狸と狐
色々と、確認できた。
終わった世界の事。
滅んだ世界の事。
死んだ人の事。
殺した事。
「最低ですね・・・」
「誰がです?」
「僕です」
「何で?」
隣で寝ていた緑が、僕の独り言に気づきました。
「色々とです」
「紺ちゃんの事、忘れていた事?」
「それもあります」
前世関係もそうですが、なつ様と紺と結ばれた後、しばらく二人に溺れていたのです。それで、紺と少し距離ができていた時期があります。
「ぼくの事、思い出しているのに、聞かない事?」
「・・・」
緑の中には、複数の存在が混ざっています。前世で作った生物兵器。それらが一つになって転生しています。その事で、色々と視た結果、落ち込んでいます。
「嬉しい?」
「何故そうなる?」
「ぼく達の願い事、叶ったんだよ。ぼくは嬉しい」
普通の女の子として生活する。それがいつかかなえたい夢。
「僕の力で、叶えた夢じゃない・・・」
これを実現したのは、システムと言う存在で僕じゃない。それなのに、喜んでしまった。それが、最低。
「最低でもいいよ。ぼくは、好きだから」
「・・・」
「元気になれる贈り物あるけど、いる?」
「どんな?」
「残念だけど、エッチなものじゃないよ」
「最初から、期待してない」
「嘘は、駄目だよ」
にやにやと、笑っています。信じてもらえないのは、残念です。
「これ、どうぞ」
もぞもぞと、服の中から小さなレンズを取り出しました。
「人肌ですよ」
「てい!」
軽くチョップです。確かに、ほのかに暖かいですが、嬉しくないですよ?
「どうやって使えば・・・」
途中で、思い出しました。これ、あの世界の道具です。
「レンズですか・・・」
「凄いでしょう、出来ました」
緑はとても嬉しそう。これは、緑達のいた世界の道具です。通称レンズ。体に埋め込むタイプの、情報端末です。
「手の甲に、被せるだけの簡易タイプです」
「それでも、良く作れたね」
開発したの、前世の僕です。
「紺ちゃんと、なつ様の共同製作です。色々と、支払いが大変でした・・・」
「支払い?」
「仁君を、独占する権利とか、過去の思い出とか、色々と支払いました」
あの3人の中で、色々とやりとりがあったみたいです。彼女達が納得しているなら、良いでしょう。詳しく聞くのは怖いので、追及はしません。
言われたとおり、レンズを装着します。
「僕の右手、義手だけど大丈夫?」
「勿論、対応しています」
意識を集中すると、接続を確認しました。
「仁君、大好き!』
という思念が、大量に流れ込んできます。
「緑?」
『大好きすぎて、困ります。どうすればいいのでしょう?』
レンズを通して、テレパシーとして伝わってきます。
「落ち着きなさい」
『無理です。直接繋がったので、嬉しすぎるのです』
「そう言えば、あの時は出来なかったね」
『そうなのです。規格が違って、通じなかったのですよ』
生物兵器だった彼女達と、前世の僕はレンズで繋がるのは無理でした。
『また一つ、夢が叶いました、嬉しすぎます』
『他に、かなえたい事あるの?』
彼女に習い、こちらもレンズを使用します。思念を拾い、通信できる道具です。他にも、脳に直接映像を送る事もできます。見ている景色に、別の情報を重ねる事も出来ます。VRでの情報指示を、直接出来る感じです。
『禁じられた遊びがしたい』
『あれは、禁止事項だから、駄目』
『仁君は、紺ちゃんと遊んだ事あるのに?』
『若さゆえの過ちです。それも、前世の話です』
レンズを使った、色々と危険な遊びがありました。VR技術の無駄使い。視界を入れ替え、別人となる。 有名アイドルそっくりさんになって、行為したり、特殊な衣装を身にまとってのプレイを楽しんだりと、需要はありました。
ただ、色々とやりすぎた人が続出したので、禁止されました。
『おとーさん』
あざとく、甘える声です。
『それは、駄目じゃなかったの?』
少し後悔。見てはいけない存在がいます。
『今は、問題ないよ』
前世の姿の、緑です。なぜか2人います。
『直接触れあうの、叶いました』
そう言いながら、抱きついてきます。緑のはずなのに、ちがう感触です。
『ここまで、再現できるものですか?』
『協力者がいますから』
前世で。トキトキクォの魔女と呼ばれていた紺。この言葉、あの世界で恐ろしい魔女と言う意味でした。
あの恐ろしい魔女が、協力したのなら、不可能はないです。
あの世界と、この世界、言葉が色々と違います。レンズという、直接意識を繋ぐ道具があったので、言葉に出すと、発音が上手く言えません。
『そう言うことでしたか・・・』
彼女達の、本当の願い。
『00000』
情報を詰め込んだ、データの通信。この中には、彼女の名前が含まれています。
『00000』
もう1人の、緑に向かい話しかけます。何故二人と思ったのですが、こちらは紺です。
『ばれましたか』
『そっちは、前世の姿にならないの?』
『これも、私の姿ですよ。若い頃の』
『落ち着いてみれば、面影あるね』
『親子ですから・・・』
『名前呼ばれた、願い叶った・・・ありがとう、嬉しい』
緑は、静かに泣いています。
『嬉しい・・・』
このままでは、消えそうで怖いです。
『まだまだですね』
『そうですよ、幸せはこれから。夜はまだ長いわよ』
『夜は長いというか、まだ朝だけど?』
『今日は、研究の成果と引き換えに、一日独占できるのよ』
紺が、元の姿に戻ります。管理者権限がなければ、この様な事は出来ないみたいです。
『ほら、緑も』
言われて、緑も元の姿にになります。
『もういいの?』
「願い叶った。これから、緑。あの姿のままだと、駄目」
直接言葉を出します。
「この世界なら、これが普通。だから、仁君、沢山愛して」
知り合ったのは偶然だけど、前世の縁で結ばれていた2人。彼女達が、前を向くというのは、嬉しい。
僕も、色々と覚悟を決めましょう。
3の倍数の日に、投降予定です。




