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11.一緒に頑張ろう?

「あーいーうーえーおー」

「あーひーうーへーおー」

「いー」

「いー」

「えー」

「えー」


 僕とフォニーは母音の発声練習からスタートした。

 それと一緒にスケッチブックにはひらがなを書き並べて今発声している音を指さしながら確認。

 これは僕のひらがなの復習でもある。


「じゃあ次は、あーえーいーうーえーおーあーおー」

「あーえーいーうーえーおーあーおー」

「そう上手上手」

いま言葉ことばなに?』

「今のは、口の動きが大きくなる並びなんだって」


 フォニーにはスケッチブックに漢字を書くときにはフリガナを振ってもらう事にした。

 僕は漢字そのものは分からなくても日本語は分かるから、例えば『今』って言う漢字に『いま』って書いてもらえば『今』なのか『居間』なのかは判別できる。

 お陰で思ったより早く漢字が習得できそうだ。


「いま?」

「うん。『いま、の、ことば、は、なに』だね」

「いまおこおあああに」

「うんうん。ちょっとずつ言えるようになってるね」


 そして書いてもらった言葉を僕が口に出して読んで、フォニーも文字を音として覚えながら一緒に発声練習を繰り返す。

 まだ子音が怪しいけど少しずつ練習していけばいいだろう。

 幸い僕たちに急いで修得しないといけない理由は無い。

 それに前進している手ごたえはあるので辛いと思う事もない。

 あとVRだから声を出し続けても喉が枯れる心配が無いのも助かる。

 そうして1時間ほど発声練習と漢字の読みの練習をしたところで休憩することにした。


『少し身体も動かしましょうか』

「そうだね。何しようか」

『ゲームですしモンスター狩りに行きましょう』

「え、あ、そうだね」


 ちょっと意外で驚いてしまった。

 フォニーの第1印象は公園でのんびり歌を歌ってる文学系少女って感じだった。

 そのフォニーからモンスター狩りなんて言葉が出てくるなんて。


『ラキア君ってレベルいくつですか?』

「まだ2だよ」

『ふむふむ』


 歩きながらスケッチブックで会話。

 フォニーは長文や難しい漢字は使わないように気を使ってくれてる気がする。

 そのことに内心感謝を送りつつ、冒険者ギルドに適当な依頼が無いか確認しに来た。

 ギルドでの依頼の確認方法は3つ。

 1つは受付に直接聞くこと。2つ目は壁に掛けてある掲示板に張り出されてる依頼書を見ること。3つ目はゲームメニューを表示してチェックすること。

 大体の人は3のメニュー画面操作でササっと終わらせてしまう。

 ロールプレイがしたい人は2の掲示板の前に立って「どれが良いだろうか~」と仲間と相談している。

 そして僕の場合はまだ漢字が読めないので2と3は選べないから受付に直行だ。


「こんにちは、フェルトさん」

「いらっしゃいませラキア様。フォニー様もようこそ」

『こくり』


 どうやらフェルトさんはフォニーの事も知っているらしい。

 仕事のできるお姉さんって感じの人だしもしかしたら冒険者登録している人全員を覚えてるのかも。

 対するフォニーは半分僕の後ろに隠れながら頷いて返事をしている。

 人見知り? だったら僕の時もそういう反応してたよね。

 そうじゃないならこれは自分が話せない事にこの世界の人がどう反応するのか分からなくて警戒してるって所だろうか。

 そういう事なら僕が応対した方が良さそうだな。


「僕ら2人でモンスター討伐に行きたいんですけど、手頃な依頼ってありますか?」

「そうですねぇ。おふたりですと難易度の調整が難しいのですが……」


 即席の新人パーティーとなると紹介出来るクエストも限られるようだ。

 僕一人なら『視力』を使って何かを探すクエストなんかが良いんだろうけど、それだとフォニーがただ付いて来るだけになってしまう。

 逆にフォニーの得意分野を活かすようなクエストの場合、って僕まだフォニーが何が得意なのか知らないや。

 でも自分からモンスター退治に行こうって言うくらいだから自衛出来るくらいには強いはず。


「ならフォニーに合わせてもらえれば良いですよ」

「ほ、本当によろしいのですか?

 では、うーん、クマハチの討伐および蜜の採取依頼。こちらで如何でしょうか」

「はい。フォニーどう?」

『大丈夫』

「ならそれでお願いします」

「畏まりました。ただ決して無理はなさらないように。

 フォニー様。どうぞよろしくお願いいたします」

『任せて』


 ピッと親指を立てて頷くフォニー。気合が入ったその姿はちょっと格好いい。

 無事に依頼を受理した僕たちは街の外を目指して、ではなく、先にフォニーの先導でペットショップへと来ていた。

 モンスター蔓延るこの世界でペット?と思ったけどどうやら愛玩用ではないみたい。


『クマハチミツがれる場所ばしょまでは距離きょりがあるからあるきじゃ大変たいへんです』

「なるほど。騎乗用ってことか」


 僕の視線の先には毛色の違う3頭の馬が並んでいた。

 そしてそれぞれの足元に値札が付いている。


『レンタル:10,000ジェニー。購入:100,000ジェニー』


 い、一万ジェニー!?

 いや馬をレンタルするのに1万円って考えれば安い気もするんだけどね!!

 ちなみにいちばん高いのだと更に桁が1つ増えていた。


「ごめん、フォニー。僕お金持ってない」


 ちなみに現在の所持金は320ジェニーです。

 昨日のモンスター退治と薬草の売却で得たお金から宿代と消耗品の補充分を差し引いたらこれしか残っていない。

 とてもではないが1万ジェニーなんて払えない。

 でもフォニーにはお見通しだったみたいだ。


『問題ない。ここは私が払います』

「え、でも」

『今回のクエスト報酬でちゃんと元は取れますよ』

「そういう事なら、帰ってきたらちゃんと返すね」


 そういえばクエストの内容をよく確認してなかった。

 今回の報酬とかいくらだろう。


『クマハチミツの採取依頼。

クエスト難度:☆☆☆☆

採取報酬:100g 5000ジェニー(最大10kgまで買い取り)

討伐報酬:クマハチ1頭 1万5000ジェニー』


 ハチミツ高っ!?

 あ、いや待って。確かリアルでも上質なハチミツって100g千円以上するんだから、それにちょっとブランドが入ったと考えればぼったくり価格ではないのか。

 そして200gも採れれば十分採算は合う計算だ。

 更にモンスター討伐の報酬も上乗せとなれば凄い儲けだ。

 って、あれ?

 こんな凄い報酬のクエストって始めたての僕が受けられるものなのかな。



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