて最後はどっちが勝つか。


(ん?)


 なんだろう。地面が揺れてるような。地震?

 それに空が曇って来たな。大会終わるまで雨が降らなければ良いけど。



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