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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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107/128

107.個人戦決勝トーナメント

 僕らが会場内に目を光らせている間に予選は無事に終了した。

 何事も無くて良かったと胸をなでおろすべきか、この緊張がまだ続くのかと考えるべきか。

 正直いつ起きるかも分からないものを待ち続けるのはしんどいんだけど。


「ラキア。何かが起きるとしたら明日の団体戦の決勝戦後よ」

「え、そうなの?」


 気を張る僕を見かねてコロンがそう指摘してきた。

 どこからそんな情報が?

 もしかして何か見落としていただろうか。


「だってそれで試合が中断されて優勝者がうやむやになったら抗議が殺到するでしょ?」

「あ、言われてみれば」


 確かに元々この秋イベントの花形というべきものが武闘大会だ。

 なのに中断ってなったら参加者全員から怒られる。

 もっと言うと、誰が優勝するかを賭けてる人達からも怒られるだろう。

 だから事件が起きるなら全試合が終わった後、か。

 でもだからと言って警戒しないのも違うと思う。


「あっちの人と、あの人と、あとあの人も。

 凄く周囲を見回してる。

 怪しいって言うより、僕らと同じように何か起きると踏んで警戒してるみたい」

「ただの勘か、それとも私達とは別口で情報を得たか。どっちもありそうね」


 よくよく見ていくと観客席にいる人の1割くらいの人が何か起きるんじゃないかと警戒してるっぽい。

 その中には僕みたいに異変を見つけるのが得意な祝福を持ってる人も居るのかな。


「だからラキア一人が神経擦り減らし続ける必要もないのよ」

「うん、心配してくれてありがと。

 ところでフォニーは何か気付いたことある?」

「……」


 さっきからずっと黙って何かを考え込んでいるんだけど、どうしたんだろう。


「フォニー?」

「え、あ、すみません。

 ちょっと気になってる事があるんですけどまだ確証が持てなくて。

 もう少しはっきりしたらお伝えします」


 なんだろう。

 気にはなるけど、まぁまだ時間はあるし教えてくれるのを待つとしよう。

 

「ところで予選通過した人達ってどんな人なんだろう」

「16人中14人は有名チームのリーダーか戦闘隊長を務めてる人ね」

「個人戦の予選のはずなのにチームで戦ってたのは良かったのでしょうか」

「きっと次回大会からはそれが出来ないような仕組みになるでしょ」

「それと全員が従魔法具持ちっていうのもちょっと気になる」

「それも仕方ない部分ね」

「どゆこと?」


 聞けば単純火力だけを比較した場合、従魔よりも従魔法具の方が上になるらしい。

 それにしては先日、ミッチャーさんを襲撃してた従魔法具持ちのプレイヤーを撃退出来たんだけど。


「従魔はどちらかというと搦め手が得意なのよ」


 フランの糸しかり、罠や足止め、不意打ちや周囲の環境を利用した行動をする際に従魔はその真価を発揮する。

 だけど大会は平坦で丸見えなステージの上なので活躍の機会が限られてしまう。

 

「大会に優勝するなら火力の高い従魔法具にすべきっていうのが一般的な認識。

 その所為で【電光石火】でもひと悶着あったみたいだし」

「あ、それはミッチャーさんから聞いたかも」


 【電光石火】チームは元々トップチームとして頑張ってたから今回の大会も効率重視で考えるなら従魔法具だって主張する人が居たらしい。

 でもミッチャーさん達主要メンバーとは意見が一致せず、その人達はチームから離脱、というより追放されたらしい。

 ちなみにその追放された人達で集まって新たにチームを結成したそうだ。

 その人達はこの16人に含まれていないみたいだけど。


 そして昼休憩を挟んで決勝トーナメントが始まった。

 流石トップチームの人達というべきか、技の1つ1つが実に見応えがある。

 その中でも僕の目を引いたのが居合い切り1つで戦ってる人だ。

 決して派手さは無いものの、間合いに入った瞬間に神速の抜刀で相手を倒す。

 洗練された動きは美しいとさえ思える。

 だけどその人も2回戦で負けてしまった。


「リーチが足りなかったね」

「はい。間合いに入れば強いですが、その外からの攻撃に無防備過ぎました」

「応用力不足」


 コロンの言い方は実に簡潔だけど、まさにその通りだ。

 あの抜刀を走りながら出来るようにするとか、相手の身体だけじゃなく武器や魔法も全部を切るようにするとか、もっと単純なところでは鞘を相手の視界から隠すことで間合いを読みにくくするとかだけでもさっき負けた相手に勝てた可能性は高い。


「ラキア君だったらあの人にどうやって勝ちますか?」

「えっと、近づかなければ良いだけなんだから放置かな。

 焦れて構えを解いたところで攻撃するか足元にフランの糸で罠を張っておけばいいと思う」


 なおフォニーならホイッスルによる遠距離攻撃で終了だし、コロンなら盾で防ぐか剣の柄の部分に従魔の盾を飛ばすことで抜刀出来なくしてしまえば余裕だと思う。

 そのまま順調に試合は進み、遂に決勝戦。

 勝ち抜いてきたのは真っ白い全身鎧に光り輝く両手剣を扱う騎士と、黒髪黒服で両手に巨大なガントレットを装備した拳闘士。

 どちらも相当目立つ装いで当然のように他の人達に認知されている。


「因縁のライバル対決ですね」

「そうなの?」

「はい。見ての通り真逆の装いで属性も光と闇なので、お互いにライバル認定しているそうです」

「なるほど。競い合う相手が居た方が強くなり易いって事もあるか」


 そしてステージ上で向かい合ったふたりはお互いに煽り合っているようだ。


「今日こそはてめぇを完膚なきまでに叩きのめしてやるぜ」

「ふっ。通算32戦16勝15敗1引き分け。

 ここで勝って僕が最強であることを世界に示しましょう」

「昨日の俺より今日の俺の方が格段に強くなってるんだ。

 そんな過去の数字はすぐにひっくり返してやるよ」

「強くなっているのは僕も同じこと。君に勝ちの目はありはしないさ」

「ふん。まあいい。男なら拳で語れってな」

「ええ、観客たちも早く僕の勝利を観たいでしょうし」


 先に動いたのは白騎士。重装備に見えるのに僕の全力疾走と同じくらいの速さで走り出した。

 対する黒拳士はその場で拳をぶつけた。するとその陰から真っ黒な犬が飛びだしてくる。


「その技は前回も見たよ」

「そうかよ。行けっ」

「甘い!」

スパッ


 黒拳士の号令で飛びだした犬は、しかし白騎士にあっさりと切り飛ばされてしまった。

 だけどその隙に黒拳士は2匹目3匹目の黒犬を生み出していく。


「何匹出しても同じだ」

「ならこれはどうだ!」


 黒犬と一緒に黒拳士も殴りかかる。

 白騎士の剣は1本だ。普通に考えれば両方は防げない。


「『シャイニングクロス』」


 目が眩むほどの光線が黒拳士たちを薙ぎ払ったかに見えた。

 事実、白騎士の目からは黒拳士が吹き飛んだように映っただろう。

 しかし実際に吹き飛んだのは黒犬だけ。

 黒拳士は攻撃を受ける瞬間、倒れこむように体をギリギリまで地面に近付けて攻撃を避け、そのまま滑るように白騎士の背後に回っていた。

 そしてがっちりと腰に回される両手。


「へっ、掴まえたぜ」

「まさかこれは」

「ぬおおおっ」


 黒拳士は白騎士を掴まえたまま後ろに反り返り、グシャッと殺人的な音を響かせながら地面へと叩きつけた。

 白騎士はその重い鎧のせいでダメージも相当だろう。

 更にとどめとばかりに黒拳士が正拳突きで白騎士を場外までぶっ飛ばして試合終了。

 個人戦優勝は黒拳士に決まった。



今回の説明部分、もしかしたら以前も同じ話してたかも・・・

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