表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

人を喰う①


スパーン、パン……スパーン、パン……スパーン、スパーン、スパーン!!!


丑三つ時の静かな境内に鳴り響くスリッパの音を聞きながら、私はひとり行ったり来たりを繰り返していた。



神さま、どうか……どうか……どうか……



裸足の足の裏はときどき踏みつける小石がくい込み痛かったが、それも冷えと疲労でだんだんと感覚がなくなり今ではよくわからない。



始めはしんとした空気のつめたさに不安だった。それも走り続けるうち気にならなくなり、四十二往復めで着ていたダウンジャケットを脱ぎ捨てた。



はぁはぁはぁ……神さまどうか……どうか……どうか……



この日のために百円玉を百枚用意した。靴を置いたところに百枚置いて一枚握って走り、一枚ずつ置いていく。最後に賽銭箱へ全部入れようと思う。



か、神さま……はぁはぁ……どうか……どうか……



百円玉は最後の一枚になった。靴の横からすっかりかじかんだ人さし指と親指でつまみ上げ両手で握りしめると、おでこのところで念を込める。



神さま……どうか……神さま……!!



右手に持ちなおし、再びしっかり握りしめて私は何度もつぶやきながら走った。



百円玉の山の上に最後の一枚をのせる。チャリッとなって山はまたくずれた。



はぁはぁはぁはぁ……か、神さま、神さま……どうか、あいつが不幸になりますように、事故にあいますように、事件にまきこまれますように、死にかけるけど死なないで一生苦しみますように、死ぬときはひどく苦しみますように……いや、やっぱりひどくひどくひどく苦しんで一族全員根絶やしにしてください……神さま、どうか……



スパーン、パン……スパーン、パン……スパーン、スパーン……


先程までリズムよくなっていたスリッパの音が変に止む。

境内の脇で男の子が女の子にスリッパでずっとお尻をはたかれていた音だ。

大木に手をついていた男の子はときどき嬉しそうに声を上げていて、女の子の笑い声も混ざっていたが……



「おねえさんだめだよ、そんな……」



砂利を踏みながらスリッパを片手に女の子がやってきた。



「そうだよ、そんなんじゃ……」



女の子の後ろからやってくる男の子もズボンのチャックを上げ、ベルトをカチャカチャなおしながら言った。



「な、なによ!!」



子供になにがわかる! 説教なんてされたくない!!



疲れ果て座り込む私に、女の子はしゃがんで顔を近づけた。鼻のすぐ先でまっすぐ私を見すえる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ