表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーエンドがない乙女ゲームの世界に転生してしまったので  作者: 鉤咲蓮
第二部 定められた岐路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

395/526

393.民芸品みたい

 


 週末のんびり過ごして、今日は前期試験の結果発表。


 自分の成績は今日の放課後までに寮の部屋に届くんだって。

 でも各授業、成績が良かった上位五人の名前は掲示板に貼り出されるとか!私の名前があるとはあんまり、全然思わないけど。

 でもシャロン達の名前はあるかなと思って、朝やお昼は人が凄くて全然見れなかったから、放課後にようやく一年生の紙を見に行った。



 ……ここまで皆の名前だらけだとは、思ってなかったけど。



 《国史》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン アベル・クラーク・レヴァイン シャロン・アーチャー サディアス・ニクソン …… 百点

 五位 チェスター・オークス アルジャーノン・プラウズ …… 九十八点


 《法学》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン サディアス・ニクソン …… 百点

 三位 アベル・クラーク・レヴァイン …… 九十九点

 四位 シャロン・アーチャー …… 九十八点

 五位 キャサリン・マグレガー …… 九十七点


 《治癒術》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン シャロン・アーチャー サディアス・ニクソン …… 百点

 四位 ルーシャ・プロウライト …… 九十八点

 五位 キャサリン・マグレガー …… 九十五点


 《植物学》

 一位 アベル・クラーク・レヴァイン シャロン・アーチャー …… 百点

 三位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン サディアス・ニクソン …… 九十八点

 五位 チェスター・オークス ルーシャ・プロウライト …… 九十六点


 《薬学》

 一位 シャロン・アーチャー …… 百点

 二位 アベル・クラーク・レヴァイン …… 九十三点

 三位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン …… 九十点

 四位 ルーシャ・プロウライト …… 八十九点

 五位 カレン・フルード …… 八十八点



 ……夢かと思って、目をこすった。

 私の名前がある。本当に?

 心臓がどきどきして、スカートをぎゅっと握り締める。何度見ても私の名前があって、嬉しくてたまらない気持ちになる。

 何でだろう、実技が良かったのかな……。

 続く《生活算術》や《礼儀作法》、《魔法学 初級》はさすがに名前がなかった。



 《魔法学 中級》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン …… 百点

 二位 レベッカ・ギャレット …… 九十八点

 三位 チェスター・オークス …… 九十六点

 四位 ダリア・スペンサー …… 九十三点

 五位 シャロン・アーチャー …… 九十二点


 《魔法学 上級》

 一位 サディアス・ニクソン …… 百点

 二位 ネイト・エンジェル …… 九十五点

 三位 ルーシャ・プロウライト …… 九十一点



 三人しか載ってない?

 あ、上級クラスにそれしかいないって事かな。考えてみたらそうだよね、ウィルフレッド様より魔法がすごいって事だもん。いっぱいいるわけないか…。

 《剣術 初級》の一位ダンさんだ!これならきっと中級にいけるね。レベッカが三位、友達が頑張ってるのも嬉しい。



 《剣術 中級》

 一位 ネイト・エンジェル …… 九十六点

 二位 チェスター・オークス …… 九十五点

 三位 サディアス・ニクソン …… 九十三点

 四位 シャロン・アーチャー …… 八十九点

 五位 レオ・モーリス …… 八十六点


 《剣術 上級》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン アベル・クラーク・レヴァイン …… 百点

 三位 デューク・アルドリッジ …… 九十二点

 四位 ダリア・スペンサー …… 九十一点

 五位 バージル・ピュー …… 八十九点


 《護身術》

 一位 バージル・ピュー …… 百点

 二位 キャサリン・マグレガー …… 九十二点

 三位 ロズリーヌ・ゾエ・バルニエ …… 九十点

 四位 ジャッキー・クレヴァリー ラウル・デカルト …… 八十八点


 《体術》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン …… 百点

 二位 サディアス・ニクソン …… 九十五点

 三位 シャロン・アーチャー ……九十点

 五位 ダリア・スペンサー デイジー・ターラント …… 八十五点


 《格闘術》

 一位 アベル・クラーク・レヴァイン …… 百点

 二位 ネイト・エンジェル …… 九十八点

 三位 デューク・アルドリッジ …… 九十五点

 四位 チェスター・オークス ダン・ラドフォード …… 八十七点



 ダンさんがチェスターさんと同点だ!

 《格闘術》はお人形を守らないといけなかったんだっけ。ダンさんが投げたお人形が無事だったのか、ダメでこうなったのか……。

 えと、《音楽》はロズリーヌ殿下が一位……シャロンは《服飾》一位!う~ん、私の友達って本当にすごい。



 《神話学》

 一位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン シャロン・アーチャー …… 百点

 三位 アベル・クラーク・レヴァイン …… 九十八点

 四位 サディアス・ニクソン ディアナ・クロスリー …… 九十五点


 《弓術》

 一位 アベル・クラーク・レヴァイン …… 百点

 二位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン …… 九十五点

 三位 ネイト・エンジェル …… 八十四点

 四位 デューク・アルドリッジ …… 七十八点

 五位 サディアス・ニクソン チェスター・オークス ……七十六点


 《語学》

 一位 ルーシャ・プロウライト …… 百点

 二位 ネイト・エンジェル …… 九十二点

 三位 ノーラ・コールリッジ …… 九十点

 四位 チェスター・オークス …… 八十六点

 五位 アルジャーノン・プラウズ …… 八十二点


 《馬術》

 一位 アベル・クラーク・レヴァイン …… 百点

 二位 ウィルフレッド・バーナビー・レヴァイン …… 九十八点

 三位 ネイト・エンジェル デューク・アルドリッジ …… 九十五点

 五位 サディアス・ニクソン チェスター・オークス ダリア・スペンサー …… 九十点



 これで終わり。

 うーん……知ってる名前の割合がすごい。しみじみ思っているうちに、私は人波に流されて掲示板前から購買の方へ押し出されていた。


 もう半年近く経つせいか、私の白髪を見てギョッとする人も全然いなくなったな…。初めて見るって人がだいぶ減ったんだろうと思う。気味悪そうにしたりクスクス笑う人はまだいるけど。


 上位が皆の名前ばっかりだったのを思い返しながら、ぽてぽてと雑に廊下を歩く。せっかくなら誰かに会えたらいいのに。



 【 私の頭に浮かんだのは… 】



 ハッとして後ろを振り返った!


「――…、意外だな。」


 廊下のちょっと先に、アベル様がいた。本当にいた。

 「また声をかけたら跳ぶかと思った」なんて言いながらこっちに歩いてくるけど、私は今ものすっごく驚いてる最中だから、声が出ない。

 アベル様が私を見下ろす。


「……なに。何で喋らないの。」

「っ、あ、おお、おど……おど、驚いて」

「は?」

「すみませんッ!」

「謝れとは言ってないでしょ。」

 しゅっと頭を下げてみたものの、そう言われて顔を上げる。

 たぶんちょびっとボサボサしたかもしれない髪を手で押さえる。廊下を通る生徒が数人こっちを見ていた。絶対にアベル様と二人でいるせいだ。

 このままだといけない、そう思って両手をワタワタ振る。


「ば、場所を変えませんか。」


 間違えた。

 アベル様が「何で?」とでも言いたげな目で瞬いた時に、察した。間違えた。

 まるで私から話があるかのよう。二人で話したいですと誘ってるみたい。間違えた。サーッと青ざめてくのが自分でわかる。


「いいけど。」

「えっ」

 間違えました、って言う前に許されてしまった。

 いくら私がシャロンの友達でも、アベル様はもうちょっと厳しくていいと思う。断ってよかったと思う。

 先に歩き出されちゃって、「待って」という声も出なくて、行き場のない手をしまいながら後に続いた。



 食堂二階、三つくらいテーブルがあるテラス席には誰もいない。


 ちょうど良いとばかりアベル様が真ん中のテーブル席に座って、私に向かいへ座るよう手で促した。ぺこぺこ頭を下げながら席に着く。

 うっ……食堂にいる人達からの視線が刺さる!

 話が聞こえる範囲に近付いてくる人はいないけど、皆ちらちら見てる…よね?私の自意識過剰かなぁ……


「それで?」

「はぁっ!いたっ!!」

 驚いた拍子に手の甲をテーブル裏へぶつけた。痛い。

 アベル様は一拍置いてから、痛みに俯く私を放って職員さんを呼んで、紅茶を二つ注文した。手を擦りながら顔を上げると、金色の瞳がひんやりと私を見てる。

 だ、大丈夫。これは「怒ってないと思うわ」ってシャロンが言ってた時と同じ目…の、はず。


「それで、僕に何か話があるのかな。」

「えと……」

 無いですとはとても言えない。

 私は「間違えました」を声に出せなかったばっかりに、王子様の時間を潰していた。


 な、何か言わなくちゃ。

 話題あるかな?家族の事とか、授業とか得意なこと、苦手なこと…休みの日って何してるの?とか最近どうー?って、それはちょっと距離感がヘンかも。


 試験の結果見たよ、凄かったね!……そっけない返事ひとつで終わりそうな気もする。

 思いきって、ニガテな《護身術》の相談をしてみるとか。……畏れ多くないかな!?



 【 アベル様と何を話そう? 】



 私は――…相談してみる事にした。


 紅茶が届けられて職員さんが注いでくれて、アベル様の横に伝票を置いて去っていくまでの間に。

 つっかえつっかえ、途中頭が真っ白になりかけながら、どうにか話せた。

 緊張して「皆すごい」と「私もがんばりたい」をひたすら繰り返しただけの気もするけど。もう何をどう説明したかわからない。アベル様も、よく遮らずに聞いてくれたよね……。


「君の言いたい事はわかった。要は強くなりたいと。」

「は、はい……えと…そうです……。」

「一旦落ち着いて呼吸しなよ。」

 言われて気付いたけど、私息切れしてる。

 良い香りの紅茶を優雅に飲むアベル様の前で、ありがたく何度か深呼吸をした。


「……ふぅ。えっとね、試験の時、全然うまく動けなかったから。どうしたらいいか教えてもらえたらと思って。」

「口頭でわかる範囲なら。僕は君の試験を見てないし、恐怖で動きが鈍るのは慣れの問題もあるでしょ。」

「そっか……そしたら、見てもらう方がいいのかな。」

 紅茶のカップを両手で持って、くいと飲み込んでみる。

 ちょっぴり渋い。お砂糖入れればよかったかもとシュガーポットを見たら、アベル様の近くにあった。いつの間に使ったんだろう。


「……どこで?」

「訓練場、とかで?ちょっと、お手本見せてもらったりもして…」

「稽古をつけてほしいと。」

「うん!勉強させてもらえたら――」

「ふっ。」

 アベル様が笑った。

 私がきょとんとしたのと同時、食堂の人達も驚いたように小声でざわめく。


「っはははは、そう。」

 口元に手の甲をかざして、小さく肩を揺らして。

 珍しいことに、あのアベル様が笑ってた。自分がぽかんと口を半開きにしてるって気付いて、閉じる。


()()稽古をね……」

 テーブルに片手を置いて、アベル様はうっすら笑ったまま人差し指でトンとテーブルを叩く。なんだかゆったりとした声色で、私は落ち着かない。意味もなくソーサーを触った。

 ふっと、アベル様が息を吐く。笑顔が消えた。


「――そんな事、彼女ですら頼んでこないよ。」

「彼女……あッ!?」

 これはすぐにわかった。シャロンの事だ!

 そ、そもそも、私みたいなちっぽけな平民の稽古にいちいち付き合うほど、王子様って暇じゃない!たぶん!!

 シャロンですら遠慮してる事を、私は図々しくもお願いしちゃったんだ!


「あの…その!で、できればって話だよもちろん、絶対なんて言うわけないし。」

「まぁ、受けてもいいかな。」

 いいの!?

 大声を出しそうになって、自分の口をムギュッと閉じる。

 アベル様は長い睫毛を伏せて、唖然とする私の前でまた一口、落ち着いた仕草で紅茶を飲んだ。カップがソーサーに戻る。


「そう長い時間は無理だけどね。」

 当たり前だよ!一生懸命首を縦に振った。

 アベル様が「そういう民芸品みたいだな」って言う。私は頷くのをやめた。


「せっかくなら意味のある稽古にしたい。僕に頼んだんだ、優しく教えてもらえるとは思ってないよね。」

「は、はい。」

「いいだろう。今週、来週は無理だから……まぁ、その次か。土曜の午後は予定、空けておいて。」

「はいッ!あ、ありがとうございます…!」

 わぁ、わぁ……!

 あああアベル様に教えてもらえる。


 アベル様に教えてもらえるなんて…



 誰かにバレたら、とんでもない事になるんじゃ……!?






【前期試験の成績】


シャロン 1047/1100 (失点53) 100~78(馬術) 平均95.2点

ウィルフレッド 1081/1100 (失点19) 100~90(薬学) 平均98.3点

アベル 890/900 (失点10) 100~93(薬学) 平均98.9点

サディアス 1029/1100 (失点71) 100~76(弓術) 平均93.5点

チェスター 989/1100 (失点111) 98~76(弓術) 平均89.9点

カレン 612/800 (失点188) 88~67(礼儀作法) 平均76.5点


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ