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【完結】婚約破棄をされた私には《もふもふ》な最強で最凶の味方がついております。

作者: 葉まる。
掲載日:2021/08/02


 ――この世界で恐れられている『火猿(ひえん)』『氷虎(ひょうこ)』『翠蛇(すいじゃ)』『空蒼馬(くうそうば)』の四大聖獣達。

 この聖獣達に認められることができ、契約者となった者は聖獣の多大なる恩恵を受けることが出来るだろう。



◆◆◆

 


 ――とある山にて氷虎と対面する幼女の姿がそこにはあった。


『そなたを我が契約者と認めよう。名はなんと言う』

「――サシェ、サシェ・スランドよ。……あなたのお名前は?」

『聖獣に個人名はない。氷虎だ』

「う~ん……じゃぁ、スノール。あなたは今日からスノールよ」

『スノール……』

「嫌だった?」

『いや、名をつけてもらうのも悪くないと思ってな』


「ふふっ。……わぁ、スノールの毛、ふわふわだねぇ。きれーな色だし」

『……もっと撫でろ』

「わぁ~い!! ふふふっ」



◆婚約破棄◆



 この国(ソイール)の国王陛下がお開きになり、国賓も招かれている、それはそれは大切なパーティーにて信じられない出来事が起こってしまいました。


 しかも(わたくし)がその当事者に“なってしまった”のですからもっと驚きですわ。



◆◆◆



 陛下がまだお見えにならず、貴族達が思い思いに交流しています。


「おい、お前!!」


 背後から声がかけられますが私は“お前”などという名ではありませんし、この国の筆頭公爵家の娘。まさか呼ばれているのが自分とは露知りませんでしたわ。 


 そして何度か呼ばれる中で肩を叩かれ、私はようやく気づいたのです。――呼んでいたのは私の“婚約者”でもあるレナード・ヴィ・ソイール殿下だったと。


「あら……殿下、御機嫌よう?」

「機嫌は最悪だ! 何度呼べば振り向くのだ!」


 だって私には大切な名がありますもの。お前ではありません。


 それにしても、いくら婚約者と言ってもダンス以外の時に、淑女の手以外に触れるのは頂けませんわね。


「ふぅ……」

「! っ、まぁ良い。サシェ・スランド、私はお前との婚約を破棄させて貰う!!」


 ……。


 はい?


 この婚約は陛下がお決めになったこと。私達で破棄だの何だの出来ることでは無い。


 はぁ……不味いですわね。自国の貴族だけでは無く、他国の貴族、宰相、はたまた王族の姿まで見えます。

 殿下は王太子なので次代の王がこの姿だと伝えられてしまうと他国から見限られることになってしまいます。


 この国は豊かでは無い。その為、他国からの援助が無ければ民は飢えてしまいます。まったく、私の努力を何だと……。


「それは出来ませんわ。殿下」

「王族の言うことが聞けないのか!? お前はこのリリーに悪質な嫌がらせをしていたようだな。挙げ句、三日前には階段の上から突き落とした! そんな奴に王太子の婚約者が務まると思うか!?」


 ……。


「リリー様……? 申し訳ありません。私はどなたか存じ上げませんわ」


 一気に静まり返る周囲。王太子とその取り巻き、そして恐らくリリー様である令嬢は「ポカン」としてしまっています。


 私はここ一年ほど忙しくしていたんですもの。仕方ありませんでしょう?


「貴方がリリー様ですわね? ……三日前に階段から落ちた割に怪我をされてないように見えるのですけれど」


 まだ復活しない殿下改めおバカさん達に話しかけると、やっと我に返ったようです。


「リリーは精霊術師だからな。風の精霊の力を借りたのだ!」

「……殿下、その者が犯罪者の可能性が出てきました。早急にそれなりの処置を取ったほうがよろしいかと」

「な!? 証拠も無く何を言う!」

「それはこちらの台詞ですわ。私がリリー様に嫌がらせをしていた証拠は?」

「本人がそう証言している!」

「……それは証拠と言いませんわ」


 まったく……殿下がここまでおバカさんだったとは。一年間忙しくしていて目を離していたのがいけなかったのかしら。……あんなに可愛いかったと言うのに。一年前とはまるで別人。どうしてしまったと言うのかしら?


「お前、殿下相手に良い度胸だな!」

「……おや、私は公爵家のもの。貴方は侯爵家のものでなくって? 私が殿下への態度を咎められるなら、貴方にもそれは当てはまりますわよ? シリウス」

「っ、煩い!!」


 ――ガチャリ


 頭に血が登ったシリウスが、帯刀していた剣を抜こうとします。

 しかし、何故かシリウスはその格好のまま固まってしまいました。目は恐怖に揺れ、歯は「ガタガタ」と小刻みに震えています。


 「すっ」と空気中に現れたのは、私の愛してやまない大切な相棒。銀がかった白の艷やかな毛並み。大きな体。


『サシェの言うとおりに大人しくしていれば調子に乗りよって!! 黒の精霊術師に騙される奴が王太子やその側近だと? はっ、笑わせるな!!』


 私にだけ聞こえる、格好いい声。


『笑わせるな、笑わせるなぁー。キャキャッ!!』


 これも私にだけ聞こえる可愛い声。


 私は、四大聖獣の『氷虎』の契約者ですの。そして、契約の恩恵の一つにより精霊達の姿を見ることができ、力を借りることが出来ますの。


 シリウスがこうなったのは、顔を除いた体を氷虎――スノールが凍らせてしまったから。

 そんな怯えた顔をせずに安心して下さいませ。体と氷の間に薄い空気の層があるので死にはしませんわ。


「お、お前それは……」


 殿下もすっかり怖気づかれたようです。


 まったく……この国が昔に比べ豊かになって来ているのは、私が恩恵を使いこの国の土壌を整えているからですのに。冷害を減らすため氷や雪、水の聖獣のスノールが協力してくれています。


「殿下、早くその女を追放して下さいませ!!」


 涙目で殿下に乞う姿は名の通り百合(リリー)のように可憐ですわね。

 

 しかし、殿下の腕に纏わりつき胸を押し当てているように見えるのは気のせいかしら? それに、時々私に勝ち誇った笑顔を見せていますね。

 これじゃぁ、ベラドンナリリー(花言葉:私の裸を見て)ですわね。『ありのままの私を見て』などの良い花言葉もありますが、男性に触れるような令嬢にはこれで良いのです。


「リリー、しかし聖獣を従えるような奴に……」

『従えるだと!?』


 殿下の発言に怒ったスノールが毛を逆立て威嚇します。私には美声が聞こえますが他からしたら猛獣の唸り声にしか聞こえず恐ろしいのでしょう。

 スノールの視線の先のリリー様を除いた殿下達は腰が抜け、このパーティーに居ただけの者でさえ恐ろしさに凍りついています。


 あら? あそこに平気そうな方が……あぁ、お父様にお母様、そしてお兄様ですわね。

 スノールに加勢するように殿下達を睨みつけています。

 何やら、魔力の高まる気配や剣を抜く音がしますが大人しくしていて下さいな。まったく……暴走しないで下さいませ。


 ――私達はこの程度で負けませんわ。


「スノール、怒ってくれるのは嬉しいけれどやめなさい」

『だがな……』

「おいで」


 「よしよし」と頭や体を撫でてやるともっと撫でろと顔を擦りつけてくる。

 

 ふふっ、本当に可愛いんだから。


 周りの人々がスノールの甘えている姿にビックリしていますわねぇ。聖獣は基本的に契約者以外に興味は示しませんが、契約者にはこうして甘えてくれるのです。


『サシェ! あの黒の精霊術師が何かしようとしてるよ!!』

『黒に操られている仲間、可哀想!!』


 精霊達が忠告してくれます。


 精霊達に認められ契約することが出来たのが精霊術師だとしたら、無理矢理禁術を使って精霊達を操るのが黒の精霊術師。


 仲間を無理矢理操られ、精霊達は怒り狂っています。うっかり殺ってしまわ無いか心配ですわね。

 まぁ、私もあの精霊達の生気のなくなった目を見ているとリリー様に軽く殺意が湧きますわ。


 仮面を被るのを辞め、悪女そのままの顔をするリリー様。

 殿下達は豹変した彼女の姿に驚くばかりで言葉を発しもしない。


「……ね」


 ?


「死ね!! サシェ!!」


 リリー様が火の精霊の力を操り、こちらに炎が迫って来ます。


「スノール」


 だが、こんなものスノールに一言呼びかけるだけで消し去ることが出来る。


『消えろ』


 スノールも一言そう言うだけ。


「氷虎に火で挑むなんて無謀ね」

「っ、サシェ!! お前なんか、お前なんかァ!!」


 流石に不味いと思ったのか騎士や魔術師がこちらへ来ようとしていますが、それを手で制す。

 精霊の力にただの騎士や魔術師が叶う訳ありません。それよりも早く陛下を呼んできてもらいたいですわ。このままじゃ埒が明かないもの。


「スノール、このままは危ないから全身凍らせれるかしら?」

『あぁ』


「うわぁぁがぁ!! ぁぁ………」


 酷い顔のまま氷漬けになったリリー様。絶対にいりませんが何かの像みたいですわね。


 怒りの余り、勢い余ってしまったのかリリー様の下のカーペットまで氷が広がっていきます。広がって、広がって…………


「こら、スノール。殿下達まで凍らせろとは頼んでいませんよ?」

『ふんっ、この馬鹿共には氷漬けがお似合いだ。……絶対にこんな奴との婚約は駄目だと言ったのに。サシェが押し切りよって』

「あら、でもリリー様が黒の精霊術師だったのなら殿下は操られていた可能性が高いのでは? それに殿下は滅多に会わなくなった一年前まではしっかりとした方だったじゃない?」

『むぅ……』

「ほら、操られていた精霊達はリリー様が動けなくなったことで元に戻ったみたいですし、殿下も……」

『じゃぁ、私が火で氷を溶かしてあげるわ』


 !


 そこの火の精霊! 待ちなさい!! 火で溶かすのは良いけど、どうしてそんなにギラギラした目をしているの。

 「うっかり」という名の事故を装って殿下を消し炭にするつもりかしら?


『だって、王太子が操られるのが悪いんだもん! こんな簡単に操られる奴が王になったら国滅びるもん!』

『もん、もん!』


 額に手を当てて深い深い、それは深ーい溜息を吐きます。


 ……。


 まぁ、良いわ。先程から私の様子を見て事情を察した、火魔法が得意なお兄様がこちらをキラキラした目で見つめているもの。


「……お兄様」

「勿論! サシェの為ならやるよ!」

「……まだ何も言っていないのですけれど」


 嬉々として殿下の氷を溶かし始めたお兄様。


「サシェ、何があった!!」


 丁度、そのタイミングで陛下がやって来られます。


 「ザッ」と一斉に布の擦れる音がし、貴族達が一斉に臣下の礼をとります。勿論、私も。


「礼は良い。何があっ…………」


 酷い顔で氷漬けにされたリリー様やお兄様によって溶かされかけている殿下達を見て、全てを察したらしい陛下。


「……すまない、サシェ、それに氷虎様」

「! 陛下、頭をお上げください!!」

『……』

「そなたがこの国の為に忙しくし始めた一年前から、レナードはすっかり元気を無くしてなぁ……隙を突かれたか」


 え……?


「レナードはサシェにいつもくっ付き回っていたからなぁ」


 それじゃぁ、私が忙しくしていたせいで……。


「っ!」

『馬鹿王子に照れるな』


 顔を熱くしていると、スノールに尻尾で顔を軽く「はしり」とされてしまう。


「ふぅ……サシェ、氷を溶かし終わったよ」


 と、このタイミングで氷を溶かし終わったようです。


 リリー様に操られていた影響か、眠ってしまっています。……とても気持ちよさそうに。


「おい、起きろ。我が愚息よ」


 仕方が無いのかもしれないが、この状況で呑気に眠っている息子にイラッとしたのか軽く蹴って起こす陛下。


「……ん」

「大丈夫ですか、殿下」

「サシェ……? 久しぶり、おはよぉう」


『『『もう一回寝とけ!!!!』』』


 のんびりとしている殿下に今度は、スノールや精霊達がイラッとしたようで魔法を放ちました。

 それを見た私はすぐさま殿下に結界を張る。


「スノール! 精霊達! やめなさい!」

『……我らの魔法を一重の結界で防ぐとは。相変わらず規格外だな』

『『だな、だな……』』

「あら、聖獣様の契約者ならこのくらい出来なきゃいけないわよね?」

『ふっ、まぁな』


 「ツンツン」とドレスの裾が引っ張られそちらに意識を向けると、いつの間にか立ち上がっていた殿下。


「サシェ、これはどういう状況なの? ――この氷漬けの女は誰?」

『『『覚えとけ!!!!』』』


 ……。


 スノール達が苛ついているのは分かったけれど、これは流石に理不尽よ。殿下は一応、リリー様の被害者なんだから。



◆◆◆



「え、僕が婚約破棄……!? 操られていたとはいえ、サシェを振るとか信じられない!!」


 絶望の顔で首を振りながら叫ぶ殿下。


「……ねぇ、今は一応僕らの婚約は解消されてるって事だよね」

「え……? いや、それは……」


 不意に私の前に跪く殿下。そして、私の手をとると恭しく口づけました。


「で、殿下!?」

「サシェ、簡単に術をかけられてしまうような男だがもう一度婚約して欲しいんだ。……僕がいずれ王になった時、隣に立っていてくれるのはサシェが良いんだ」


 ……。


 まったく、恥ずかしいですわ。お父様達や他の貴族。他国の方々までいらっしゃる場で。


 でも……そう言って下さり嬉しいですわ。


「殿下は一人だと危なっかし過ぎますからね」

「……つまり?」

「お、お受けしますわ」

「ホント?!」


 ホントも何も頼んでこられたのは殿下ではありませんか。


 不満気にしながらも、いざとなった時には何も言ってこないスノールや精霊達は本当に契約者思いの有り難い相棒ですわ。


「良かった……スノールもこれから宜しく!!」


 スノールのふわふわな体に手を伸ばそうとする殿下。


「あっ! 殿下、スノールに手を出したら……」

『我の大切な名を呼ぶな! 触れるな!』


 猫パンチとは比べ物にならない威力のパンチを喰らう殿下。


 幼い時からスノールに纏わりついては殴られていたのに学習して下さいませ……。


「大丈夫ですか、殿下?」

「いてて……大丈夫、大丈夫。まぁ、僕はスノールに嫌われているからなぁ」

「そうでしょうか?」


 スノールは基本的に契約者の私以外にはこんな感じですもの。特別嫌っている訳では無いかと……。


『サシェ、サシェ~』


 ?


 精霊達が小さな手で「つんつん」と突いてきて、内緒話をするように耳元にやって来ます。


『氷虎様はね、サシェを取られるみたいで嫌なんだよ~』

『だよ、だよ!!』

『殿下に嫉妬。燃えてる』

『メラメラ~』

「え?」


 ……。


「スノール」

『何だ』


 私はスノールを呼ぶと、ふわふわな顔に「ぎゅっ」と抱きつきます。


「スノール、大好きだよ。これからも宜しくね、相棒」

『ふ、ふんっ、何だ改まって』


 まったく……スノールは可愛いんですから。


「サシェ、僕は?」


 !?


 で、殿下は……。


「??」

「お、お慕いしております」


 ――ぎゅっ


 え、殿下は今、私に抱き着いて……!?


 私は今、耳まで真っ赤になってしまっている自信があります。恥ずかしくて、顔が熱くてたまりません。耳元で殿下の息をする音が聞こえてしまうのです。


 殿下の肩越しに周りを見渡すと、生暖かい目で私達を見つめる人もいれば、初心な方々が顔を真っ赤にし俯いておられます。

 スノールや精霊達というと、面白くなさそうな顔をしたり、殿下を睨みつけたりしています。


 『うぅ……逃げたい』そんな思いに駆られ、恐る恐る、殿下の顔を伺ってしまいます。


 ――ニコッ


「逃さないよ」


 意味深に笑った後、耳元でそう囁く殿下。


 耳に息が掛かり「ビクッ」としてしまいましたが、それよりも見たことの無い殿下の姿に驚いてしまいました。


「は……い……」


 啞然としながらそう返事してしまいます。


 私の返事を聞いた殿下は笑みを深め、楽しそうな、幸せそうな、そんな顔になりました。



                 



 

「面白い!」「すっきりした!」「主人公達好き」

 

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