人を喰う③
私は二人の砂利を踏む音と百円玉のチャラチャラとこすれる金属の音を聞きながら、後ろ姿を見送る。
涙と鼻水が吹いてきた風でカピカピになり、地べたに座り込んでいた尻はジーパン越しにもすっかり冷えきっていた。
荒れ狂って沸騰していた感情はだんだんとその温度が下がり、脱ぎ捨てたダウンジャケットを思い出して、さらに寒くなる。
ゆっくり立ち上がるが、ふらふら揺れる。
心も体も右に左によろよろしながら、靴を履きダウンを着た。
神社を後にするとまっすぐ帰る気にもなれなくて、途中にある小さな公園に寄りベンチに座る。
空はもう白みかけ、スズメの鳴く声がきこえ始めた。
うなだれ、頭を抱えるようにしてじっとしている。
さっきまでのことがまるで夢を見ていたようで、今は目覚めたてでぼうっと夢の内容を思い出そうとしている、そんな感じだ。
私、何をしてたんだっけ……そうだ、神社でお百度参りをしてたんだっけ……
今思えば、どうしてお百度参りだったんだろう。願いの内容は呪いのようなものなのに。普通なら丑の刻参りが正しいのでは……
そうだ、私の願い事って呪いだったんだ! 今気が付いた……
丑の刻参りだったら神さまがいてもいなくても、どっちでもよかったのかもしれないし。
「ふふっ、ふっ、ふっ……んふっ、ふっ……」
やだ、私ったら……意外とカワイイところもあったんじゃない。
そう思うと、笑いが込み上げてきた。ベンチの背もたれに背をあずけると私は天を仰ぐ。
笑いながら自分の呼吸が浅くなっていることに気づいた。ふぅーと長めに全ての息を吐き出すと、短く深く空気を吸い込む。もう一度はぁっと胃腸の中から温かくなったそれを吐き、全部捨てた。
そういえば、さっきの女の子と男の子はなんだったのだろう。あんな深夜にスリッパでお尻をたたく遊びって……? しかも神社で?
ここに神さまはいない、と言っていたけど……あの子たちは本当にいたの? 人間だったの?
「まさか……」
悪魔だったり……でも、ただの子供だったよね? あれ、顔が全く思い出せない。幻覚、だったのだろうか……
「そうだ……あっ!!」
思い出してジーパンのポケットに手を入れる。すると、あのアルミ箔を畳んだものが出てきた。しわしわになったそれは、鈍く銀色の光を返している。
何が入っているのだろう……? そういえば、これを使えば私の願いは叶えられるって言ってたような……あと願い事は具体的に想像しろとも……どんな風に相手がひどく苦しむか……
「もしかして、本当に……」