二日酔いと雑炊
二日酔い、つらいですよね。
あ”あ”あ”あ”あ”あ”、飲みすぎだ・・・。
頭が痛いぃ・・・。
ああ、毎回毎回飲みすぎて二日酔いなのに、どうしてこうも私は学習をしないんだろう。
昨日、バー行ってから何飲んだっけ。
もはや記憶が。
いや、そもそもどうやって家に帰ってきたんだろう、私。
そして今日は挨拶周り、だが。
あー無理無理、行けたもんじゃありません。
これはもう仕方ない、挨拶周りは明日にしよう。
今日はとりあえず二日酔いを直さねば。
しかし、今日の二日酔い、久しぶりに凄くつらい。
まぁ記憶をなくしかけるまで飲めば当然だが。
うーん、水、水ぅ。
水飲んで、それからシャワーを浴びて。
また寝ようかな・・・。
今決めた、私は、二日酔いになるまで酒を飲まない!
何回目か分からないが、ちゃんと決めた!
あいたた、頭が・・・。
ふぅ、良く寝た。
寝たけど・・・まだ少し、本調子じゃないな。
そりゃあれだけ酒飲めばそうなるか。
時間は、ああ、もう夕方じゃないか。
それでも怠い、この体よ。
いい加減起きるとするか。
丁度いい、少し備品とか薬草の買い出しもかねて外へ出よう。
最近補充できてなかったしな。
さて、ばあさんの店にでも行くか。
―――――――――――――――――――――――――
「・・・を1つ、あ、いや2つ。あとポーション用の調合液3リットル下さい。」
「はいよ。しかしあんたもやるようになったねぇ。新しいポーション開発したんだって?」
「いや、はは。まだまだ若輩者ですよ。」
「そう謙遜しなさんな。新しいポーション作ったのは事実なんだから、もっと胸をお張り。」
うーん、1言1言に重みを感じる。
さすがばあさん、生きる伝説。
というか酒ポーションの事、誰にも話してないのになぜ知ってるんだろうか。
「年寄りにもなるとね、いろんなことが分かるもんなんだよ。」
おっと、更には心を読まれてしまったぞ。
これはいけない。
「ははは・・・。ま、これからも精進します。」
「そうかい。頑張んな。」
さて、買うものも買ったしお暇しようかな。
「では、これで失礼します。」
「はいよ。また来な。」
さて、この後はどうしようか。
いや、そうだな。
―――飯を、食いに行っても良いかも。
そうだ、そういえば今日はろくなものを食べてない。
二日酔いだったし。
折角なら胃袋に優しいもの、そんなものが良いな。
「あんたいつまで突っ立ってんだい!用事が終わったら早く行きな!」
「す、すいません!」
くわばらくわばら、飲食街へ向かうとしよう。
というわけで到着、飲食街!
今日は胃に優しい、そんなものを求めて。
二日酔いで疲れ、ボロボロの私の体。
これを癒すには美味しい料理しかない。
だが、どんな料理が良いのか、何を食べるかはまだ何も決まっていないんだよな。
まぁ、歩くうちに決まるだろう。
さて、店を探そう。
食堂。
うーん、食堂かぁ。
焼肉。
流石に今の私じゃ胃もたれしそうだ。
屋台。
屋台だと・・・酒を飲みたくなりそうだ。
うーん、どうしたものか。
どこに行こうか悩む。
だがどこかに行かないと、少し腹が減ってきたのも事実。
どうしようか、どうしたものか・・・。
「いらっしゃい!カウンターへどうぞ!」
さて、結局入った店。
「居酒屋 マツカネ」、そう、居酒屋である。
だが違うぞ、私は酒を飲みに来たんじゃない。
ここの店ののぼり、そこに鍋の文字があったんだ。
鍋なら何となく胃に優しいかと思って、ほんとだぞ。
酒を飲みには来てないからな!
という訳でさっそくメニュー・・・いや。
ここは大将に聞いてみようか。
「すいません。」
「なんだい?」
「なんかこう、胃に優しい料理ってあります・・・?」
うーん、なんかこう、凄く無茶ぶりしてる気分。
「そうだねぇ・・・お客さん、今日お酒は?」
「あ、すいません、食事だけで・・・。」
「だったら、ああ。親子雑炊なんでどうだい。二日酔いとか、体調悪い時にはぴったりだよ。」
「あ、じゃあそれをお願いします。」
「あいよ!」
親子雑炊。
そして体調が悪い時、何より二日酔いにぴったり。
これはもう行くしかないでしょう。
いやはや、どんな料理か楽しみだ。
「はい、お待たせ!親子雑炊だよ!」
おお、優しい黄色の鍋。
・親子雑炊
鶏肉と卵を使用した、親子丼ならぬ親子雑炊。鶏肉、卵、そこから顔をのぞかせるネギとライス。優しい香り、これはもう、美味そうだ・・・。
では、いただきます。
おお、おお、凄く優しい香りが・・・。
こいつにスプーンを突っ込んで、まずはライスとスープで。
いざ。
―――ああ、温かく、美味い。
これこそ沁みる、本当に沁みる優しい味わい。
私の体、五臓六腑へジーンと響く。
あぁー、たまらない。
この優しさ、その中に確かな美味さ。
体をいたわり、美味しく食べる。
食べれば食べるほど、もっと食べたくなる。
そして食べたことで体が元気になる、そんな素晴らしい雑炊。
だが、こいつにはまだ真骨頂が残されている。
そう、親子、鶏肉と卵、こいつらだ。
ライスとスープであんなに温かく美味しい。
だとすれば、こいつらがただの脇役であるはずがない。
ここは、そうだな。
このコロッとしてる鶏肉。
コイツを行ってみようか。
―――ああ、もう、これは、分かってたよ、この美味さ。
ジューシーさはそのままに、優しさにしっかり漬け込んだような、そんな肉。
食べて噛むたび、染み出る美味さで体が元気になる様な。
なんだろう、医食同源ってまさにこの事なんだろうか。
肉を食べると更に食欲が湧いてくる。
それにつられて食べれば。
食べたエネルギー、こいつが体に沁みわたり、元気になった体がもっと食いたいと叫びだす。
まさに永久機関、雑炊という名の無限ループ。
そこに、優しくたなびいたこの卵。
コイツの塊をスープと一緒に食べてみれば。
―――ふわふわの卵、なのに確かな食感。この味、美味さは全くふわふわしていない。
これは、良い卵だ。
ふわふわな卵なのに、そこには確かな食感が残る。
そしてその卵から染み出るは、この雑炊の美味しいスープ。
ライスとスープならぬ、卵とスープ。
この組み合わせがまた、たまらなく美味しい。
ライスが体に元気を与える、ならば卵は体を癒す、そんな感じさえしてくるぞ。
アロマセラピーならぬ、タマゴセラピー。
あ、アロマは香りか、ならばゾウスイセラピーだったな。
優しい、美味しい、正に今の私が求めていたものだ。
ああ、雑炊を食べる手が止まらない。
いや、これはむしろ。
加速、しているんじゃないか・・・?
不調だったはずの私の体、しかし美味い料理で一気に加速。
空腹だが二日酔いで主張していなかった胃袋も、これ幸いといわんばかりに動いている。
何よりこの雑炊、美味しい。
今私に必要な物が必要なタイミングでばっちりあてはまった、そんな感じ。
ああ、これはもう止まらない、止められない。
雑炊よ、私の糧になってくれ。
明日の元気、全ては君にかかっているんだ・・・!!
ライスを掬い、鶏肉を食べ、卵を味わう。
美味い、美味い、それだけしか考えず、ただひたすらに食べ続ける私。
ああ、素晴らしい、この時間。
二日酔いのその体、そこに何てことの無いこの雑炊。
しかしこれこそが私。
食べると筋力がアップ、魔力が上がる、そんなものは不必要。
この味、美味しさ、それだけあれば私は良い。
ただ、ただひたすら美味しい料理に齧り付く・・・。
―――ごちそうさまでした。
「ありがとうございました!」
ああ、沁みた、沁み込んでいった、雑炊。
優しさ、そしてその美味しさ、確かに堪能させてもらったぞ。
心なしか、体も少し軽くなったような気がする。
こう、すっきりしたというか、内から元気がにじみ出てくるというか。
何かよくわからないけど、そんな感じだ。
そしてそこに取り出したるは、1本の煙草。
コイツに火をつけて、吸って、吐く。
ふぅー、こいつもこいつで染み出る美味しさ。
さて、ゆっくり歩いて帰るとしようか。
腹ごなしもかねて、な。
流石にすぐ寝るのは体に悪いだろう。
さ、帰るか。
願わくば、次も美味い店に会えるように。
主人公(男)・魔術師。二日酔いから立ち直った。
ばあさん(女性)・主人公が飲んだ100倍酒飲んでも酔わない。




