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第10話 【着火】マンは侯爵軍を撃退する

 ガキンガンガンと剣と剣が打ち合わされる。

 ペネロペとウゴリーノさんが超高速で打ち合いをしている。

 なんというか……、もの凄く綺麗な動きだ。

 凄いな鉄拳令嬢、S級冒険者と互角に戦っているぞ。


「おーう、なかなか強いな」

「くくく、ありがとう、あんたもな」


 踏み込み、跳ね返し、回転し、切り結んでいる。


「私のマレンツ博士を返せ~~っ!!」


 ウジェニーさんが地獄の底からのような声を出して詠唱を始めた。


『大地の動く力に仮託された不可視の衝撃を我が敵に与えたまえ』

「いけない、土風属性混合第三階層! 『雷光嵐』(ライトニングストーム)!!」


 レイラさんが詠唱を読み取って味方に声をかけた。


「矢だ、矢で射貫けっ!!」


 アルモンド侯爵が弓隊に号令した。

 ウジェニーさんが危ないっ!


【着火】(ティソダー)!!」


 弓隊の前の地面に【着火】(ティンダー)を掛ける。

 ズドンと立ち上がった青い火柱に、うおおと声を上げて弓隊はびびった。


 そこへ、ウジェニーさんが雷の塊を投げつける。


 バリバリバリバリ!!


「「「「うぎゃあああっ」」」」


 電撃に撃たれ弓隊がバタバタと倒れていく。


「ぎょああ」


 私も地面を伝った雷に撃たれ、足に激痛が走った。

 効果範囲から外れているのに何と言う威力か。

 そしてこれが『雷光嵐』(ライトニングストーム)

 生まれて初めて食らったぞ。

 とても痛い。


「私からマレンツ博士を奪おうとする奴らは全員、殺す!!」


 すごい形相でウジェニーさんは侯爵を睨んだ。

 こ、こわい。


「くそう、たかが冒険者が、貴族を舐めおって、貴族を舐めた奴は、殺すっ!!」


 迷宮都市側と、侯爵軍側の間で殺気が溜まり空気が重く沈んで行く。

 これは困った、人死にが出るぞ。


 殺伐とした雰囲気に関わらず、脳筋令嬢と脳筋冒険者は楽しそうにガンガンと剣を交わしていた。


 よし、もう、焼こう。

 うん、それが良い。


【着火】(ティソダー)


 ズドム!


【着火】(ティソダー)


 ズドム!


【着火】(ティソダー)


 ズドム!


「……」

「……」

「……」

「……」


「おー、あれが博士の【着火】か」

「ウゴリーノ、貴様っ!! 真面目にやれっ!!」


 暢気なのは脳筋組だけであった。

 他の人間は皆、私の撃った【着火】(ティンダー)の効果に黙り込んだ。


 軍隊の物資を焼いてやったぞ。

 部隊が動く時は食糧や代えの武器を荷馬車に積んで後方に置いておく。

 これがやられると軍隊の力は半減するってわけさ。

 【着火】(ティンダー)に吹っ飛ばされた幌馬車の残骸が三台、轟々と音を立てて燃えていた。


「侯爵閣下も焼かれたいですか?」

「ぐ、ぐぐぐっ」

「やったぜっ!! さすがは【着火】マンだっ!! 筋が通ってるぜっ!!」

「【着火】マン、【着火】マン!!」

「【着火】マン万歳~~!!」


 銀のグリフォン団のメンバーが私を讃えてくれた。


「く、くそう、これで勝ったと思うなよっ! ギルドマスターよ、また来るからなっ、全軍、ペトラガルドへ引くぞっ!!」

「「「「はっ」」」」


 軍隊が頭を返して街道を退いていった。


 ペネロペが剣を引きこちらに向かって歩いて来た。

 すかさずウジェニーさんが取られまいとするように私の腕を取って密着した。


「マレンツ、お前が気に入った、我が婿となれ、一緒に領都もり立てようぞ」

「そそそそ、そんなのは駄目ですっ」

「お前には言ってない、行き遅れめ」

「あ、あんたも同い年でしょうにっ!!」

「私は私より強い男が居なかったので婚姻をしなかっただけだ」

「わ、私だって私より頭が良い男性がいなかったから婚姻しなかっただけですからねっ」


 なんだか、双方、残念女子の気がするなあ。

 見目麗しいのに、性格に難があるね。


「私はいま、研究に忙しいので、結婚は考えてませんね」

「何……!! ふ、振られた……!!」

「そんなあ~~~」


 いや、君たちは、なぜあのプロポーズで了承されると思ったのか。


「俺は独身だぞ、ペネロペ」


 ウゴリーノの言葉にペネロペは嫌そうな視線を向けた。


「お前と戦うのは楽しいが、領都は発展しない、却下だ」

「なにいっ!!」


 ペネロペは軍馬に跨がり片手を上げた。


「では、また来る、首を洗って待っていろマレンツ」


 彼女は軍馬に拍車を入れて撤退していく侯爵軍を追っていった。


 はあ、何とかなったな。


「ペネロペか、良い女だな、へへへ」

「もう、ウゴリーノの女好きっ」


 私の腕を取ったまま、ウジェニーさんが偉丈夫に毒づいた。


「ありがとう、助かりました」

「おう、俺は『黄金の禿鷹』の重戦士(タンク)、ウゴリーノだ。うちのウジェニーが迷惑をかけてるな、先生」

「いえいえ、ウジェニーさんにはお世話になってます。魔法学者のマレンツです」

「よろしくなっ」


 私はウゴリーノさんと握手を交わした。

 がっちりとした力強い手であった。


「ほわー、ウゴリーノ師匠だ、うはー」


 フロルがウゴリーノさんを憧れの目で見ていた。


「坊主も頑張ったな」

「あ、ありがとうございますっ、師匠!!」

「よせやいっ、がははっ」


 ウゴリーノさんは気持ちの良い好漢のようだな。

 というか、暑苦しいのでウジェニーさんは離れてくれないかな。


「あぶなかったですね、マレンツさん」

「レイラさんもありがとうございました」

「いえ、糧秣を焼いて頂いて助かりました、視界の中なら自由になんでも焼ける【着火】(ティンダー)はやはり凄いですね」

「いえ、故事に【着火】(ティンダー)で糧秣を焼く事例がありまして、思いだしただけです」


 まあ、ゴサンゴの戦いでは、糧秣に油を撒いてからの、普通の【着火】(ティンダー)だったけどね

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― 新着の感想 ―
[一言] 侯爵さん何でマレンツ博士を甘く見てしまったのか・・・ 昔から火を操る者は強いんだよ。紅麗とかアブドゥルとか 作者様のお話だと親はポンチで子供は優秀って構図が多い気がしますが、今回もそんな感…
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