決闘と前世
「俺と、勝負しろ!」
「嫌です」
昼休み、なつ様とのんびり過ごしていると、喧嘩をうられた。これでも一応商売人。社長なので、売り買いは慎重に行います。
「お前に、拒否権はない」
相手は、先日一緒に行動した拳の勇者です。
「何故?」
「勇者連合の、長の命令だ!」
「僕は、それに所属していませんが?」
「俺たちを、敵にまわすという事になるが、それでも良いのか?」
「どう思います?」
「せっかくの二人きり、邪魔された。こいつ嫌い」
なつ様は、ごきげん斜め。僕も、こいつが嫌いになりました。
「どういう条件?」
不機嫌ななつ様が、睨みながら聞きます。
「相手が倒れるまでの、真剣勝負。どちらが強いか、確認のための勝負だ」
「じゃぁ、やらない。仁君の時間の無駄」
「得られる物が無いと、やる気になれません」
「逃げるのか?」
「ん、逃げろ」
「そうですね、逃げましょう」
「俺の勝ちになるが、良いのか?」
「勝つと、何かありますか?」
「特に、指示はない・・・」
「この状態で、何で喧嘩撃っているの?」
「長の命令は、絶対だ、拒否はできない」
「拒否したら?」
「死・・・。それだけは、避けたい」
拳の勇者は、哀れになるくらい、怯えています。
「なつ様、何でこんな事に?」
「不良在庫の処分?」
「いくらなんでも、それはないのでは?」
「だって、役に立たない勇者なんて、必要ないよね?」
「この勇者、駄目なの?」
「うーむ、仁君、勝負してあげて」
「なつ様が望むなら、喜んで」
何か、考えがあるみたいです。
放課後に、訓練場で決闘することになりました。
「な、何で勝てない・・・」
勝負は、一瞬で終わっています。相手が接近する前に、僕が獣で撃ちぬきました。決闘は、なんでもありのルールです。相手も、それを認めています。
「まだ、続ける?」
「これ以上、醜態はさらさない・・・」
10回、決闘を続けた結果です。相手は全敗。
「それで、どうします?」
「勇者を、辞める」
「その後は?」
「出来る範囲で、戦いを続けます」
色々と抱えていたものから、解き放たれた感じです。
「俺は、この世界を救いたい。救わなければいけないと思っている、それが出来ると信じていた」
「今は?」
「俺には、無理。誰かに託すつもりはないけど、俺が主役じゃないのは理解できた」
「そうですか」
それを聞いたなつ様は、嬉しそうだった。
拳の勇者、碇 健二は、その後学校を辞めた。
民間防衛会社へと就職して、日々戦いを続けている。
「なつ様は、何がしたかったの?」
「ん・・・」
「言わないと、こうする」
えいと、転がす。ベットの隅に、ころころと、転がす。
「う~~~」
中心が好きなので、隅っこに追いやると、不機嫌になります。
「ほら、何がしたかったの?」
今日は2人の日なので、誰もいない。
「みんなの、過去が気になった・・・」
「男女関係?」
「それは、割り切る。難しいけど、割り切る、努力中」
この辺は、今は今と信じて欲しい。
「前世の無念、持っている人、予想よりも多かった」
「でしょうね・・・」
その気持ちは、よく解る。前世の無念、救えなかった多くの命。
「勇者連合は過去の怨念を捨てきれない」
「勇者なのに?」
「勇者だったから。戦いで、世界を救えると思った人たち。道半ばで死んだ人も多い」
「それと決闘の関係は?」
「弱さを知れば、諦める人もいる」
「弱さ?」
「圧倒的な力の差。仁君は、自分の力をもっと知るべき」
「僕は、強いかな?」
「素のレベルで、亜紳の域を超えた人が、弱いわけがない」
「そうなの?」
「自分では届かない場所を知る。願いを託せる存在を感じる事は大事」
「託せたのかな?」
「あの顔を見れば、わかる」
「確かに・・・」
拳の勇者は、満足そうだった。
「託された人は、大変だけど、頑張って」
「そうだね・・・」
他にも、色々と背負い込んだ物があったはず。思い出せないのがもどかしい。
「無理はしないでね」
「出来るだけ・・」
実際、 悪夢にうなされた事は数多い。今はしっかり寝られるけど、思い出すこともある。思い出せない事は多いけど・・・。
「睡眠は大切」
「それは、痛感してる」
「これを作った、私を褒めて」
「うん」
「もっと、褒めて」
「なつ様は、凄い」
「みんなに、広める」
「なつ様が凄いと?」
「違う。ゆっくり寝られると。この世界で、悪夢を感じる必要は無い。私と、仁君のおかげ」
「凄いのは、なつ様。僕は魔力を供給しているだけ」
なつ様を転がして、ベットの中央に移動させる。
「仁君が、スキルを上手く使った結果」
「半分、偶然だけどね」
「そのスキル、使わせて欲しい」
これが、今回の本命みたいです。
「凄いなつ様の頼みなら、断れないよ」
「褒める」
「はい」
”過去視 過去を見ることが出来る。現世限定”
「このスキルオーブ、変換して欲しい」
「して、どうします?」
「仁君の過去、見る」
「それは、駄目。知りたい事は、全部話してあげる」
「どうしても?」
「止めた方がいい」
きっぱりと、拒絶します。
「仁君の事、知りたいの・・・」
「僕が話すというのは、駄目ですか?」
「話す時間が増えるのは、嬉しい」
それは、僕も同じです。
「仁君の口から、他の知らない女のことを聞くのはいや」
「・・・」
「他の女との子供の話をされたら、嫉妬の炎で地上を焼き尽くせると思うの」
本気で、やりかねない瞳です。
「どの前世でも、直接の子供はいなかったはずです」
遺伝子提供した結果、誕生した生命はあります。
「断言できますか?」
「・・・出来ると思う」
全部覚えていないから、微妙に間があきました。
「仁君を、信じる:
そう言って、スキルオーブを手渡されました。
「信じているのですよね?」
「信じてるよ?」
首をかしげる仕草は、可愛いです。
「自分で確認して、そして私に話す」
「最初から、素のつもりでした?」
「仁君を、信じた結果だよ」
今日も結局、このこの掌の上。
過去視 過去を見ることが出来る。前世限定
どれだけ回数があっても、前世なら見ることが出来ました。
色々と、やるべき事が変わったけど、助かったのは事実です。
ありがとう、なつ様。
3の倍数の日に、投降予定です。




