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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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106/128

106.秋イベント本番は

 襲撃作戦から1日空けた今日は秋イベントのメインとも呼ぶべき武闘大会が開催されていた。

 1日目の今日は午前中に個人戦の予選が行われ、午後から予選を通過した16人による決勝トーナメントが行われる。

 予選のやり方は、大会参加者を16ブロックに分けて各ブロック1人になるまで戦う大乱戦だ。

 1ブロック100人超が1辺50mのステージの上で戦うのでスタート直後に武器が届く範囲に誰かが居るってこともあるだろう。

 時間の都合上、4ブロック同時に試合が行われるので観る方も大変だ。


「これ弓使いには相当不利な状況だよね」

「まず無理でしょう。そういう方は明日の団体戦で頑張るしかないですね」

「あ、見て。大手チームは仲間内で纏まって行動するみたい」

「まぁそれも戦術か」


 僕らは観客席からのんびりと試合の様子を眺めていた。

 試合には出ないのかって?

 無理無理。ああいうのは戦闘大好き攻略プレイヤーが参加するもので、エンジョイ勢の僕では予選も突破出来ないだろう。

 僕らの中では唯一攻略チームに所属しているコロンは呑気にポップコーンのようなお菓子を摘まんでいる。


「コロンなら予選突破出来るんじゃない?」

「最初の乱戦で事故死はしないけどその後が続かないから無理」


 そうかな?

 観てると結構力任せにスキルを使ってる人が多いしコロンなら余裕でカウンターを当てられると思うんだけど。

 あと盾をお皿代わりにするのはどうなんだろう。

 ゲームだから汚れたりはしないのかな。


「それより気になるのはステージのギミック。

 ステージ上ではすべてのサイズが半分になるってどういう仕組み?」


 コロンの言う通り、現在ステージに上がってる人達はまるでずっと遠くに居るかのように小さく見えている。

 それというのもこの闘技場。本来ならステージを4つ並べられる程広くないのだ。

 しかし時間的に1試合ずつ行うのでは間に合わない。

 その問題を解決させたのがこの縮小化。

 入場も控室から転移したっぽいし、運営がねじ込んだ特殊仕様なのかそれとも元々あった空間魔法などの応用なのか。

 あ、でもアイテムボックスだって謎空間に大量の荷物を入れられるんだから原理は同じだったり?

 まあその辺の事情は考えても分からないだろう。

 僕らは目の前にあるものを楽しむだけだ。


「……それでラキア君。どうですか?」


 唐突なフォニーの質問に首を振って答える。

 何がどうなのかと言えば、実は僕らはとある情報を聞いてここに来ているのだ。


 事の発端は一昨日の療養所から撤収した後。

 僕らは獣魔達を安全な場所で保護するために花畑へと向かった。

 道中は何事もなく、花畑の周囲も襲撃の跡は綺麗に片付けられていて妨害を受けることもなく花畑の中に獣魔達を案内することに成功。

 これで今回のイベントは完了だろうと臨時チームは解散した。

 ただ花畑の中を見れば知らない間に蔓薔薇のアーチが出来ていて『おいでませ妖精郷♪』なんて立て札が建てられていた。


「あれは?」

「多分見た通りです」


 若干目を逸らすフォニー。

 女王が直々に来てたって言ってたけど、随分やんちゃしていったっぽい。

 いや良いんだけどね。

 でも人の庭に何か作るなら一言声を掛けて欲しいものだ。


「じゃあ挨拶がてらちょっと文句言ってくるよ」

「はい、お気を付けて」

「フランも一緒に行こう」

(くすくす)


 蔓薔薇のアーチの前に立つとウィンドウが出てきて『妖精郷への門を開きますか?』と聞かれたので『はい』を押す。

 するとただのアーチだったところの空間が歪んで、以前向こうからこっちに戻って来た時に通ったのと同じ状態になった。

 なるほど、普段は門は閉じてるから間違って入ってしまう心配はないみたいだ。

 親切設計に感謝しつつ僕は門を通り抜けた。

 そして見えたのは花畑。

 といっても僕の所と違ってきちんと管理が行き届いた花畑だ。

 それと以前にも会った兵士さんが2人。

 僕を見つけて会釈をしてくれた。


「ようこそいらっしゃいましたラキア殿」


 前回と違って友好的なのはちゃんと門を通ってきたお陰か。

 などと思っていたら兵士の1人が深々と謝りだした。


「先日は大変失礼いたしました」

「え?」


 いや謝られる謂れが無いんだけど。

 前回はほんと不法侵入した僕の方がいけなかった訳で乱暴に扱われなかっただけ良かったと言っていいだろう。


「顔を上げてください。

 皆さんは職務を全うしただけなのですから謝る必要はありません」

「いえ。実はあの後女王様から、ラキア殿は本来資格があったのに偶然が重なって迷い込んでしまっただけだと伺いました。

 その場合は再訪する手順をお伝えするのがルールなのです」

「なるほど。でもあの時は知らなかった訳ですし仕方ないですよ。

 それに今こうして来れているので問題なしです」

「そう言っていただけると助かります。

 では、女王様の所にご案内します」


 そうして兵士さんに案内されて女王の住むお城へと向かう。

 途中の花畑では獣魔達の姿もちらほら。恐らく先に保護された子たちかな。

 みんな元気そうで良かった。

 って、あれ?


「あの、あそこでお昼寝してるのって女王様ですよね?」

「……ですね」


 羊っぽいふわふわの獣魔を枕に気持ちよさそうに寝ている女王。

 この自由さが妖精らしいと言えばそうなんだろう。

 顔を見合わせた僕らはここは僕が行くべきかと一歩前に出た。

 なにせ兵士さんは一歩間違えば不敬罪でクビだから。

 それならちょっと怒られるだけか、最悪出禁になるだけの僕が行った方が良いだろう。


「・・・」


 う~ん、寝てるなぁ。顔を覗き込んでも起きる気配はない。

 というか寝ている女性の顔を見るのはマナー違反かな。

 まして肩をゆすって起こそうとしたら痴漢扱いされないだろうか。

 そうなると出禁どころか牢屋行きか死刑か。あれ、まずくない?

 ということで方針転換。

 彼女に触れずに起こそうと思う。

 方法は幾つか思い浮かぶが、まぁあれで良いだろう。


ふりふりふり

クンクン、ぱくっ!

「お、釣れた」


 女王の口元にお菓子を持って行ってふりふりと揺らしたところ、見事食いつきました。

 そのままモシャモシャと食べ続け、無くなったら口があーんと開けられている。

 どうやらお代わりをご所望のようだ。


「はい」

「あむ」

モシャモシャ

「喉が渇いたので紅茶が欲しいわ」


 寝ながら飲み物を所望し出した。

 まぁクッキー食べたらそうなるのは仕方ない。

 というか寝言じゃないよね。


「寝ながらじゃ飲めないので起きてください」

「仕方ないわねぇ」


 寝起きとは思えないはっきりとした口調で答えながら女王はぱっちりと目覚めた。

 多分だけど最初から起きてたんじゃないかなって思う。

 そして僕らがどうやって起こすのかを観察してたっぽい。

 結果は、女王の表情からして及第点以上みたいだ。


「ベス。お茶をちょうだい」

「どうぞ」


 女王の声にどこからともなく現れたメイドさんが紅茶のカップを差し出した。

 更に真っ白な椅子とテーブルまで出てきた。

 あのエプロンのポケットはアイテムボックスなのかな。

 すっかりお茶会の準備が出来てしまったので、どうやら城へは行かずにここで話をするらしい。

 お互い向かい合うように椅子に座り会談開始だ。


「さてまずは」

「はい」

「さっきのお茶菓子はまだある?」

「あ、少しなら」


 テーブルの上に置かれたお皿の上にお菓子を出すと女王は楽しそうにその1つを取って食べ始めた。

 そんなにお腹が空いてたの?

 などとちょっと失礼な事を考えてたらこほんと咳払い。


「改めて、獣魔を集めていた組織を1つ壊滅させたようですね」

「はい。友人からそう聞いてます」

「救助した獣魔は一度すべてこちらで預かりましょう。

 救助に尽力してくれた方への褒美は後日贈らせて貰うと伝えておいてください」

「分かりました。ありがとうございます」


 話が早くて助かる。

 じゃあ後は……あれ?


「先ほど組織を1つって言いました?」

「言ったわね」

「ということは他にも同じような組織があるのですか」

「無いと思う方が変でしょう?

 もっと言うと元気のない獣魔ばかりを集めてた彼らは下の下です」


 療養所を造らないといけなかったくらいだし、もともと元気な獣魔を集めてたらそんな面倒は無かっただろうに。

 でも元気な獣魔っていうと大体プレイヤーと一緒に居る従魔になり、そういうプレイヤーって従魔を大事にしてるから攫ったりするのはかなりハードルが高い。

 それを狙う組織もあるのか。

 相手にするとなかなかに厳しそうだ。


「そういえば元気がある獣魔が集まる場が近々あるそうですね」

「えっと……あぁ。武闘大会!」

「ふふふ、何も起きないと良いですね」

「え……」


 含みのある女王の笑み。

 それってフラグですよね。


 こうして僕らは大会中に何かが起きないかと試合よりも観客席の方が気になってしまうのだ。



すみません。この先、投稿が不定期になるかもしれません。

月末から年内いっぱいが忙しくなりそう。(年明けには楽になるとは言ってない)

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