『悪いな伸二、このゲーム三人用だから』ってハブられたら隣の席の美少女と付き合うことになった
悪いななろう読者、この短編三人用じゃないので沢山読んでください。
「ボードゲーム?」
「超レアな奴が手に入ったんだ。次の休みにやろうぜ!」
昼休みに俺の席までやってきてボドゲをやろうと誘ってきたこいつは、幼馴染の男子高校生、眞金健。
同じマンションに住んでいて小学校から高校二年の今に至るまでの腐れ縁だ。
「レア!? やるやるー!」
同じく俺の席の近くで元気いっぱいに返事をしたのは、幼馴染の女子高校生、皆口巴。
これまた同じマンションに住む小学校からの腐れ縁だ。
「私も、やる」
表情をあまり変えずに静かに返事したのは、もちろん幼馴染の女子高校生、佐々岡天音
以下略。
そして俺こと小清水伸二。
俺達四人は小さい頃からずっと仲が良く、学校でも放課後でも休日でもほとんど一緒の時間を過ごしている。
ただしそれは、少し前までの話だ。
「俺もやるぜ」
「悪いな伸二、このボードゲーム三人用なんだ」
「はぁ!? なんだよそれ!?」
またこの流れかよ。
「三人用とか意味分からん。嘘言ってんじゃねーよ」
「嘘じゃないって、ほらこれがゲーム名だぜ。調べてみろよ」
ネットで調べてみたら、確かに健の言うように三人限定のゲームと書いてあった。
「マジで三人用かよ」
「そそ、だから残念ながら一人参加できませーん」
「別に四人でも交代で遊べば良いだろ」
「バッカだな、ボドゲって一回のプレイに二時間以上かかったりするんだぜ?待ってる気かよ」
「おう、待ってるぜ」
「あのなぁ。隣で待たれたらやってる方が気にして気持ち良くプレイ出来ないだろ。ダメダメ。三人だけでーす。ということで、俺とトモと天音でやろうぜ」
「わーい」
「楽しみ」
「またかよ!」
最近三人は俺をハブってくる。
三人用だから。
割引券が三枚しか手に入らなかったから。
三人しか乗れないから。
別に追加料金を払ったりすれば四人で楽しめるはずなのに、何故かそれを拒否して俺を加えてくれない。
何度もケンカしたことはあるが、ここまで酷い扱いを受けたことは一度もない。
「じゃあな、伸二」
「楽しんでくるからね、しんちゃん」
「伸二、ハブ、ぷぷぷ」
わざわざ煽るんじゃねーよ!
くそぅ、本気で嫌われたのかな。
でも思い当たること無いんだよな。
「何なんだよ。俺が何したって言うんだよ……」
まさか健がトモと天音を独占したくて俺を遠ざけたとか?
ナイナイ、俺と同じであいつもトモ達に恋愛感情なんて全くなさそうだもん。
ならマジで何でこんなことになってしまったんだよ。
あまりにも不条理でイライラするわ。
奴らが居なくなった後、机に突っ伏して悲嘆にくれた。
「残念だったね」
そんな俺に声をかける人物がいる。
この声は隣の席の女子、芹沢雪だろう。
俺は体を机に突っ伏したまま、顔だけを彼女の方に向ける。
雪の名前を反映するかのように美しい白肌。
それとは対照的に艶のある黒髪。
整った顔立ちに、モデルのようなプロポーションは学校中の男子の憧れだ。
その芹沢さんが幸運にも俺の隣の席であり、何故か彼女の方からこうして時々話しかけてくれる。
「超残念だ。親友に裏切られた男を盛大に憐れんでくれ」
最初の頃は慌てて口ごもってしまったこともあったけれど、今ではこうして軽口を叩けるほどには自然に会話が出来るようになっている。
その代わりに男子達から凄い目で睨まれるのだが、学校のアイドル的存在と話が出来るのならばそのくらいは甘んじて受けようではないか。
「なんて可哀想な人なの」
「ごめん、やっぱ止めて、ぐさっとくる」
「憐れむのはこれからだよ?」
「どんだけ酷い事言おうとしてるの!?」
芹沢さんと話をするようになって分かったのは、彼女とは話が合うと言う事だ。
俺の悪ノリやボケに的確に返してくれるから話をしていてとても楽しい。
「少しは元気が出た?」
「…………サンキュ」
はぁ~好き。
超好き。
大好き。
だって俺が悲しんでいると思ってわざと軽口に乗って気を紛らわせてくれたんだ。
美少女にこんなに優しくされたら誰だってトゥンクしちゃう。
「それじゃあ元気が出たところで、可哀想な小清水君に朗報です」
「可哀想は余計だ!って朗報?」
「そそ、これな~んだ」
芹沢さんが取り出したのは一枚のチケット。
机に伏せたままだと良く分からないので体を起こしてじっくり見る。
「うげ、これかぁ」
「あれ? 小清水君、映画苦手なの?」
チケットは映画の割引券だった。
それを見て変な声を上げてしまったのは、思い出したくないとある理由があるからだった。
「いや、映画は普通に好きだよ。その作品も見たいなって思ってたやつだし」
「そうなの? じゃあ何でそんなに嫌そうな顔してるの?」
「それ、ちょっと前に健達に誘われたんだよ。今日と同じ感じにな」
「あ~」
映画の割引チケットが手に入ったから見に行こうぜ。
ただし三枚だから伸二は抜きでな。
「ほんっとに意味分からん。割引無しでも良いって言ったのにあいつら……!」
思い出すだけで腹が立って来る。
今日といい、映画チケットの時といい、最近のあいつらはマジでどうかしてる。
そもそも何で三枚なんだよ。
普通チケットって、自分の分だけの一枚かペアの二枚だろ。
三枚だけ手に入るなんて、どういう流れで手に入れたんだよ。
「それじゃあ見に行かないんだ」
「あいつらのこと思い出すから行きたくないな」
「そっか、残念。せっかく割引チケットあるのになぁ」
「ん?」
どういう意味だ。
割引チケットは芹沢さんの物だよな。
そういえば朗報って言ってたな。
もしかして割引チケットくれるって意味だったのか?
と思ったが全然違う意味だった。
「私、映画好きなんだけど、一人で行くのは好きじゃないんだよね」
「何で?」
「映画見に行った後に感想を言い合いたいから」
「なるほど、だから一人じゃ嫌、と」
「そうなの。でも割引チケットは一枚しかない」
「つまり割引無しで一緒に行ってくれる人を探している」
「でも友達は次の休みに用事があって行けないし、この映画の公開は今週末まで」
「…………」
「あ~チケット無駄にしちゃうなぁなんて思っていたら、丁度良いタイミングで週末がフリーな人を見つけちゃった、というわ・け」
「…………」
おいおい、この流れってどう考えても俺を誘ってるってことだよな!?
あの芹沢さんが!?
マジかよ、でも週末はあいつらと遊ぶ予定が……ああ、無いんだった。
ええと、じゃあ、う~ん、だから。
内心パニックになっているところを悟られないようにと必死で平静を装いながら、どう返事したら良いか考える。
だけれど、その答えを思いつく前に芹沢さんに先手を取られてしまった。
「じゃあ次の休み、十時に駅前集合ね」
幼馴染達からハブられたら隣の席の美少女とデートすることになったでござる。
――――――――
「最後の展開超笑ったね!」
「それな、まさかネタ枠だと思ってたエ頭が全裸で助けに来るなんて卑怯だわ」
映画が終わり喫茶店で芹沢さんと感想会。
感性が同じなのか、同じ場所で驚き、同じ場所で笑い、同じ場所で感動したらしく、話が盛り上がりに盛り上がって超楽しい。
「まさか小清水君とこんなに話が合うなんて思わなかったよ」
「それな。俺もこんなに波長が合ったのは初めてかも」
芹沢さんも楽しんでくれているようで何よりだ。
「あれ、そうなの? いつも一緒にいる幼馴染の人達なら私なんかよりももっと気が合うんじゃない?」
うわぁ、しまった。
あいつらの話になっちゃったか。
楽しい気分が一気に台無しだけれど、そんな気持ちを表に出したら芹沢さんが悲しむから我慢しよう。
「気は合うけど、波長が合うってのとはちょっと違うかな。考え方の違いでケンカすることとかしょっちゅうあるし」
「そういうものなんだ。私、幼馴染っていないから良く分からないの」
「そんなもんだよ。ただの腐れ縁だから一緒にいるってだけ」
他に仲の良い友達がいたらそいつらと遊ぶだろう。
これまで一緒だからなんとなく今も一緒にいるだけの関係さ。
「じゃああの幼馴染の女子のことが好きって訳じゃないんだ」
「ぶはっ」
「うわ、汚いよ」
「芹沢さんが変なこと聞くからだろ」
思わず飲んでたジュースを噴いてしまったわ。
「だって高校生にもなって一緒に遊んでるんでしょ。普通はそう思うよ。他の女子も言ってたよ」
「マジで? 噂になってんの?」
「マジマジ。ちょーマジ」
これまで何度も似たようなことを聞かれたことはあったけれど、最近は無かったから油断してたわ。
「それで、本当のところはどうなの?おねーさんに教えなさい」
「同級生だろうが」
「細かい事は気にしないの。ほらほら、教えて教えて」
「やけに食いつくなぁ」
「女の子は恋愛話が大好きなのです」
「さいですか」
別に隠すことでも無いからいいけどさ。
というか、こんな話をしてくるってことは、今日は芹沢さんにとってデートじゃないんだろうな。
ちょっとがっかり。
「正直なところ、あいつらのことが好きなのかって考えたことはある」
「それはやっぱり好きだってこと?」
「まぁ待て、慌てるなって。考えただけだよ。自分の気持ちを見つめ直したって言うか、そんな感じ」
だって周囲から付き合ってるのかって散々言われたから、そりゃあ意識もするさ。
「それでその結果は?」
「う~ん、なんて言ったら良いか。微妙?」
「なにそれ~」
「あいつらと一緒なのは居心地が良い。将来どっちかと夫婦になって家族になるっていう姿も想像は出来る。でも……」
「でも?」
「ドキドキしないんだよな。手を握っても、腕組んでも、別に普通の事だし、キスしたいとか、それ以上のことしたいとか、思えないんだよ。恋するって気分に全くならないんだ。だから微妙」
俺にとってあいつらはあくまでも幼馴染であって、恋人には思えないんだよな。
幼馴染というか、家族みたいなもんだ。
家族相手に恋するなんて、物語ではあるかもしれないけれど、俺の感性ではノーだ。
「ふ~ん、そっかぁ。それじゃあさ、小清水君は他の女子相手ならそういう気分になるの?」
「まぁそれなりに」
「それなりって何よ」
「言わせんなよ馬鹿」
「ぶはっ、ちょっ、そこで映画の台詞は反則でしょ!」
「エ頭ボンバー!」
「あははは、ひーっ、ひーっ、ダ、ダメ、もう止めてー!」
露骨に誤魔化したけれど乗ってくれて助かった。
だってあいつら以外の女子に恋するかどうかなんて恥ずかしくて言えるわけがない。
しかも現在進行形で、そういう意味でドキドキしているだなんてさ。
「そういう芹沢さんはどうなのさ。気になる相手とかいないの?」
「ひ・み・つ」
「ずりぃ~」
「乙女の心の価値はオトコノコより遥かに高いんですよーだ」
ケラケラと笑う姿が可愛くてたまらない。
このドキドキは、あいつらと一緒では得られない感覚だ。
間違いなく俺は、芹沢さんに恋している。
はぁ~幸せ。
でもそんな幸せな時間も永遠には続かない。
もうそろそろ夕暮れ時だ。
「さて、そろそろ出るか」
「だね。今日は付き合ってくれてありがと」
「お礼を言うのはこっちの方さ」
例え芹沢さんが意識していなくても、俺にとって今日はデートだ。
大好きな美少女とデートして楽しい時間を過ごせたのだから、最高の気分だ。
「来週は皆と遊べると良いね」
「う~ん、なんか来週もハブられそうな気がするんだよな」
「そうなの?」
「ここのところずっとだからな。良い加減、見切りをつけて他の友達作るかなぁ」
別にあいつらに拘る必要は無い。
他にも友達はいるにはいるし、そいつらと仲を深める方が精神衛生上よろしい気がする。
「そ、そんな小清水君に朗報があります」
「え?」
「これな~んだ」
教室の時と同じで、芹沢さんはまた一枚のチケットを取り出した。
あれ?
小清水さんの手が少しプルプル震えているような……?
「USRの割引チケット?」
有名な遊園地の割引チケットだ。
そういや以前、これも健が持って来たな。
もちろん三枚しかないって言われてハブられた。
「わ、私、来週、暇なん……だよ……ね」
「…………」
俺は決して鈍感なんかじゃない。
そのチケットくれるの?
友達と行けば良いじゃん。
なんて絶対に言わない。
教室の時と同じ流れでチケットを見せたと言う事は、そういうことだ。
仲の良い男友達と映画を見に行く。
これはギリギリありそうだと思った。
だけれど、二人きりで遊園地に遊びに行くというのは俺的にはノーだ。
俺と感性が近い芹沢さんもノーと思うに違いない。
更には差し出した手が少し震えて、顔が少し赤くなっている姿を見れば、確定だ。
なるほど、なるほど。
そういうことね。
よ~く分かった。
芹沢さんに告白されてるううううううううううううううううう!?
――――――――
それから一週間と少し経ったある日のこと。
「なぁなぁ、渓流下りのチケットが手に入ったから行こうぜ!」
「渓流下り!? 面白そう! 行く行く!」
「私も、行く」
騒がしいあいつらが俺の席までやって来て、いつもの通り三枚しかないチケットを見せて来た。
「俺は行かない」
「なんだよ伸二、ノリ悪いな」
だってもうお前達と遊ぶ必要が無くなったからな。
「悪いな。俺、もうお前達と一緒に遊ばないわ」
「おいおい、何でだよ。もしかして最近お前を仲間外れにしてたから怒った? わりぃわりぃ謝るから拗ねるなって」
「そんなんじゃないって、ただ、他に用事が出来たんだ」
「用事?」
そうだ、幼馴染達と一緒にいるよりも遥かに大事な用事だ。
「彼女が出来た」
ピシリ、と空気が固まった。
くっくっくっ、驚いてる驚いてる。
どうせ俺が一人寂しく休みを過ごしているとでも思っていたのだろう。
彼女を作って幸せになっていたなど思いもよらなかっただろう。
「マジで?」
「マジだ」
「妄想じゃなくて」
「マジだ。殴るぞ」
イマジナリー彼女作るほど病んじゃいねーよ。
俺の事なんだと思ってやがる。
まぁでもこれでこいつらとの関係は終わりだな。
半ば喧嘩別れに近い感じだ。
一旦離れたらもう近づくことは無いだろう。
俺は俺で幸せな人生を歩ませてもらう。
一応は腐れ縁だ、お前達の幸せも心の片隅で願っておくさ。
じゃあな。
なんて一人で完結しようとしていた俺は大馬鹿だった。
「「「やったああああああああ!」」」
幼馴染ーずが突然声を上げて喜んだのだ。
どういうこと?
「ついにやったのか。良かったな、伸二」
「へ?」
健が超笑顔でめっちゃ肩叩いて来る。
いてーよ。
「雪ちゃんおめでとう!」
「ありがとう!」
「はぁ!?」
トモが芹沢さんと親しく話をしているだと!?
知り合いだったのか!?
「伸二も、ヘタレ卒業、おめでとう」
「おいコラ誰がヘタレだ。というか、誰か説明しろよ!」
芹沢さんはこいつらの反応を自然に受け取っているし、混乱しているのは俺だけだ。
「まぁまぁ騒ぐなって」
「誰のせいだよ!」
「しゃーないだろ。ずっと見ててもどかしかったんだから」
「あぁ?」
「どう見ても芹沢さんのことが好きなのに告白どころか話しかけることもしないで俺らとばっか遊んでるんだぜ? ヘタレにもほどがあんだろ。段々ムカついて来たわ」
まさかこいつら、俺の気持ちを知ってたのか!?
「な、何で?」
「何で知ってるのかって? バレバレだっつーの。ここで俺らと話している時ですら、チラチラと芹沢さんのこと気にしてただろ。分かりやすすぎ」
「ぐはっ」
マジかよ。
ヤバい超恥ずかしい。
くそぅ、お前らニヤニヤしながらこっち見るな!
「でも気付いてたなら言ってくれれば」
「言ったところでしんちゃん認めないでしょ。チキンだから自分から絶対にアプローチしないしさ」
ぐはぁ。
心当たりがありすぎるから反論出来ねぇ。
「それどころか、アプローチされても、逃げるレベルの、ヘタレ」
「それな。デートに誘われても嬉しいくせに『健達と遊ぶ用事があるから』とか言って断る超めんどくさいタイプ」
もうやめて!
俺の内面ばらさないで!
芹沢さんに聞かれてるじゃん!
「そのくせ、あたし達が一緒だからダメなのかなって思って、敢えて距離を取ろうとしたら『なぁなぁ、次の週末はどうする? 遊ぶだろ?』なんて寂しそうに寄って来るんだもん。しんちゃんが声かけるのはこっちじゃないでしょ! って何度言いたかったか」
「だから、強引に、引き離すことに、した」
なん……だと……?
ま、まさか、三人用だからってハブられてたのは。
「でもこいつ、せっかく俺達が嫌われ役になったのに、俺達の方に未練たらたらで芹沢さんに全然手を出そうとしねーでやんの。好きな子が隣の席の女子でしかも相手から話しかけてくるなんていう超美味しい関係なのに、どうして自分から動けないかなぁ」
「ごめんね、雪ちゃん。しんちゃんがこんなにヘタレで困らせちゃって」
「そんなことないよ。むしろチケットくれて応援してくれてありがとう!」
チケット、くれる?
ギギギと、壊れたロボットみたいな動きで健を見る。
「ん? ああ、気付いて無かったのか? チケットが三枚しか無いなんて変だと思わなかったのかよ。ペアチケット二セット分のうち一枚を芹沢さんに渡したのさ。これでお前の興味を惹いたらどうだってな」
あばばば。
全部こいつらの思い通りだったああああ!
「しんちゃんったら、女子にこんなに頑張らせちゃダメだよ。『どうしようどうしよう』って毎日のように相談されてたんだから」
「はわわわ、皆口さん、それは恥ずかしいから言わないでよぅ」
「ごめんごめん。でも雪ちゃんがどれだけ苦労したか、このヘタレ男にはちゃんと自覚してもらわないと」
返す言葉もございません。
確かに俺は何もしてなくて芹沢さんが頑張っただけだった。
情けねええええ!
「芹沢さん、こいつこんなにもヘタレで寂しがり屋だけど、仲良くしてやってくれよな」
「大丈夫です! 私、ぐいぐい攻めて離しませんから!」
「ひゅ~雪ちゃん格好良い~」
「誰かさんとは、大違い」
「これ以上はもう止めてええええ!」
自分の情けなさを痛感した俺は、自分から気持ちを伝えられる男になろうと決意した。
「すぐには、変われない」
うっせ。
おまけ
「そういやお前らはどうなんだよ」
俺は彼女が出来たが、健達はどうなのだろうか。
健とトモや天音が付き合ってたりするのだろうか。
「俺は彼女いるぜ」
「は?」
「お前が寂しがると思って隠してたけどな。でもこれで堂々と付き合えるぜ」
どうやら俺と同じく、高校二年に進級した時に好きな人が出来たらしい。
俺と違うのは速攻でアプローチして結ばれたこと。
「あたしはもう堕とせるかなってとこ」
「は?」
「しんちゃん達とずっと一緒に遊んでたから、どっちかと付き合ってるんじゃないかって疑われてたの。でもこれで二人とも彼女が出来たから、やっと攻略できる!」
俺達が付き合っているとの噂のせいで付き合えなかったとか、マジで申し訳ない。
「年上、彼氏、最高」
「うっそだろ、天音まで!?」
家庭教師の先生と付き合ってるんだってさ。
マジかよ。
恋愛してなかったの俺だけだったのかよ!
お前ら言えよな!
さ、ささ、寂しかねーよ!